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三回の土地改革が農村を変えた (3)請負制の始まり

 

小崗村は安徽省鳳陽県にある小さな村である。村は20戸の農家しかなく、水稲や小麦を作って暮らしをたてていた。しかし、1978年以前は、毎年、村民一人当たりの食糧は20キロ余りしかなかった。国からの給付金と毎月配給される食糧に頼る以外は、ほとんどの農家は汽車にタダ乗りして上海、江蘇、浙江などへ物乞いをしに行っていた。

1978年、安徽省鳳陽県小崗村では、生産隊長の厳俊昌さん(左)と副隊長の厳宏昌さん(右から2人目)が村民を率いて「包産到戸」(家ごとの生産請け負い)を始めた(新華社)

1978年の夏、この地は大干害に見舞われた。小崗村では夏の収穫が終わったあと、村民は一人当たり3.5キロの小麦しか分配されなかった。当時の農村は、行政、生産、社会の基層組織である人民公社に組織されていた。

この年の秋、悩み抜いた数人のお年寄りが、人民公社の基礎組織である生産隊幹部の厳俊昌さんと厳宏昌さんのところへ相談に行った。「大釜の飯を食わず、働きに応じて分配することはできないだろうか」というのである。

何回も協議を重ね、ぎりぎりの線で生きて行くために、18人の村民は、11月24日の夜、生産隊の土地を個々の農家に分け、自主的に耕作させ、国への上納分と人民公社の留保分を除いて、残りをすべて自分のものとすることを密かに決定した。

当時は、土地を各戸に分ける「分田到戸」や各戸が生産を請け負う「包産到戸」は違法行為と見なされていたので、危険は大きかった。そのため、18人の村民は、一家の財産と生命を担保と見なす「労働請負契約」に拇印を押した。いま、この「生死をかけた契約」の文書は、中国農村改革の証拠として、国家歴史博物館に収蔵されている。

1979年、小崗村は「分田到戸」が始まった。どの農家も一生懸命働いたうえ、気候が順調だったため、この年は大豊作になった。関友江さんは一家6人で、水稲4000キロ、落花生1000キロ、サツマイモ1000キロを収穫した。この年、小崗村全村が収穫した食糧は、1955年から1970年までの生産総額に等しかった。

小崗村の改革は「農家ごとの生産高リンク生産請負制」と呼ばれる生産責任制だった。鄧小平氏ら高級指導部がこれを是とし、推進したので、この方式は急速に全国各地の農村に広まった。この変革のカギは土地管理制度の改革である。集団所有の土地を長期間、農家に請け負わせ、生産させて、その損益は自ら責任を負わせる。これによって農民は、請け負った土地の使用と分配に対し自主権を獲得したのである。だからこそこの改革は、「2回目の土地改革」とも言われているのだ。

もともと50年代初めの土地改革の後、ほとんどの農民は勤勉に耕作し、豊作で豊かになった。しかし一部の農民は、労働力が足りなかったり、天災や病気に見舞われたため、経営が振るわず、苦境に陥った。借金したり、土地を売りに出す農民まで出てきた。

また、50年代初めから国は工業化建設を始め、労働者が激増し、都市は拡張されて、都市や町の食糧需要は大いに増加した。農村での貧富の両極分化を防止し、農民を「ともに豊かになる」道に導き、そしてまた国が食糧を買い上げて都市に供給することを保障するため、中国はまず農村で「合作社」を推進し、間もなくさらに大規模な人民公社化を推進した。これによって土地改革で農民に分配された土地は、集団所有となった。

さらに全国の食糧、食用油、木綿に対する「統一買付け・統一販売」の制度は、農民が市場で農産物と副産物を販売する自由を奪った。

とくに人民公社は弊害が多かった。管理が集中し過ぎ、経営方式は単一で、分配は平均主義であった。このため農民は生産意欲を失い、農作業に出ても労力を惜しみ、食糧生産が停滞し、食糧や農業副産物が欠乏した。これにより2億5000万人が衣食の問題を解決できない貧困状態に置かれたままだった。

小崗村で始まった生産責任制は、農民の生産意欲と創造性を引き出し、農村経済の迅速な発展を促進した。統計によると、1978年から2007年までに、中国人一人当たり、食糧は318.7キロから380.5キロに、肉類は30.3キロから51.5キロに、水産物は4.9キロから36キロに増加した。そして、農民一人当たりの年間収入は134元から4140元に増えた。また農村の貧困人口が2億5000万人から1479万人に減った。

生産責任制はまた、農民の生産性を高め、大量の労働力を解放した。そして青壮年が農村の郷鎮企業で働いたり、都市へ出稼ぎに行ったりするようになった。こうして農民の収入が増加したばかりでなく、中国経済の長期にわたる安定した発展をももたらした。

 

人民中国インターネット版 2009年2月16日

 

 

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