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湖南省城歩県の山歌祭と打油茶 おもてなしの技と心

 

香ばしい油茶と温かい人情

 長安営村の歌い手である黄仙凡さんと陳岩花さんやかわいい少女たちに「是非」と誘われ、私たちは黄仙凡さんの家にお邪魔した。土間に作りつけた暖炉を囲んで座り、おしゃべりをしながら油茶を作る過程を見せてもらった。ミャオ族やトン族の間で、油茶は客人を歓迎するための一般的な飲み物で、作る過程と飲み方には、儀礼が色濃く反映されている。賓客が多くても少なくても、迎える側の女性は、美味しい油茶で歓迎する。

油茶を作る原料、自分の好みで加減ができる

たたいた茶葉を鍋に入れて、茶湯をつくる

 城歩の打油茶は、一般的には五つの工程を経て作られる。まずは、陰米を作る。もち米を浸して膨らませてから蒸籠で蒸し、後は晒して、臼でつき、箕で糠を取り除けば、陰米になる。次に、茶葉で餅を作る。毎年の春や夏に、茶木の新芽が指の幅ぐらいの時に摘み取り、鍋でさっと煮て掬い上げ、重湯をかけて、餅型に形を整える。それを晒して乾燥させれば、出来あがりだ。その次は、主な材料を炒める。陰米を黄色く、さくさくになるまで炒め、大豆とピーナッツなどの原料も炒めて油で歯ざわりがよいほどに揚げ、煮たあるいはさっくりと揚げた糍粑(蒸したもち米をついて伸ばしたもの)や蕨粑(ワラビ科の植物の根っこから採れるでんぷんでつくったもの)を用意する。それから茶湯を煮出す。茶餅と水を鍋の中に入れて煮出し、漂う茶葉をすくい、鉢で擂り潰してから、また鍋に戻して、濃い茶汁を濃く煮出す。かすを取り除いてから、油と塩を入れ、砕いたニンニクやショウガ、トウガラシなども加えて茶湯を作る。そして最後に茶料を入れる。皿に茶碗をきちんと置き、各種主要材料を碗に入れ、沸騰する茶湯を入れて、ネギとコショウなどを加えれば、有名な油茶の出来あがりだ。油茶は、香り、塩辛さ、苦み、辛み、甘みなどの味が交じり合い、活力を養い、寒気を取り、病気を退ける作用がある。

 油茶ができたら、何人かの女性で赤い漆の茶皿を添えた茶碗に香ばしい油茶を注ぎ、客人に出す。その時は、両手で碗を持ちあげ、恭しく差し出す。この時、客人は、立ちあがって、両手で碗を受け取り、感謝の意を表す。また、油茶の碗の中には様々な豆が入っており、油茶を飲む時は、当然豆も口の中に入るため、茶碗を軽く揺らして、茶と豆をいっしょに飲み込む必要がある。揺らす力加減がつかめれば飲みやすいが、この力加減がわからない人には、豆をすくう道具でもなければ、指で口の中に入れる以外なく、ばつが悪い状態になる。しかし、気遣いの出来るホストならば、困っている客人には、すぐに箸を差し出してくれる。

客人たちに油茶を準備している現地の婦人たち いれたての油茶。香ばしい香りが写真からもただよう

 ホストが油茶を勧める時、もちろん客人が最優先であるが、特に年上または身分のもっとも高い客人が優先される。現地の習慣では、油茶は一般的に四杯を飲むが、これは「四季如意」(四季を通じてずっと物事が自分の意に叶う)、「四季発財」(四季を通じてずっと財を成す)という意味を含んでいる。油茶を飲み終えるごとに、その家の女性たちは、両手で皿を持ちあげて茶碗を下げ、油茶を注ぎ、また同じように客人のところに持って行く。もし客人が、お腹がいっぱいで、もう飲めないとなれば、直接ホストに伝えればよい。油茶を飲んだ後、ホストは客人に一杯の白湯をすすめる。これは、口を漱ぐためのもので、飲むためのものではない。

 陽先生曰く、「郷里で結婚式や葬式を行う時、女性たちはとても賢く立ち回ります。彼女たちは、何十人さらには何百人の来賓を前にしても、それぞれの客人がお茶を飲む順序を正確に覚えています。皿の上の茶碗の位置も決まりがあるので、相手を違えることはできません。もし甲の客人の茶碗を乙の客人に間違って持っていくと、客人は、この娘ではだめだとからかいます。客人の数がかなりの多さにのぼると、時々、若い男性客が、女性が気がつかないうちにこっそりと茶碗の位置を変えて、喧嘩になったりします。でも、女性たちも負けてはいません。彼女らは驚くほどの記憶力で男性客がしたことを見破り、自分の非を認めさせるのです」。たしかに、この通りなら、この地の女性の「切れ者」ぶりは相当なものだろう。

 油茶は結婚式と葬式で客人をもてなす主な飲み物であるだけでなく、祭の中でも重要な役割を果たす。毎年行われる祭や誰かの誕生日を祝う時に、祖先を祭っている厨子の前に、敬意をもって油茶を供えるのである。

 

人民中国インターネット版 2010年12月6日

 

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