People's China
現在位置: 連載笈川講演マラソン

レベルの高い広西スピーチ大会

ジャスロン代表 笈川幸司

日本語講演マラソンの準備を始めた2年ほど前から、本格的にスピーチ指導をしていないが、わたしはここ数年、審査員として全国各地への訪問が増えてきたお陰で、年に少なくとも10回は見ているので、おそらく中国のスピーチコンテストにもっとも詳しいひとりではないだろうか。

スピーチコンテストといえば、まず思いつくのが大連のキヤノン杯。全国大会は毎年いくつかあるが、もっともレベルの高い大会をキヤノン杯以外に4つ挙げるなら、東京日経新聞社で開催される中華杯全国大会、上海外大で行われる全国大学院生大会、北京で開催される大中物産杯、そして天津外大で行われる日中友好の声グランドチャンピオン大会だろうか。

北京のレベルはこの2年でずいぶん落ちてしまったが、地方のレベルは年々上がっていることが、全国各地に散らばる日本語教師のネットワークによって知ることができる。

さて、わたしは広西地区についてあまり知らなかったせいで、すっかり広西大会はけっしてレベルの高くない大会かと思いこんでいた。しかし、大連外大の学生たちによるスピーチ攻略法は、他の地域の学生にも少しずつ影響を与え、その影響は、ここ広西にまで及んでいた。実際、この大会で優勝した広西大学の劉姗姗さんとは、翌日南寧へ向かう同じ車で移動したため、3時間いろいろ質問をした結果、いくつかわかったことがあるが、彼女もまた即興スピーチの問題を20ほど考え、それぞれ作文を書いて暗記していた。

わたしの見る限り、広西大会で上位4位に入った学生をちょっと鍛えたら、全国大会でも十分に良い成績を挙げられるレベルにあるように思う。ベトナム辺境の地に、これほど高いレベルのスピーチコンテストを目にできるとは夢にも思わなかった。

せっかくだから、ここで広西大会についてもう少し説明を加えよう。今回第5回を迎えたこの大会で3回の優勝を手にしたのは広西大学。広西大学は、広西チワン族自治区の中でもっとも高い点数によって入学できる一流大学だ。次に、この大会で活躍を遂げているのは桂林にある広西師範大学。また、桂林理工大学のレベルも高い。毎回この3つの大学の学生が優勝争いを繰り広げているという。玉林師範学院は、これまで上位入賞を果たしたことがなかったそうだが、今回、半年間の練習を経て初めて6位入賞し、三等賞を手にした。これは、前回ご紹介した呉芳主任の熱意が生んだ結果だ。本気でものごとに取り組めば、いつか必ず成果を手にできる。たとえ、一二回失敗したとしても、情熱を持って取り組んでいれば、成果を手にするのは時間の問題だ。

実は、このコンテストでわたしが大変驚いたのは、舞台上でのことではなく、この大会に取り組む学生スタッフの素晴らしさだ。このことを書かずして、この回を終えることはできない。

まず、審査員と来賓ひとりひとりに対し、必ずひとりの学生がアテンドとしてついていたこと。わたしは、わたし専用の学生が朝迎えに来て、会場では常にその学生がわたしにお供してくれた。休憩時間には、その学生が休憩室まで案内してくれたが、席につくと毎回新しいフルーツが用意されていて、学生スタッフのひとりがすぐに「お茶にしますか?コーヒーにしますか?」と聞いてきた。とにかく、この大会が始まってから終わるまで、わたしが感じたように、他の審査員と来賓全員が、自分がまるでどこかの王様か何かにでもなったかのような錯覚を覚えるほどの持て成しを受けたのだ。

ここまでしていただくと、玉林師範学院と玉林という街を、感情的に忘れられなくなる。

「またここに来たい」と心から思った。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2012年5月

 

同コラムの最新記事
チャンスをつかむ旅~玉林講演
中日友好杯北京市アフレコ大会~対外経済貿易大学とわたし
新たな課題~無錫講演会
わらいの時間~海南講演会
墓参り~福島県の被災地より