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産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 巣湖

 

井上俊彦=文・写真 王衆一=写真

農業都市の個性を忘れず 負の経験は受け入れない

まず訪れたのは、中国5大淡水湖に数えられる巣湖と長江にはさまれた巣湖市だ。こののどかな農業都市が今、大きく変わりつつある。

安徽省は産業移転受け入れの条件が整い、省外からの投資額は2009年には4640億元に達し、過去4年間の年平均増加率は54.5%となっている。巣湖市には、すでに石炭からエタノールを生産する巨大なプラントが姿を現しつつある

 

ここではすでに、上海から進出した安徽華誼化工公司が石炭からエタノールなどを生産する最先端プラントの建設を急いでいる。中国有数の化学企業と地元資本の合資による国有企業だ。同社は進出の理由について、原料の産地に近く、水運や陸運が便利で、大規模な用地が確保できるという条件だけでなく、地元政府の汚水処理に対する支援も決定要素になったと説明している。 

大きな立体模型を前に、生産設備と環境保護技術の先進性を力説する同社の胡国偉社長に、「最新の設備を運用するには最新の技術を持った人材が必要では?」と質問してみた。彼は少しも動じることなく「基本的に現地の人材を採用しており、稼働に向けて5年をかけ上海で教育、訓練を進めています」と胸を張った。

「産業移転が現代農業の発展にもつながってほしい」と、巣湖市委の陳強書記

 

市関係者は、産業移転によって農業が基盤という市の特性を転換するのではなく、移転が現代農業の発展にもいい影響を与えることを期待しているという。「ですから時代遅れの産業や工場施設、それに伴う汚染などの移転はゴメンです。ネガティブなものは受け入れません」 

ところで、産業移転のための土地確保では農地も収用される。同市の江北産業集中区では初期着工エリアだけで12000人の農民が田畑を離れるが、そうした人たちのための「安置房」と呼ばれる住宅の建設現場も取材した。1500戸余りが入居する天和苑団地では、一人当たり40平方㍍という広さを確保しただけでなく、農民に徹底的な聞き取り調査を行い、希望に基づいて高層住宅と低層住宅の割合を決めた。また、農地を離れても農具を捨てるに忍びない農民の心理に配慮し、農具置き場まで設置するという。(次は蕪湖について)

 

建設が進む天和苑団地(上)では、農民の希望により高層住宅と低層住宅の割合を2対1とした。幼稚園や学校なども建設される(下)

人民中国インターネット版 2011年5月
 

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