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産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 銅陵

 

井上俊彦=文・写真 王衆一=写真

豊富な銅の生産を背景に 先端企業の誘致に成功  

蕪湖市の西に隣接する銅陵市は、皖江モデル地区の中でも最も面積が小さく人口も74万人ほどだが、3000年以上前から銅を生産してきた歴史を持ち、今後は「世界の銅都」を目指すという。同市の誘致に応じた、いずれも銅を原材料とする2つの企業を取材した。  

銅陵獅子山経済開発区に建設中の、海亮集団銅陵産業パークの工場では、生産ラインがすでに稼働を始めていた。エアコンに使う精密銅管を生産するラインだ。今年4月に一期工事が完成すると、年産額25億元の生産が可能となる。同社の傅林中社長は、見たところまだ30代の若さだが、上海、ベトナムでの生産ライン立ち上げを担当してきた経歴を持つ。「では、この工場完成後は?」という質問をすると、「人事は上が決めることですが、当社は『現地化』を企業文化としています。これまでの工場も完成後は地元の人がトップになって運営しています」と落ち着いた様子で語った。

傅社長によれば、海亮集団銅陵産業パークの主な得意先は隣接する蕪湖にある複数の電器メーカーだという。モデル地区内の都市連携も進んでいるようだ

一方、電子機器で使われる多層高密度のプリント基板(PCB)を生産する超遠精密電子科学技術公司は、輸出が全体の6割を占める国際的専業メーカーだ。同社は広東省深圳市から銅陵市経済技術開発区のPCB産業区に移転して来た。同社の陳亨書部長の説明によれば、2008年の金融危機の大きな影響を受けたことから、コストの安いエリアへの移転を決断したという。移転のポイントとなったのは、原料の調達から出荷までワンストップで完結できる立地条件の良さに加え、地元採用従業員のレベルの高さ。「多くの業務でパソコンを操作する必要がありますが、そうした人材の確保に苦労がありません。これは、深圳では考えられないことです」と陳部長。

主要取引先である海外メーカーの要求を満たす優れた製品を生産していると説明する超遠精密電子科技公司の陳亨書部長(左)。日本への輸出比率も13%に達しているという

そして、汚染問題に対するサポートも大きな魅力だった。地元政府は、PCB産業区に国の基準を大きく上回る能力の汚水一括集中処理センターを設置したのだ。しかも、完成後5カ月間の試運転を行うほど入念に準備した。その背景には、同市が味わった公害の経験がある。市の関係者は、数年前までは風向きによって異臭を感じることもあったと、包み隠さず話してくれた。こうした経験が、産業移転にも十分に生かされているようだ。

 

人民中国インターネット版 2011年5月

 

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