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上海スタイルの芸術区

 

1933老場坊

 

1933年に建てられた上海工部局食肉処理場跡地は、現在、上海1933老場坊芸術コミュニティーとなっている
1933老場坊は上海のもう1つの特色ある芸術コミュニティーである。その前身は1933年に建てられた上海工部局の食肉処理場であった。東西南北4つの建物に囲まれた工場エリアと、真ん中にある24角形の本館と狭い牛の通り道とが階段でつながっている。四角の中に丸が入っているという形で、高い建物と低い建物が入り乱れ、迷宮のような奇抜な構造になっている。ここで働いているという岳さんは、「内部の構造を理解して迷わなくなるまでにほぼ1カ月近くかかりました」と言う。

このほか、建物全体の外壁は塗られたことがないかのような薄い灰色で、もしここに暗いテーマのゴシック調のBGMが流れていたら、いかにも薄気味悪い感じがする。しかしディベロッパーはその独特な雰囲気に目をとめ、前衛的なスタイルの芸術コミュニティーにリノベーションした。現在ここにはさまざまなレストラン、書店、撮影スタジオ、デザイン会社などが入居し、新車発表会やパーティーなどのイベントも行われ、週末にはさらにフリーマーケットも開かれ、若者たちの人気を集めている。

不思議な現象が上海で見られるのは、理解しがたいことではない。ここはもともと包容力があり、多元性が共存する街なのである。

商業都市特有の芸術

上海生まれの書道家・王緒遠さんは都市景観研究に携わっていたことがあり、浦東新区の初期建設にも参与していた。現在は浦東の陸家嘴に自分自身のアトリエを持ち、「書画一体」の作品の創作に打ち込んでいる。

彼の創り出す「書画一体」とは、漢字の筆画に誇張を加え変形させ、水墨写意画をなしたもので、「画」によって漢字の意味を示している。たとえば「鳥の巣」の愛称で親しまれた国家スタジアムを象形する「巣」の字や、宮女を象形する「唐」の字、天壇を象形する「北京」の2文字を描くといったぐあいである。

王緒遠さんの「書画一体」の作品。左から「亭」「台」「楼」「閣」

彼の書はM50、紅坊、田子坊など上海の芸術コミュニティーで見た数々の美術作品を思い出させる。そのどれもが、北京の芸術コミュニティーの作品とは明らかに異なる風貌を持っている。ここでは、グリーンの軍装や帽子の赤い星のマーク、毛主席の胸像、スローガンなど798芸術区のいたるところで見られる政治的符号も、798芸術区の作品の中によく見られる憤激も苛立ちも見られない。陽気で楽しく、面白みがあり、政治とは無関係の、より生活感があるものばかりである。

王さんの書は北京オリンピックや上海万博に触れたことで広く話題になったとはいえ、一貫して個人的なものであり、狡猾な趣がある。これもまた上海という商業都市特有の気質というものである。(高原=文・イラスト 馮進=写真)

トラベル情報

田子坊 上海市盧湾区泰康路201弄

公共バス17、326、304路瑞金二路下車

1933老場坊

上海市虹口区沙涇路10号

地下鉄4号線海倫路駅下車

 

人民中国インターネット版 2009年10月

 

 

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