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上海 ホテル三昧

高原=文・イラスト 馮進=写真

上海を訪れるたびに、違うホテルに宿泊する。取材のために、少なからぬ特色あるホテルを訪れた。その中でも印象深いホテルについて、それぞれのカテゴリーにおけるベスト・ホテルを紹介したい。

上海浦江飯店のきらびやかなバンケットホール

どこよりも歴史ムード あふれるホテル

筆者が訪れたことのあるホテルの中で、もっとも歴史的なムードのあふれるホテルといえば、外白渡橋のそばにある浦江飯店(アスターハウスホテル)に勝るホテルはないだろう。

浦江飯店はかつてガーデンブリッジと呼ばれた外白渡橋の東側、ロシア領事館の向かいに位置し、国際飯店(パークホテル)に隣接する、1846年に建設が始まった老舗ホテルである。当初、浦江飯店は礼査飯店(リチャードホテル)と呼ばれ、中国で最初の外資系ホテルであった。1907年、拡張工事を経て、礼査飯店は黄浦路楼、金山路楼、大名路楼、中楼および交易大庁(ホール)の五棟の建物から成る巨大建築となった。この五棟の建物は建築の構造上は一体となっており、強烈な新古典主義バロックスタイルを帯びている。外観からはその華やかな美しさはわからないかもしれないが、ロビーに足を踏み入れれば、たちまち時間が逆流していくような錯覚に包まれてしまう。きらびやかに光り輝くバンケットホール、細やかな装飾のシャンデリア、高い天井と、踏みしめるとギシギシと音をたてるフローリング、あらゆるディテールが不思議な興奮を誘う。

百年あまり前、中国で最初の電灯がここに灯り、最初の電話がここに通じた。さらに最初の半分サイレント、半分トーキーの屋外映画、最初の西洋のサーカス、最初の舞踏会、最初の証券取引所は、すべてこのホテルが舞台となった。アインシュタイン、バートランド・ラッセル、チャップリン、そしてグラント元アメリカ大統領らが、ここに宿泊した。

上海浦江飯店の壁にある鉄の取っ手は、かつて巨大な天窓を開いた道具である。壁に残った歴史の痕跡は、この古いホテルの時の流れを感じさせる

1846年に建設が始まった上海浦江飯店

このほかにも、この古いホテルにはさらに驚きが隠されている。それはホテルの三階にあるヨーロッパの裏通りのような中庭である。この中庭にあるベンチに腰をおろし、天井のガラスを通して降り注ぐ太陽の光をあびていると、ポカポカと暖かく、冬の上海でも貴重な心地よさにうっとりする。

どこよりも贅沢なホテル

何をもって贅沢なホテルというべきか。金色の光が燦々と輝くゴージャスなスイートルーム、フランス料理のディナー、高価な宿泊費、そして至れり尽くせりのコンシェルジュだろうか?必ずしもそうとは限らない。

筆者が訪れたことのある本当の意味での贅沢なホテルといえば、上海環球金融中心のパークハイアットホテルだけであろう。グランドフロアの薄暗い廊下を抜けてゆくと、壁の中に隠れているような扉が次々に開き、背後でそっと閉じる。エレベーターに乗って87階まで上がり、ようやくホテルのロビーにたどりつく。

レストラン、ラウンジ、バー、客室、パークハイアットホテルは、隅々に至るまで細やかなインテリアが施され、シンプルで落ち着いていて、ほかの高級ホテルとそれほど大きな違いがあるわけではないが、窓の外の風景だけは特別である。足元までのガラスのウインドーを贅沢に使い、ゲストに世界最高のホテルの特別な風景を見せてくれる。上海が余すところなく一望でき、黄浦江がまるで村のそばの小川のように、隙間なくびっしりと並ぶビル群も、まるで子供の積み木のように見える。さらに、かつては浦東の誇りであった金茂大廈さえ、その天に向かって伸びる筍のようなビルのてっぺんを、今ではパークハイアットホテルの客室から見下ろすことができてしまう。

87階に位置するパークハイアットホテルのロビー

パークハイアットホテルのエレベーターホールの宿泊客を迎える塑像

このような俯瞰こそ、パークハイアットの姿であり、贅沢な姿なのである。

このほか、このホテルでさらに印象深いのは、その全体のデザイン感である。ひっそりと入り組んだ通路の入り口のポーチ、ロビーの至るところに目に付く現代の芸術作品、そしてLEDスクリーンのようなプール、いずれもモダンでインダストリアルデザインを感じさせる。

あるいはこの種の芸術スタイルにおける追求こそ、パークハイアットホテルの贅沢そのものなのかもしれない。芸術とは人類最大の贅沢なのである。

それに対し、老時光酒店(オールド・ハウス・イン)はまた別の贅沢を代表している。80年近い歴史ある英国式の古い邸宅が、一見ごく普通の里弄(路地)の奥に隠れている。入り口の前の路地は非常に狭く、車が一台ようやく通れるくらいの幅しかない。客室はわずか十二室、いずれの部屋も特注した中国古典家具のレプリカで、それぞれ異なるスタイルになっている。ホテルらしくなく、オーナーの家のゲストルームに通されたような気分になる。

このホテルのオーナーは、非常に親しみやすく話し好きの、東北地方出身の人である。外国に留学していたとき、欧米のB&B(Bed and Breakfast、民宿)が大好きだったため、帰国するとこの小さな邸宅を借り、見よう見まねでB&Bに良く似たプチホテルを作ったという。ホテル内の家具、インテリアはすべて彼が自分でデザインしたものである。一階にある小さなレストランで宿泊客の朝食を準備しながら、カウンター越しに宿泊客と気軽なおしゃべりを楽しむこともある。

ときには箒を手に、自ら進んで庭を掃除してくれる宿泊客もいるという。

ここに満ちているアットホームな雰囲気は、旅の途中の異郷において、非常に得がたいものである。上海のような大都市で、このタイプのアットホームなプチホテルは非常に珍しい。だからこそ、老時光酒店のような路地の奥のホテルもまた、ある種の贅沢であるといえる。

どこよりも環境にやさしいホテル

膠州路にある雅悦酒店(アーバンホテル)は、中国国内で最初に「二酸化炭素(CO2)ゼロ排出」を看板に打ち出した。1970年代に建てられた郵便局の建物を改築してつくられた、エコロジカルなコンセプトを持つ、わずか26室だけのこじんまりとしたホテルである。

素朴で優雅なオールド・ハウス・インの客室 さまざまな廃品の古いトランクで飾られたアーバンホテルのロビー

フロアは回収した古いレンガを再利用、フロントの後ろの壁は古いトランクが積み上げられたものである。客室内も、床の木の板と壁のレンガは、いずれも上海市内で取り壊された建築材の再利用である。一部の家具も廃品回収したものをリフォームしたものである。さらにホテル内は二重ガラスとワット数の低い照明が採用され、エネルギー消費を最小限にとどめる努力がなされている。

しかし、ホテルを運営してゆくうえで、二酸化炭素の排出を完全にゼロにすることは物理的に不可能である。ゼロ排出を達成するため、ホテルでは毎年、国際基準の換算方式に基づいて、スタッフの通勤、飲食、輸送及びゲスト一人ひとりの日常生活に使用されるエネルギーを含む、その年のエネルギー消費量を計算している。そして、二酸化炭素排出権の購入を通じて、ホテルの排出を相殺する。「CO2ゼロ排出」をめざす旅行者なら、まずはアーバンホテルから始めてみることをお勧めしたい。

 

人民中国インターネット版 2010年6月22日

 

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