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「金融」と「環境」の二大危機に中日はどう向き合うか

 

2009年は、世界各国の経済にとって、恐らく半世紀ないし1世紀以来のもっとも困難な1年になるであろう。

中国南部のある日本料理店で、日系企業の経営者らが集まって嘆いていた。「最近はまったく辛いね。こんな日々がいつまで続くのでしょうか」

とは言え、統計によると、中国から撤退する日系企業は全体の6%に過ぎず、少なくとも90%の日系企業が中国に留まることにしたという。

中国華南の工業密集地域には、輸出不振と工場破産のせいで丸めた布団を背負って帰省する農民工(農村からの出稼ぎ者)が60万人もいた。むろん旧正月を迎えるための帰省ではなく、解雇されたのである。全世界の供給連鎖のどん底にごまんといる「労苦に耐える」ことで有名な中国の農民工は、常に中国経済の高度成長を推進した「無名の英雄」であるにもかかわらず、世界金融危機と経済衰退の衝撃を真っ先にこうむった。帰省した農民工をどのようにすれば落ち着いて暮らさせ、社会の安定を保つかが各地政府の急務となった。

工業・情報化部の李毅中部長が3月に、工業・情報化部と金融界は今年中小企業に対して6000億元以上の貸付をしたいと発表した。写真は第1回の寧波市中小企業融資面談会で、話し合う銀行業金融機構と中小企業

2008年の中国のGDP(国内総生産)伸び率は依然として、「改革・開放」30年以来の平均成長率に相当する9.8%に達し、2008年の経済規模もすでにドイツを抜いて世界第3位の経済大国になったとはいえ、13億以上の人口を抱える大国の経済総量が人口がたった8220万人しかいないドイツを上回ったところで何を誇れるだろう。恐らく何年かで中国の経済総量が日本を超えるであろうが、我々の一人当たりの収入は、日本の30分の1、購買力から算出しても日本の十数分の一しかない。

昨年比較的高い経済成長率を保ったからといって、中国が今回の世界的金融危機の外に身を置いて何の心配もないことを意味しているわけではない。経済成長に循環は付き物で、山あれば谷ありである。中国経済もこの法則からは逃れられない。俗に言う「どこの家にも頭を悩ますことがある」ものだ。

四兆元投資の分析

目下の金融危機で、中日両国の金融システムが受けた影響は比較的小さいが、実体経済が受けた影響は結構大きい。日本経済はすでに衰退し始め、中国の経済成長率も下がっている。特に中国の対外依存型企業は重傷を負い、株式市場と不動産市場も影響をうけている。中国政府のマクロ経済政策は2008年前期に打ち出した「投資を厳しく押さえ、通貨を締める」から「投資を拡大し、消費を促進し、金融を緩め、全力を挙げて8%の経済成長率を保つ」という政策に変更した。そのため、中国政府は内需を拡大して経済成長を促進する十項目の措置を打ち出し、2010年末までに4兆元を投資する。世界的金融危機への迅速な対応措置によって、中国政府の揺ぎない決心と自信が示され、市場に大いにアピールすることができた。

現在、国内の多くの経済界の人々は中央政府が打ち出した十項目の措置に支持と擁護を示しているが、いろんな議論も交わされている。この4兆元の配分に関して筆者は以下のように評価する。

(一)鉄道や、道路、空港などの交通インフラ整備に対する投資は鉄道により多く配分すべきである。中国の一人当たりの鉄道の長さはタバコ程度しかなく、鉄道建設の不足のしわ寄せが毎年春節(旧正月)期間の苦しい帰省の旅を強いられる千万人の農民工と大学生にのしかかっている。

(二)教育、衛生、生態環境の建設に対する投資が少ない。

(三)農民の生活関連工事と農業インフラへの投資をもっと増やすべきである。

(四)前述の対応措置の80%(特に空港、道路、安居プロジェクトなど)は土地を必要とする。1億2000万ヘクタールの耕地面積をかたく守るためには、既定措置にあわせて補足措置として、荒れた土地や砂漠化した土地の開墾と改造に大いに力を入れる必要がある。

どのみち、中国の経済社会の構造上の問題に焦点を合わせるのであれば、「人を本とし、民を先とする」といった国の大局から考えて、正確な経済政策を阻害するような「特殊な利益集団」「国よりも部門の利益の優先」「地方本位主義」をできるだけ排除しなければならない。この道理は学者として語るだけなら簡単だが、政治家は各方面の利益にバランスよく応えなければならない。その難しさは並の人には想像も納得もいかないだろう。

 

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