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「日本本の図書室」四半世紀

 

寄贈された本を丁寧に整理する任さん。子ども連れの利用者も多い

二十数年前に筆者が北京で暮らしていた頃に比べると、日本の食品や日用品はずっと手軽に買えるようになりました。ところが日本の出版物は当時も今もなかなか手に入りません。そうした不満解消に四半世紀にわたって貢献してきたのが北京日本人会の図書室です。筆者が駐在して間もない1989年に、それまで転勤で帰国する駐在員が日本人会事務局に、置いていった本やビデオテープを主婦らがボランティアで整理し、図書室の形を整え、交代で貸し出し係を担当したのが始まりでした。筆者も何度か日本映画のビデオを借りた記憶があります。

その図書室が14年前に日中合弁のホテル長富宮オフィスビルの一角に移り、読書ファン、マンガファンの要望にこたえています。天井まで届く木製の本箱が10本以上並び、すべて日本語の本やマンガ、ビデオです。本は2万5000冊、マンガは5000冊もあります。北京市内には日本大使館など日本の出先機関に図書室があり、中国側にも社会科学院日本研究所、北京外語大などに日本書の図書室がありますが、最も気軽に利用できるのが日本人会の図書室です。日本人会の会員、会員家族、準会員が利用でき、中国人、米国人、タイ人なども本を借りに来るそうです。利用者は毎月延べ五〇〇人。

この図書室の仕事を10年以上担当しているのが任正平さん(52)。日本には留学を含めて7年滞在したことがある日本ファンです。本好きの任さんは利用者の立場に立って蔵書を分類し、整理しています。小説などの一般書は、単行本、新書、文庫に分けた上で、著者名のアイウエオ順に並べています。北京にある図書室らしく、「中国コーナー」を設けているのが特長です。ちょっと背表紙を眺めてみただけで、寄贈者が駐在していた時代が髣髴{ほうふつ}とされます。両国関係のバロメーターとも言え、「おっ、こんな本もある」と感心する本もありました。

利用者の多くは夫の転勤で初めて中国にやってきた主婦だそうですが、料理、健康、スポーツ、趣味、育児などにジャンル分けしてあります。子どもたちが順番待ちしながら借り出すマンガの整理は日本人留学生のボランティアが引き受けているそうです。

「ここは日本の本を通じて交流の場にもなっていますよ」と任さんは微笑む。中国語を勉強し始めたばかりの主婦が任さんに中国語で話し掛け、勉強の成果を確かめたり、日本語を勉強中の中国人学生が任さんにアドバイスを求めることもあるそうです。

日本も中国も若い世代の活字離れが深刻ですが、そうした中で地道な活動を続けているこの図書室は、今年7月、誕生して25年を迎えます。

 

人民中国インターネット版 2014年3月13日

 

 

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