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難問山積の「クルマ社会」

 

文・写真=島影均

北京暮らしは1992年以来ですが、この間に「自転車社会」から「クルマ社会」に一変したが中国の変化を象徴していると感じます。連休には家族連れやカップルでドライブを楽しむ人が増え、住宅街が郊外に広がるにつれマイカー通勤する人も増えています。週末の北京の大衆紙に、車の広告の別刷りが折り込まれているのも、車が大衆化している証拠だと思います。

月曜日でもこれだけの人出。「クルマ社会」を象徴するモーターショー

4月下旬に北京郊外の国際展覧センターで北京国際モーターショーが開かれました。「クルマ社会」の一面を実感しようと思い、見に行きました。10日間の入場者数は延べ85万人だったそうです。週末の会場は「ラッシュの地下鉄ホーム並み」と報じられていましたので、月曜日の午前中に行きました。それでも、有名ブランドの新車の周りや華やかなアトラクションが行われているコーナーはかなりのラッシュでした。

参加企業は世界14カ国・地域から2000社以上で、1134台が出展され、そのうち118台が世界初公開の新車だったそうです。

中国は5年連続、年間販売台数が世界一で、2000万台を超えています。メーカーが売り込みに躍起になるのも当然でしょう。日本車コーナーも結構な人気で、中国で年間200万台の販売目標を掲げるトヨタやホンダ、日産の環境対策車が注目されていました。

確かにマイカーがあれば便利ですし、行動範囲はぐっと広がります。かつては筆者も北京で運転しましたが、今ではとてもその気になれません。先ず、恐ろしいのは交通事故。連日のように死亡交通事故のニュースが流れ、軽い接触事故なら毎日のように見掛けます。次に渋滞と駐車場難です。20年前に車で15分だったところが今では優に1時間は掛かります。また、住宅街の駐車場整備が遅れを取っているのと、車庫証明がなくても車を購入できるため、住宅街の道路は路上駐車の車であふれています。車同士の交差が出来ない道路は数え切れず、これが渋滞を深刻にしている原因にもなっています。

閑静な住宅街も路上駐車の車がびっしり

実は「クルマ社会」最大の問題はドライバーに「その担い手」という認識が欠けていることではないでしょうか。日本ではいつの頃からかハザードランプの点滅が「ありがとう」を意味するようになっています。専門家に聞くとどうやら日本式の目的外使用のようですが、例えば、車線減や合流地点で譲ってもらった時などの意思表示は気持ちがいいものです。中国式はまだ見たことがありません。

「クルマ社会」に突入し、国家的なプロジェクトになっている難問がPM2・5に代表される大気汚染対策です。車の排気ガスは重大な原因物質のひとつですから、今冬も汚染がひどい日には、通常のナンバープレートの末尾番号による規制を強化するなどの対症療法を行いましたが、車両そのものの環境対策を講じる政策を打ち出しています。「中国の夢」には調和の取れた「クルマ社会」も含まれているはずです。

 

人民中国インターネット版 2014年6月

 

 

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