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2009中国経済の6ポイント

「四兆元」の効果が現れた

沈暁寧=文

世界的な金融危機に対応し、中国政府は2008年11月、国内消費を呼び起こし、経済成長を刺激する「四兆元の投資計画」を打ち出した。

この2年間にわたる膨大な政府の投資計画をサッカーのゲームに喩えれば、「前半」である最初の一年はもうすぐ終わる。現在のところ、「四兆元」の刺激策が効果をあげたことは明らかである。

目標を達成した「前半」

2009年3月、国家発展・改革委員会は「四兆元」投資の具体的な投資先を発表した。その中には四川汶川大地震の被災地の復興・再建に使われる一兆元、全国の鉄道、道路、空港、水利などのインフラ建設に使われる1兆5000億元が含まれ、投資計画全体の62.5%を占めていた。残りの資金は生態環境や民生プロジェクト、社会事業、技術のレベルアップなどの分野に投入される。

北京市が181億元を投資して建設した第6番目の環状道路が2009年9月に開通した(新華社)

そのことから、中国政府が実施しているこの巨額の投資が、国民の生産や生活環境の改善をはかる建設的な資金投入であることが読み取れる。生産拡大が難しい時期に、国内市場の消費を刺激することによって、社会生産の発展をもたらそうというのである。

中国では、高い経済の成長率は、高い就職率を意味する。成長のスピードが一旦、急に減速したら、それによってもたらされる影響は深刻だ。だから「四兆元」の刺激策の狙いは、中国経済が引き続き安定的に、かつ高い成長率で発展するよう保証するところにあるといえる。

「四兆元」の刺激策によって、中国では投資ブームが巻き起こった。河北省は、今年1〜7月に累計で250億元を投資し、省内に高速道路21本を建設し、その総距離数は1720キロに達した。全国の鉄道の中枢である河南省は、今年、364億元を投資し、鉄道網を改造・充実させた。

現在、天津市、上海市、広東省広州市などの沿海地域から、安徽省合肥市、雲南省昆明市、新疆ウイグル自治区ウルムチ市などの内陸都市まで、全部で22の空港の建設・拡張工事が行われており、そのうち、九カ所の空港は新設である。この工事の費用は1000億元近い。また他の分野でも、このような大規模なプロジェクトはかなり多く、輸出不振に苦しんでいる企業に、新たな市場をつくりだした。

中央銀行である中国人民銀行が10月初めに発表した全国5000社の工業企業についての調査によると、第3四半期の利潤率は第2四半期の50.8%から53.8%に上昇した。野村證券中国地区チーフ・エコノミストである孫明春氏はこれについて「企業の利潤回復はますます広がり、2009年の第3四半期の企業利潤はさらに改善された。第4四半期や2010年には、企業利潤は大幅に上昇するだろう」と予測している。

中国国家統計局が10月22日に発表したところによると、今年の第1〜第3四半期における中国のGDPは21兆7817億元で、昨年同期比7.7%増、第3四半期の成長率は8.9%に達した。これらのデータが示しているのは、中国経済が金融危機後、GDPの年間成長率8%を目指すという政府の目標を、少なくとも現時点までに達成したということである。

肝心なのは「ゲームの後半」

しかし現在、中国政府はほっと一息つくときではない。「四兆元」の対策が国内の経済を刺激し、牽引したが、同時に隠されていたリスクもだんだんと鮮明になってきたからだ。中でももっとも論議を呼んでいるのは、一部企業の生産力の過剰、インフレの可能性、資産価格のバブルの問題である。

現在、中国の粗鋼の生産は6億6000万トンに達し、生産力は世界の半分近くになっている。大規模なインフラ建設は国内の鉄鋼市場のニーズを拡大したとはいえ、鉄鋼の国内消費量は4億5300万トンにとどまっており、依然、4分の1の粗鋼は輸出によって消費されている。

大地震に見舞われ、家をなくした四川省綿竹地区の村民たちは2009年9月、国が建てた新居への引越しを祝って乾杯した(新華社)

2009年4月、中国西北部の青海省西寧市と甘粛省蘭州市を結ぶ蘭青鉄道が開通した。これは青海省では最初の電化された鉄道である(新華社)

国家発展・改革委員会の産業協調司(局)の陳斌司長によると、金融危機以後、世界での消費は「安定発展期」にあり、輸出によって過剰な生産を消化することは客観的には実現しがたいという。中国の鉄鋼の生産力が過剰であることは事実である。そのほかにもセメントや板ガラス、風力発電設備などの業種でも、程度の差はあれ、同じような状況が現れている。  野村證券の分析では、「四兆元」刺激策によって巻き起こされた投資ブームはまだ頂点に達していないので、来年の投資は今年のレベルをはるかに上回る見込みという。そのため、現在、生産力が過剰になっている業種でも、来年は、生産力が足りないという現象が現れるかもしれない。

にもかかわらず中国政府はやはり、しかるべき調整を行い、生産力過剰の業種が生産を拡大するプロジェクトをこれ以上許可しないことにした。いかにして「四兆元」刺激策の役割を引き続き発揮させ、産業構造の調整によって利益を追求し、損害を避けるか、これが「ゲームの後半」に中国政府が実行しなければならない重要なポイントである。

中国が金融危機の中で「四兆元」刺激策をタイムリーに打ち出したことに対し、国際社会はみな、この「中国モデル」が中国経済の危機克服に有効だったと肯定的に評価している。

来年以後、もし経済刺激策を実施しなければ、中国経済は何によって発展してゆくのか。経済刺激策を続けることによって中国企業は「投資依頼症」にかかってしまうのだろうか。「四兆元」刺激策が危機の中で果たした役割は注目を集めたが、それが中国経済にもたらした長期的な影響は、もっと注目するに値するものである。

 

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