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「金融」と「環境」の二大危機に中日はどう向き合うか

 

日本企業の長所を学ぶ

現在、中日の経済学者は自国経済にどのような問題が潜んでいるかについて、討論や反省を重ねている。新聞雑誌などでこの手の記事をよく見かける。

西洋の国々でマルクスの『資本論』が一時ベストセラーとなり、日本でも『資本論』の漫画版が出版された。もちろん、西洋が「共産主義」に改信し、資本主義を信じなくなったというわけではない。しかし少なくとも、マルクスが予言した「金融資本に統治される世界」について反省する人が確実に増え、「資本主義生産方式のすべての国は、生産過程をなくして儲けようとする妄想病に周期的にかかる」というマルクスの鋭い分析を何度も吟味している。

中国税関の統計によると、1月の中国紡績品服装の輸出は152億3000万ドル、昨年同期比0.7%下降し、先月比5.2%下降した。写真は江蘇省のある服装輸出企業の生産現場

この経済グローバル化の時代、一方で国と国の間の境界は厳然と存在し、曖昧は許されない。もう一方では各国の利益は互いに浸透し合い、影響し合い、求め合う。言い換えれば、各国の利益はもはや孤立、隔絶、閉鎖、無関係ではなく、人類社会はすでに孤立して閉鎖的に「国家利益」を優先する時代ではなくなっているのである。またそうしようにもできない時代を迎えた。金融危機という大敵を目の前にして、中日両国は経済上誰が誰に助けを求めるのかを議論している場合でもなければ、どちらの要求が多いか大きいかを議論する場合でもない。われわれ両国は自信を固く持ち、手を携えて、抱き合って温めるように困難を乗り越えるべきである。

中日両国は近すぎて、狭いキッチンで皿がぶつかり合うように摩擦も生じる。両国の利益に矛盾が生じたときは、協議して解決し、矛盾を深刻化させないようにすべきである。敏感な問題においては、傷つけ合わないために、むやみに競わず、また、排他的民族主義を刺激して悪循環の再発も防がなければならない。私達は「戦略的互恵」という言葉を絵空事にしてはならない。

「中日の戦略的互恵関係」は両国企業の協力関係の中でもっと実現すべきである。私がここで強調したいのは、中国企業は日本企業との協力関係を強めるだけではなく、日本企業の長所を真剣に学ぶべきだということである。それでは、中国の企業に比べて、主に日本企業のどのような長所を学ぶべきか。それについて私は中国制服産業協会の王耀珉さんがまとめた5つのポイントが実によくできていると思う。

第一、「人を本とする」という経営コンセプト。物づくりのいたるところにこのコンセプトが現れている。

第二、組織力に依拠している。代々受け継がれて来たものと、創意工夫と新機軸の積み重ねを大切にしている。

第三、日本人は仕事においても、処世においても、向上心を忘れずいい加減なところがなく、ブランドを作り上げていくという企業精神が細かなところにまで随所に現れている。

第四、誠実であること。技術も、品質でも、資金の貸付などにおいても、すべて誠実である。このような誠実さは自覚するところから自然に滲み出るものである。

第五、環境保護を重んじること。環境保護は日本の人々の心に深く刻まれている。環境保護を行うのは根本的には国民の品位の問題である。

昨今、人類は金融危機だけでなく、環境危機にも直面しており、まさに二大強敵が目前に迫っていると言えよう。その強敵たちと戦うことの方が二国間に横たわる全ての問題より重要である。人類は今「救い」か「自滅」かの岐路に立っていると言える。

「環境」に経済協力で立ち向かう

2008年5月に中国の胡錦濤国家主席が日本を訪れた「暖春の旅」の期間中、中日双方は「第四の政治文書」に署名し、「互いが脅威にならない」ことを確認した。それによって、人類の「共同の脅威」である環境問題を片隅に追いやって顧みなくなれば、人類に取り返しのつかない災難をもたらし、後代子孫からの怨嗟を免れない歴史的過ちを犯し罪悪の深淵に陥るに違いない。

「中日の戦略的互恵関係」すなわち中日「第四の政治文書」を確実に実現するため、また中日関係を真の改善に導くための現在のもっとも大きな課題は、両国民の感情、とくに日本人の中国に対する感情を改善することである。わたしの友人である早稲田大学の木下俊彦教授が言うように「もし国民レベルの相互理解がなければ、両国関係の真の改善もあり得ない」

2008年大連中日貿易投資商談会は、日本の23の都道府県から178の企業が参加した。中国の20以上の省市の2000の企業、5000人以上が日本側と商談した

最後に、宮崎駿監督の言葉を二つ引用させていただきたい。一つ目は「子どもたちを民族主義から解放すべきだ」。二つ目は「日本がもっともやるべきことは、内需拡大のために橋と道路を造ることではなく、子どもたちの環境をよりよくすることだ」

環境問題は超マクロ経済に属する。したがって「金融危機下での常勝思考」とは、超マクロ、マクロ、ミクロといった三つの段階での立体的長期的な思考をいう。その思考に基づけば、中日両国の経済協力の幅は十分広々としており、悲観的に考える必要はない。

最近中国商務部(省)の魏建国副部長は、中国の省エネと排出削減市場は非常に広いと言った。向こう5年間で、世界の省エネ環境保護設備の30%が中国からの発注になり、市場規模は3000億ドルに達する見込みである。仮に日本企業がその内の20%を獲得すれば、金額は600億ドルになる。この数字は2007年の日本の対中直接投資より10倍も多い。私はここで日本の企業に宣伝するつもりではない。事実を語っているに過ぎない。世界から「省エネモデル」と称される日本が政府の支援(例えば日中環境保護基金を設置するなど)が得られ、価格も多少値下げする努力をしさえすれば、日本企業は中国省エネ環境保護に関する注文書を30~40%得ることも可能である。これは商業問題だけではなく、宮崎駿監督が言う「子どもたちの環境をよりよくする」ために貢献することになるし、また人類にとってなくてはならない地球の環境に貢献することにもなる。(日本研究者 馮昭奎=文)

 

人民中国インターネット版 2009年7月31日

 

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