デジタル分科会 透明性がある環境づくりを

2023-01-09 19:33:12

高原=文

今年のデジタル分科会は、中日双方のパネリストが「デジタル社会に向けた共通規範と中日の協力」というテーマを巡り、深い議論を行った。 

前半では、主に国というマクロ的視野からどのようにデジタル社会を構築しいくかを検討し、後半では、具体例を挙げ、中日両国がどういった分野で協力を展開できるかを展望した。 

  

相違を解決し、協力方法を探る 

議論の中で、株式会社NTTデータ相談役の岩本敏男氏とフューチャー株式会社取締役兼グループCSOの山岡浩巳氏は、まず世界共通のAI倫理あるいはAI政策を策定することに対する日本側の関心、そしてデジタル情報の監督管理への懸念、さらにはデジタル技術が世界を一体化させるどころか、逆に引き裂くというリスクを持っていることについても言及した。 

清華大学技術イノベーション研究センターデジタルライツ経済研究室主任の鍾宏氏は、「中国はデジタル中国戦略とサイバースペース運命共同体の提唱を行ったが、日本側が言っているように、日本はデジタル社会に関して『Society(ソサエティー)50』や『大阪トラック』などを提唱した。中日協力には必ず克服しなければならない重要な課題があり、それは見解の相違の認識と解決である。中日はまず協力方法の模索から始め、特にデジタル社会の新しい道筋の選択を巡ってコンセンサスを得ることだ。私はサイバースペース運命共同体の理念に基づき、中日が共に注目する三つのこと、すなわち個人の福祉、地域の安全、世界的競争力において、協力の方向を模索することを提案したい」と語った。 

PingCAP(平凱星辰)テクノロジー有限公司副総裁の劉松氏は、「現在アジアは、高齢者の介護と、若者により多くのチャンスを与えるという二つの試練に直面しており、これはアジアの社会構築におけるデジタル社会の最大の価値となる。中国と日本は共にアジの経済大国であり、かつ最も成熟した工業力と整った技術環境を持ち、共同でアジア全体に向かうべきだ。これから8年後には、世界の人口の60%がアジアで生活することになるとみられ、これは中日両国がアジアのデジタル社会の構築において、巨大なチャンスを有しているということを意味する」と語った。 

科技日報社総編集長補佐の王俊鳴氏は、「中日両国にとって、都市と社会のデジタル化へのモデルチェンジが共通の課題であり、両国の経済発展を推進する鍵となり、世界に幸福をもたらし、後世に恩恵を与える」とまとめた。 

  

具体的な協力を議論 

後半では、野村総合研究所研究理事の神尾文彦氏が、「日中デジタル経済協力には、互いに信頼し合った協力環境を構築する必要があり、制度面から保障するだけでなく、民間交流や対話を通じて、企業のために信頼できる環境を構築する必要がある」と述べた。 

日立製作所理事の鮫嶋茂稔氏もまた、デジタル分野での相互信頼に言及し、これは日本側が何度もデジタル分科会で言及している問題だ。 

劉松副総裁はそれに答え、日本側が挙げた信頼問題協力問題に対し、「透明性のある開放システムを構築することが最も良い手段であると思われ、もしかしたらそれが唯一の手段かもしれない。この時代には、われわれはハードウエア時代あるいは前工業化時代の知的所有権への見方を捨て去る必要があり、流動するデータや、透明あるいはオープンソースのソフトウエアがなければ、いかなる企業もたちまち遅れをとってしまう。これは世界的な潮流だ」と語った。 

国際医療福祉大学特任教授の山﨑達雄氏は、ブロックチェーンの使用もまた、具体的なオペレーション方法かもしれないと語る。「オープンソースが現在の主流となっていて、日本政府は多くのデータを公開して民間に使用させており、これは明るい未来といえる。多くの分野でわれわれは協力を推進することができるだろう」 

この後、双方のパネリストは中日デジタル産業協力の具体例を挙げ、検討を行った。センスタイム(商湯科技)アジア太平洋事業総裁の史軍氏は、当該企業の日本企業と連携し、デジタル技術を用いてバーチャル労働力をつくり出す取り組みを紹介した。 ファーウェイ(華為)広報及び政府事務部企業コミュニケーション部副総裁の宋凱氏は、ファーウェイが世界的に推進する「未来の種計画」、未来の科学技術人材を育成する行動を紹介し、「ファーウェイは昨年日本で『未来の種計画』により1600人ほどの学生を育成し、2022年は3500人近くが、われわれのエリート育成計画に参加している」と語った。 

また、中国対外翻訳有限公司総経理の于洋氏は、「北京―東京フォーラムの舞台を借り、より具体的なプロジェクトの協力を検討したい。一部の科学技術データ、産業チェーンデータを開放し、金融テクノロジー、グローバル産業チェーン、科学技術イノベーションなどの面で、中日やアジアないしは世界のデジタル経済の発展を共に推進していきたい」と述べている。 

 

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