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産業移転の最前線 安徽長江流域を行く 合肥

 

井上俊彦=文・写真 王衆一=写真

受け入れ発展させる力で整備が進むモデル地区の顔  

四都市での取材を終えて合肥に入ると、郊外のあちこちで建設中の鉄道や高速道路のための橋げたが見られ、住宅を建設するクレーンが林のように立ち並んでいる。さすがに安徽省の省都だけに、モデル地区の中でもすでに大きく発展しつつあると実感できた。その合肥では、日本とのユニークな協力を行っている企業を取材した。  

安徽鑫昊プラズマディスプレー公司は、日本の日立との合弁による国有企業だ。二〇〇九年から合肥新駅総合開発試験区に工場を建設、今年一月からプラズマディスプレーの正式生産を開始した。現在は八五インチが最大だが、組み合わせることによって、街頭の大型ディスプレーとしての利用も見込めるなど今後の可能性は大きい。

王振江部長(左2)は、プラズマディスプレーの今後の成功に大きな可能性を感じているようだ
総合管理部の王振江部長の説明によると、プラズマディスプレーはもともと表示のきれいさや視野角の広さ、消費電力の少なさなど、多くの技術的優位性を持つ。日本ではコストの問題などで液晶に一歩譲ったが、同社では回路などで金の使用を銀に置き換える技術を確立、また研究開発から生産まで一カ所に集中するなどコストダウンに努め量産化を実現したという。つまり、日本の優れた技術を受け入れ、それをベースに中国にマッチするようアレンジし、競争力を高めた製品を生み出したというわけだ。

 同社のアプローチは、さまざまなものを受け入れ調和させるという、モデル地区の姿勢そのものを表しているようだ。五都市での取材を終えて振り返ると、産業移転プロジェクトというものの、沿海地区の企業がただ内陸部に移転するという単純なものではなく、沿海地区での成功をもとに中西部の大きな市場を目指して進出するなど、さまざまな目的の企業がこの地に殺到している印象だ。日本企業も早くからこのエリアに注目していたようで、鑫昊以外でも合弁を進めている日本企業の名前をいく度となく耳にした。  

ところで、取材で出会うさまざまな人に、「この地の若者がデートで行きたい街は蕪湖ですか、合肥ですか、それとも南京ですか?」という質問をしてみた。一つの巨大中核都市を持たないこのエリアで、若者の消費・文化志向がどの都市を向いているのか知りたかったからだ。最も多かった答えは「地元で買い物する」で、これは予想の範囲内。そして次が「上海に行くよ」だった。意外な名前が出てきて驚いたが、産業移転の推進力ともなった交通網の整備は、消費・文化面では思いがけない競争相手を引き寄せてしまったようだ。上海まで二時間で行ける便利さは、逆にここで得た収入を上海で使う消費スタイルにもつながりかねない。今後、教育程度と収入レベルの高い住民が増える中で、こうした人たちのニーズを満たす商業的、文化的魅力も課題となるだろう。  

取材を通じて、新しい産業のハーモニーがすでに奏でられ始めていることはよく分かった。今後は、産業が人々の暮らし、自然環境との調和のなかで発展していくことを期待したい。

 

人民中国インターネット版 2011年5月

 

 

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