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世界一長い北京の地下鉄

 

携帯電話で通話もOK。ある夜の北京の地下鉄車内(写真・井上俊彦)

北京の地下鉄の総延長が昨年末、440キロに達し、上海を抜いて世界一になったそうです。年明けに、世界一早く開通したロンドンの地下鉄「チューブ」が150周年を祝っていました。こちらは老朽化が心配されているようですが、北京の地下鉄は指導者が所得倍増を約束した2020年に1000キロを超える計画です。陰りが見え始めたと言われる中国経済にまだまだ余力がある証拠でしょうか。  

北京と東京の地下鉄車内で一番違うのは携帯電話です。北京は通話OKです。というより、車内でも携帯が通じるようにするのが重要なサービスで、「最近開通した六号線で携帯が通じない場所があった」という不満が出るほどです。大声でかなり個人的な会話をしている人もいますが、誰も気にしません。会話をしなくても携帯の画面をながめたり、イヤホンで何か聴いている乗客が多いのは東京の地下鉄車内と同じ光景です。日本では車内で化粧する若い女性が話題になりますが、北京ではまだ見掛けたことがありません。ある北京在住の日本人女性いわく「乗車している時間が短いからでしょう」。これから通勤時間が長くなれば、北京でも「車内化粧」がはやるかも知れません。  

夕方の退勤時間帯はすさまじいラッシュで、多数の係員が「降りるのが先、乗るのは後」と怒鳴り声を上げますが、ドアが開くと同時に、乗降客の激しいせめぎ合いが始まります。整列乗車にはほど遠い状態です。乗れない場合はひと列車待てば大体乗れますが、降りる場合はドアに密着できる場所を前の駅を出発した直後に確保し、ドアが開いたら、逆流に負けずに突進。結構な運動量です。ただ、北京の地下鉄は同じ側のドアが開閉しますから、前にいる乗客に「降りる?」と聞いて「降りるよ」と言う乗客、できればたくましそうな男の後に付いて行けば、降りそこなうことはありません。  

地下鉄駅の構造も日本と違って、ホームと地上を結ぶ階段は前後2カ所だけの駅が多く、ほとんどの駅の地上出口はA、B、C、Dの4カ所です。ですから目的に行くために一番近いのはA口なのかD口なのか調べておくことが大切です。これを間違えると、とんでもなく時間と労力を浪費します。   

北京の地下鉄は筆者が20数年前に暮らしていたころも、一部開通していましたが、全く乗る機会がありませんでした。当時は今のような渋滞はなく、自転車の洪水さえ上手くかわせば、マイカーで移動する方がずっと便利でした。ところが、本誌2月号の特集でも紹介しているように、現在、北京の道路は渋滞がひどく、天安門広場前の自慢の片道六車線道路も駐車場かと思わせる混みようで、車の移動ではまるで時間が読めません。その点、地下鉄は効率的です。  

北京に観光に訪れる友人には、ホテルは地下鉄の駅近くにすることを薦めています。故宮、頤和園、北海公園はじめ多くの観光地に行くには地下鉄が最適です。しかも市内はどこまで乗っても、2元(約28円)です。

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版 2013年3月21日

 

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