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飛躍する天津濱海新区の今

 

井上俊彦 張春侠=文・写真

改革開放以降、1980年代には珠江デルタの、90年代には上海・浦東の経済発展が日本でも大々的に報道され、注目を集めた。しかし、現在急速な開発が進む天津濱海新区に関する日本メディアの報道は意外に少ない。同区の国内総生産(GDP)はすでに2010年に上海浦東新区のそれを上回り、第12次5カ年規画(「十二・五」/2010~15年)期間末には1兆元を突破すると見込まれているのだが……。英国の専門家が「世界の他の場所で起こり得ないことが、ここでは起こり得る」と驚嘆した同区の今を取材した。

巨大なクレーンが林立する。このエリアはやがて濱海新区の金融センターとなる

東京都がすっぽり入る超大規模開発が進む

北京から天津濱海新区までは直線距離で約120㌔、高速鉄道を使えば北京南駅から1時間足らずで濱海新区の中心にある塘沽駅に到着する。駅周辺は繁華街になっており、トヨタ車のタクシーも数多く走っていた。実は、多くの日本企業がすでに濱海新区に進出し成功しているのだ。そして、駅前を離れると目に入ってくるものは大型トラックの車列と建設用クレーンの林で、それらは開発のスピードを如実に物語っている。

濱海新区の面積は2270平方㌔だという。数字だけではピンと来ないので、比較になりそうなものを調べてみて驚いた。なんと東京都の総面積が2188平方㌔なのだ。

濱海新区は天津市の東側部分にあり、渤海湾に面している(天津市濱海新区提供)

今回は、開発を推進する政府機関やすでに立地したハイエンドな製造業、研究機関などを取材した。どの取材先もとてつもない計画数字を並べ立てるのではなく、これまでの実績をもとに地に足が着いた説明をしてくれた。研究機関も、研究のための研究ではなく、産業や民生に生かすことを強調していた。これらは、中国政府が打ち出した「十二・五」の方向と完全に一致している。経済が、社会の調和、環境保護とともに発展していくよう強く意識し、人々の暮らしがより素晴らしいものになることを目指しているのだ。

また、管轄する地元政府関係者の意識レベルの高さも印象に残った。例えば、高付加価値製品を多く取り扱う保税区では、通関の効率化に積極的に取り組んでいる。以前は中国進出に関して各種手続きの煩雑さが日本企業を悩ませたが、ここには高いコスト意識を持つ行政機関のサポートがあるのだ。

代表的プロジェクトをいくつか紹介しながら、濱海新区で今何が起こっているのかを探っていこう。

 

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