「一帯一路」の貿易拡大が鍵

2019-03-01 08:13:30

陳言=文

2月5日、2019年の春節(旧正月)がやって来た。

春節期間中、浙江省の日常品卸売市場として世界的に有名な義烏からスペインマドリードへと走る「中欧班列」(中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車)は通常通り運行した。マドリードへと続く「一帯一路」沿線諸国に、春節を過ごす習慣はない。中国から欧州各国へと発送される商品と、欧州各国から買い付けた品物を運ぶため、「中欧班列」は通常通り運行されるのだ。

直前の3カ月のうち、昨年12月のクリスマス、今年の元日、2月の春節と、義烏の雑貨に対するニーズが各時期で異なり、商品市場全体のムードは絶え間なく変わっていた。市場のニーズは、義烏の生産販売の道標であり、この町はいつも生産販売の注目商品に事欠かないようである。このように、市場に合わせて変化し、絶え間なく修正される生産販売の中で、義烏自体にも変化が起こっている。  視線を義烏から中国や世界へ向けると見えてくるのは、今年、世界経済が調整期に入るのに伴い、中国経済自体が、十数年連続した高度成長の後に徐々に成熟した発展の状態に入り、中国の発展モデルに変化が起きつつあることだ。今年以降の中国経済について、3月に開かれる「両会」(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)は、政策の面で、非常に明確な方針路線を打ち出すだろう。世界および中国経済に現れた変化に対応し、中国経済を安定的に運営する過程において、引き続き発展を追求することは、われわれが今後、目撃することになる中国経済の大筋であるはずだ。

不確実な世界経済の情勢

改革開放が始まった40年前はもちろん、20年前でも、義烏で商売をしている人と国際情勢の変化を語れば、相手を間違えているのではないかと思われた。義烏は雑貨の製造販売の中心だが、20年前、同地の商品は主に国内市場向けだった。一部は中東や東南アジアの国々にも販売されていたが、それほど多くはなかった。今もし義烏で国際情勢の変化を語らなければ、一人前の義烏人とは言えないかもしれない。

2、3年前、義烏は、熱戦を繰り広げていた米国の大統領選挙の各候補者のために、選挙期間中に大量に使われる帽子や旗を製造し、海上輸送で絶え間なく送り届けていた。帽子一つのコストは1元ほどだったが、作りが精巧で、いつでもデザイン変更が可能だった。世界の主要メディアがドナルドトランプ氏という候補者を格別評価していなかったとき、すでに義烏の商人たちは、彼の米国での人気の変化に最も注目していた。トランプ陣営が集会で毎回使用する帽子は、義烏の工場で製造されたものが多かったからだ。他の候補者から来るまばらな注文とは違い、トランプ陣営からの注文は大量だった。義烏の商人たちは、自らの業務を通じて、最後に勝ち残るのはトランプ氏に違いないと思った。 トランプ氏が政権を取り、1年が過ぎると、義烏の商人たちは情勢が良くないことに気付き始めた。中国製品に対して突然実施された高額の課税政策により、義烏の高品質低価格の製品が引き続き米国に大量に輸出できるのかが大きな問題となった。今年、本格的に追加課税が始まるまで、義烏は全力で米国に自らの製品を輸出するが、同時に米国以外の市場の開拓にも努力する。「中欧班列」が「一帯一路」および欧州に運ぶ商品はますます多くなる。

「あなたの仕事は、中米貿易摩擦からどんな影響を受けましたか?」と、いくつかの店舗の経営者に質問したところ、相手は非常に落ち着いていた。「われわれはすでに重点を『一帯一路』に置いています。中米貿易の変化による影響はないとは言えませんが、全く利益がなくなったわけでもありません」

店内にいる客を見渡してみると、中国各地から来たバイヤー以外で最も多かったのは、ひげをたくわえた中東の人々で、さらには肌の色が濃い東南アジアの人々もいた。

2017年の中米の貿易総額は3兆9500億元に達した。税関の統計から見ると、中米貿易は中国の貿易総額(27兆7900億元)の1421%を占め、重要な位置にある。今年、米国が中国からの輸入品に高額の関税政策を実施するのに伴い、この1421%という割合は減少する可能性がある。つまり、その他の国々で対中の輸出入貿易が増えるかどうかが、中国にとって、ますます重要になってきている。

義烏から見れば、中東および東南アジア向けの輸出の増加、言い換えれば、「一帯一路」沿線諸国との貿易の強化が、米国がもたらす不確実性(1)に対応する中国の重要なプロセスになる。

実のところ、中米貿易摩擦が起こる前に、中国はすでに13年に「一帯一路」イニシアチブを提唱していた。税関の統計で17年、中国の対「一帯一路」沿線諸国の輸出入は7兆3700億元で、対米国の3兆9500億元を上回っており、中国の対外貿易総額の265%を占めていた。

米国の不確実性は、当然、中国の対外貿易に影響を与える。しかし、中国の貿易体制を混乱させるまではいかない。世界の変化、特に米国の不確実性に対応する際に中国が見せる自信は、主にここから来ている。

中国市場の開拓が安定もたらす

三十数年前に義烏で取材した際、浙江省のほかの都市との違いは感じられなかった。特に工業製造の面で、同省の杭州、寧波などと比べると義烏は人口が少なく、交通が不便で、工業の基盤が弱いため、優位性といえるものはほぼ一つもなかった。

今年、義烏でシルバーアクセサリーを取り扱っている店をいくつか取材した。安いものは1個15元(約250円)くらい。同じようなものが日本で2000円程度だと考えれば、利ざやは相当なものだ。店主の出身を聞くと、義烏出身は1人もおらず、皆、十数年前に他の地方からやって来て、シルバーアクセサリーのデザインや加工、販売を行うようになったという。

国内外へ向けた開放に引き付けられ、義烏に集まってきた人は数百万に達する。買い付けに来る外国人は毎年50万人にもなり、定住した外国人も数万人に達する。街角でアラビア料理を食べるとき、周りでアラビア語で話している人たちは、義烏の雑貨を目的に集まってきているアラブ各国の商人だ。コンテナに積まれた製品も、彼らが「中欧班列」を利用して「一帯一路」沿線諸国に輸送するものである。

改革開放の実施から約40年、中国でその成果を肌で感じられる場所は、主に沿海地域にある。義烏のようなやや内陸寄りの町には、工業化、都市化をさらに必要とする町がまだまだ多い。今後数年間、中国は依然として毎年、総人口の1%、つまり約1400万人を都市に移住させる必要があり、都市化率が70%になるには、あと10年ほどの時間が必要だ。その一方、今後数年間で、日本の一般市民とほぼ同レベルの経済力を持つ中国人は、1億人以上増えるだろう。

北京から義烏まで、河北、山東、安徽、江蘇の各省を通過すると、確かに、製鉄所やセメント工場、化学工場が、生産能力の過剰問題でほぼ操業停止している様子を多く見掛けた。中国では、毎日1万社以上の企業が設立されており、ほとんどの地域に企業が存在するようになっている。初期段階においては、物流販売分野の企業がメインだった。しかし、市場の需要は必ず製造企業を大量に生み出す。特にインターネット時代において、このような製造業の企業は激しい競争にさらされる一方、競争で生き残ることができれば、普通の企業より強い生命力を持つことになる。巨大な市場は必ず数多くの製造企業を生む。中国経済の安定した成長は、市場の拡大と製造企業の増加によってもたらされた結果なのだ。

義烏の自信に見る中国の自信

国際情勢の見通しがますます不透明になり、中国経済が安定の中に変化がある状態になり、国内外の多くの企業が懸念している中、義烏の人々は落ち着いているように感じられた。一方が行き詰まっても、もう一方に活路があるものだ。中東、東南アジア諸国から買い付けに来る人は減少しておらず、義烏の商品の廉価は依然として大いに人々を引き付けている。一つ1元の帽子のような注文を失っても、それほど大きな問題ではない。

商売に携わる義烏の人々は、数字についても独自の見解を持っている。多くのメディア、とりわけ海外のメディアは、中国の昨年の経済成長率が前年を下回っており、しかも過去数年間から今後数年間まで、このような下降傾向が続くことを特に強調して、中国経済をネガティブな思考で捉えるようになっている。「中国の成長率は米国や日本より低いでしょうか? 低くないなら、中国のチャンスは米国や日本より大きいはずです。経済に変動があった場合、中国が受ける影響は小さいはずですよ」。このような道理を語っていたのは、見たところ普通の義烏の人だった。

国際通貨基金(IMF)のデータを見ると、昨年、経済規模上位3カ国の米国、中国、日本のGDP成長率は、それぞれ288%、66%、114%だった。中国は全産業チェーンをカバーする製造力を持ち、内陸部の開拓にも十分な可能性がある。不確実性への対応において、中国はより大きな余地を持っている。新たな産業競争は、中国経済のさらなる成長につながるかもしれない。

義烏を出発する「中欧班列」には、義烏で製造された雑貨も、周辺地域から輸送されて来た各種の機械電子製品も積み込まれている。この列車は、商売に携わる義烏の人々の世界市場開拓の夢を載せていると同時に、列車を利用する無数の中東、欧州の人々の生計を担っている。オープンな体制は、義烏の経済成長を促し、浙江省の持続的な高度成長に重要な役割を果たした。そして、それは中国経済が成長し続ける理由の一つでもある。

中国には、このような対応力がある。世界経済の不確実性を恐れる必要はない。

 

人民中国インターネット版 201931

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