経済促進の三つの新要因

2019-03-01 10:10:36

拓殖大学政経学部教授 朱炎=文

昨年10月、安倍晋三首相が中国を公式訪問し、中日両国は関係改善と経済協力の強化で一致した。これは中日経済関係のさらなる拡大への追い風となる。

中日両国はすでに相互依存、補完的な経済関係を構築し、多くの日本企業は中国に進出し、ビジネスを展開している。しかし近年の関係悪化により、日本企業の中国ビジネスは困難に直面し、新規事業の展開が難しくなり、事業の発展は停滞の状況にあった。関係悪化の長期化を恐れた一部の日本企業は中国のビジネス環境の変化をカントリーリスクとして受け止め、事業の国際分布を調整せざるを得なくなり、中国から撤退の傾向もあった。しかし関係改善をきっかけに、日本企業は再び中国市場を重視し、事業拡大のチャンスを探っている。

中日経済関係の拡大には、三つの新たな促進要因がある。日本企業は新たなチャンスを活用し、中国事業を拡大させることができる。

まず中米貿易摩擦が、中日ビジネスに新たなチャンスをもたらしている。米国と中国は追加関税措置と報復措置を相互に実施しているが、日本企業にとっては、貿易摩擦の影響を受ける米国の対中輸出の一部を代替するチャンスであり、半導体、機械電機、精密機器、自動車と部品の対中輸出を拡大できる。

中国は米国の圧力をかわすため、規制緩和と市場開放の措置を実施した。ここには関税引き下げ、輸入拡大、外資の進出と出資比率の規制緩和などが含まれる。こうした措置は日本企業にとって、中国ビジネスを拡大させる重要な促進要因となる。中国は輸入拡大のため、昨年11月に上海で第1回中国国際輸入博覧会を開催したが、出展企業が最も多かったのは日本だった。今後もこのような機会を敏感に察知する日本企業は増えていくだろう。

二つ目の促進要因は、中国が推進する「一帯一路」構想に日本企業が「第三国市場協力」の形で参加することだ。インフラ整備と新興産業への投資、資材提供などのビジネスを拡大するのみならず、中国企業との協力関係を強化することで、中国での事業拡大も期待できる。

三つ目の促進要因は、中国の発展に伴って生まれた新興産業は、日本企業にとってもビジネス拡大の魅力があるということだ。例えば、中国は10年ほど前から世界最大の自動車市場になり、2017年の販売台数は約2900万台に達したが、日本の自動車メーカーは、完成車と部品の生産販売体制を中国で構築している。ちなみに同年に中国で販売した日本ブランドの乗用車は前年比109%増の420万台に達し、中国における市場シェアの17%を占めている。また財務省の貿易統計によると、同年の日本から中国への完成車と部品の輸出額は前年比138%増の1兆4000億円である。中国の市場開放政策の実施により、自動車と部品の輸入関税が引き下げられ、自動車の合弁事業への外資出資比率の規制が撤廃されたことも、日本の自動車メーカーにとっては有利だ。加えて、中国は電気自動車(EV)とプラグインハイブリッドカーを含む新エネルギー車の開発を奨励しているが、生産、販売、保有台数は世界の半数以上を占め、毎年それぞれ50%増以上のスピードで拡大している。日本企業は電気自動車関連の優れた技術を持っているため、中国で大いに発展できるだろう。

インターネット関連ビジネスの発展速度も見逃せない。昨年1111日のネット販売特売日の1日の売り上げが、前年比27%増の3000億元に達し、そのうち、越境ビジネスの形で輸入し、300億元の売り上げがあった外国商品の中で人気が最も高かったのが日本製品だった。越境ECビジネスで、日本企業が中国市場を開拓できるチャンスは今後も高いと言える。

中日関係の改善、中米貿易摩擦、「一帯一路」、中国の産業発展など、中日経済関係の大きな発展が期待できる要素は今後も多いと言えるだろう。

 

人民中国インターネット版 201931

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