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再評価される中国の伝統農法

 

張洪 孟維娜=文

中国は世界の主要な農作物原産地のひとつで、農作物や野生の近縁植物は数千種類もあり、農作物の遺伝形質の資源数は世界のトップクラスに入っている。2012年3月、北京農業展覧館で開催された第一回中華農耕文化展は農業文化遺産の保護にフォーカスを合わせ、来場者の深い関心を呼び起こした。

四つの保護ポイント

3月8日、茶芸師は第1回「中華農耕文化展」で福州ジャスミン茶の伝統的な製作技術を披露する(CFP)
貴州省東南部の従江に、幾重にも重なり合う山々に囲まれたトン(侗)族の集落があり、「トン郷」と呼ばれている。毎年、24節気のひとつ「穀雨」の前後(4月20日前後)に、トン族の人々は棚田に上り、農作業を始める。温室で苗を育成し、水田に植えてから1カ月後、今度は稚魚を放流する。稚魚が7~10センチくらいに成長したら、さらにアヒルのひなを放し飼いにする。これで「稲・魚・アヒル共生システム」という伝統的なエコ農業システムが形成される。

稲・魚・アヒルの共生システムは効率が極めて高い、資源循環型のエコシステムだ。水田は魚に持続可能な生態環境と有機食物を提供し、魚とアヒルは水稲の害虫と雑草を取り除き、稲の良好な成長を促す。

今回の中華農耕文化展では、「トン郷稲・魚・アヒル共生システム」が農業文化遺産の代表として展示された。国連食糧農業機関(FAO)が中国で命名した「世界重要農業資産システム(GIAHS)の保護パイロットシステム」のひとつだ。

中国は最も早くGIAHSプロジェクトに賛同した国のひとつだ。現在、全世界で16の古い農業システムが保護パイロットシステムに指定され、そのうち四つが中国にある。貴州省の従江の「トン郷稲・魚・アヒル共生システム」のほか、浙江省青田県の「稲・魚共生システム」、雲南省紅河ハニ族・イ族自治州元陽県の「ハニ(哈尼)族棚田システム」と江西省万年県の万年貢米の「稲作文化システム」がある。

「世界中の人々が『腹いっぱい』ご飯を食べられるようになったのは『中国ハイブリッド米の父』と呼ばれる袁隆平先生による大きな貢献だが、農業文化遺産の保護は全人類が『おいしい』ご飯を食べられるようにするためのものだ」と、中国芸術研究院の苑利研究員は説明する。

危機に瀕している技術

2012年の「両会」のひとつ全国政治協商会議で、委員のひとり中国書道家協会の言恭達副主席は「農業文化遺産」を直ちに保護するように呼び掛けた。

「現在、古来より生き延びてきた桑、楝、槐などの樹種はだんだん見られなくなり、原生林はさらに珍しくなっている。その地で生まれ育った昔ながらの家禽もだんだん減少し、伝統的な農業技術も次第に消えている」

江西省万年県の域内は世界最古の栽培稲の遺跡の一つで、稲作の起源は1万2000年前にさかのぼる。昔、王室に献上されていた万年貢米は原始的な栽培稲の一種で、これまで人類が保存してきた最古の栽培稲の一種だ。

そのすべては地元の特別な環境によるものだ。ここでは、1日の日照時間は周辺より3、4時間短く、気温、水温、地温も3~5度低く、稲の成長時間がほかの土地より1カ月長いため、食感に優れている。しかし、条件が制約されているため、1ムー(約667平方メートル)の生産量はわずか150~250キロしかなく、稲作より出稼ぎのほうがずっとましだと地元の人は思っている。こうした理由で、上質な貢米の品種は絶滅の危機にさらされている。

そればかりでなく、生存の危機に瀕しているものの中には、中国古代の先人が考え出した間作、水田養魚、桑基魚池(周辺に泥で壁を築き、その上に桑などを植える魚池)、棚田耕作、灌漑不能の耕地での農業、農・林共生、坎児井(カナート、乾燥地域に見られる地下用水路)、遊牧、庭園経済など多数の伝統的なエコ農業パターンも廃棄される危機に瀕している。

誰が重任を背負うか

「蚕のまゆから糸を繰る」という伝統的な技術は来場者から注目を集めた(CFP)
「中国5000年の文明の中核はまさに農業文化」と、中国科学院地理科学・資源研究所の高星党委員会副書記は考えている。

しかし、古い耕作方法を受け継ぐ重任を誰が背負うのか。誰が文化の変遷、技術の進歩、生態の変化を遠ざけて伝統を守り続けて、農業の現代化と新農村の建設によりよく貢献できるのか。早急解決が待たれる課題だ。

中国科学院地理科学・資源研究所の自然・文化遺産研究センターの閔慶文副主任は、無理に「大」と「多」を求めてはならないし、農業文化遺産に指定された耕作方法と農耕文化を普及する必要もないと考えている。

閔副主任によると、農業機械が十分に利用されにくい、表土の流失や土地の退化が発生しやすい山地では、伝統的な耕作方法を奨励すべきだ。たとえば、紅河の稲作棚田、青田の稲田養魚、従江の稲・魚・アヒル共生、万年の貢米生産基地のような生産方法は現地の自然条件に適したうえ、地元の社会、経済、文化の発展の需要を満たすことができ、地域の持続可能な発展にもつながるという。

2012年の「両会」で、農業文化遺産の保護は厳粛に討論されたテーマとなった。

言恭達委員は次のように呼び掛けた。各省の農村工作委員会が中心となって、文物、農業、水利、林業、牧畜業、漁業、環境保護などの分野の管理部門が参加する農業文化遺産連合保護機構を設立し、保護の範囲、それぞれの責務、原始生態系の修復、伝統的農業生産技術及び施設の保護などの任務を明確にする。また、全面調査によって、重点的に保護する遺産のリストを選出し、特に絶滅の危機に瀕している重要な遺産は上述の部門がそれぞれ責任をもって保護する。

 

人民中国インターネット版 2012年7月

 

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