People's China
現在位置: コラムオピニオンfocus フォーカス

中華民族の心を伝える「春節」

陳言=文

コラムニスト、『中国新聞週刊』主筆。1960年生まれ。1982年南京大学卒業。 中日経済関係に関する記事、書籍など多数。
「きょうは2月3日、旧暦の正月1日、春節です」と、2011年2月3日のほぼすべての中国のラジオ、テレビは、このような言葉で朝の番組を始めるに違いない。

西暦(太陽暦、新暦)だけでなく、旧暦では何月何日にあたるかを併せ知らせるのが中国の放送の特徴で、春節となると、旧暦がいっそう強調される。春節は中国でもっとも大事にされてきた祭日で、アジアの他の国でも非常に重要視されている。

中国では春節が近づくと、「新年」という言葉より「新春」の言葉がよく用いられる。「新年」は西暦の元旦に使われ、「新春」は「春節」を迎える意味を込めて、ほぼ春節と同様に用いられる。実は、「年(ニエン)」は、古代には別の意味があったのだ。

「年」は伝説上の凶暴な動物で、鋭い角を持つ。農作物を荒らすこの害獣がやってこないよう、種まきを前に、豊作を祈念する際には、常に「年」の退治が人々の頭の中にあった。「年」は赤い色や火、爆発音を怖がるので、祭祀には赤い色が用いられた。今日の中国でも、「過年」(新しい年=春節を迎える)には赤い提灯を掲げ、いっせいに爆竹を鳴らすのは、古代の祭事の遺風だろう。

1年の始まりは何月からスタートするのか。中国では2000年前まではさまざまな「年始」があった。漢の武帝の在位期間(紀元前140~前87年)に、孟春正月を「春節」と定め、新しい年の始まりとした。その後、微調整はあったものの、2000年以上もの間、この暦が使われてきた。現在もなお中国のラジオ、テレビが日付を報じるときには、旧暦も知らせ、また「立春」「雨水」など「24節気」にあたる日も知らせるのは、その延長線にあるといってもいい。

西暦が世界中で用いられている今日、中国を中心に使われている暦(旧暦=農暦)の春節は、西暦の1月22日ごろから2月19日ごろまでの間を移動するので、不便を感じるかもしれない。しかし、100年前に西暦を取り入れる以前の中国では、日常の農作業とあまり密接な関係を持たない西暦ほど使いにくいものはないと人々は感じたかもしれない。中国の農村部では今でも農暦が使われている。国民経済の中心は工業に移っているが、民俗の奥深くまでしみこんだ春節は、中国ではそう簡単に捨てされるものではない。

北京の地壇公園で行われた春節縁日の様子(写真・魯忠民)

箸を使って食事し、漢字で読み書きをして、暦で四季と24節気を知る。このことと、パンや牛肉、英語や西暦を受け入れることとは矛盾するものではない。台湾・香港を含む中国では、漢民族だけでなく、チワン(壮)族、満州族、トン(侗)族など十以上の少数民族も春節を祝い、朝鮮半島、モンゴル、シンガポールなど、また世界中の華人の多い地域でも、春節の習俗が大切に守られている。

春節は、伝説上の皇帝、堯や舜が春先に「年」と向かい合った祭祀から、今日、家族そろってレストランでご馳走を楽しみ、あるいは海外に出かけて見識を広げるなど、その過ごし方はさまざまに変化したが、春節自体は変わったわけではない。多様な世界文化の中で、アイデンティティーを保ちながら異文化も取り入れていく中国の特徴が今日の春節からも垣間見ることができるのではないだろうか。

現代中国の春節の過ごし方については、今月号の特集を楽しんでいただきたいと思う。(『人民中国』2011年2月号より)

 

人民中国インターネット版

 

同コラムの最新記事
中国の改革は引き続き行われる
新疆は対外開放の西大門
中国共産党の活力の源
「世界の工場」が「幸せ」作りへ
着実に戦略的互恵関係を推進しよう