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研究成果を社会へ還元 中国経済学発展に貢献

       山東大学経済研究院院長 黄少安氏

趙秋麗 宋坤=文

2011年10月16日、中央財経大学で講義をしている経済学者の黄少安教授

「彼は心が広く、名誉や利益に対して無欲で、将来の経済発展を考えて、目を向けるべき未開拓の研究分野を見極められるだけでなく、人材確保や後進の育成など、研究成功に欠かせない実務も立派に果たすことができる」。これは、多くの中国経済学者が、ある人物に対して下した評価だ。その人物とは、中国で著名な経済学者であり、長江学者・特別招聘教授、山東大学経済研究院院長などの肩書きを持つ黄少安教授だ。

黄氏は、中国の財産権理論と制度派経済学の第一人者だが、当時経済学分野の研究を選んだのは、偶然の所産だった。「学習環境は決して良かったわけではないし、研究を成功させる近道もなかった。しかし、曲がりくねった道も疾走すれば、決して先頭に立てないわけではない」と黄氏は語った。

黄氏は、小中学校教師の家庭に育ち、幼少の頃は母親と共に農村で過ごした。1970年代後半、中国は大学入試を再開し、一生懸命学業に打ち込んだ彼は、大学に首尾よく合格した。大学に進学してから間もなく、黄氏は同級生たちと、当時農村で推進されていた「世帯生産請負責任制」について論じ合った際に、彼は幼少の頃農村で展開されていた集団統一の経営方式と世帯生産請負責任制を比較考慮した。これがきっかけとなって経済学に興味を抱くようになった。その後、大学院へ進学する時に、黄氏は経済学を選んだ。彼は、「国家は経済建設を中心に、経済学分野において優れた人材を大勢必要とするだろう。自分自身の理想を国家の必要に合わせる必要がある」という見解を持っていた。これを機に経済学の研究を極めることが、黄氏が生涯をかけて打ち込む目標となった。

法経済学界のパイオニアへ

1990年代の初め、黄氏は博士課程を卒業後、山東大学に赴き事業を始めた。そこで彼が完成させた「財産権経済学導論」は、現代西洋財産権経済学の基本理論を中国で初めて系統的にまとめたもので、マルクス主義経済学との比較分析を行っている専門書だ。

同時に黄氏は、中国の立法と司法の効率を改善するため、中国国内で法経済学の研究や法経済学の人材育成そして法経済学の知識を普及させる必要を悟った。そこで彼は法経済学の研究を開始し、また法経済学の優れた専門家を育成するため、積極的に人材を集めた。そして2003年より浙江大学と共同で一年に一度、「中国法経済学フォーラム」を開催し、こうして彼は中国法経済学のパイオニア及びリーダーとなった。

黄氏の教え子である山東大学の黄凱南教授は、「私は学生の頃、課題を選ぶ時にはいつでも、黄教授に会いに行って相談しました。なぜなら、彼は他の人ならまず思いつかないような問題を指摘することができたからです」と語った。黄氏は、農民による私有地を資本とした投資活動への分析と解釈により、「中国第一回農村発展研究賞」を受賞した。所有制度・株式制度・財産権制度と企業制度の論理的関係についての論文、1980年代の国有企業の株式制度改革への理論上の裏付け、制度の変遷に関する三つの理論仮説の論拠と提起などにより、中国経済学の最高賞である「孫冶方経済学賞」を受賞した。20年にわたる黄氏の学術研究成果は数十件にも上り、その内の多くが中国経済学において空白だった領域を埋め合わせるものとなった。そして2006年に黄氏は、長江学者・特別招聘教授に選ばれた。長江学者とは1998年に始まった「長江学者奨励計画」によって優秀な科学者の中でも大きな業績を達成した研究者に贈られるポストであり、同計画の目的は、中国の大学の学術地位の向上と高等教育全般の振興のため、国内外の優秀な学者を中国の高等教育機関に招致して、国際的に卓越した学術界のリーダーを養成することだ。

「一人なら歩くテンポも早いが、遠くまで歩くことはできない。グループで歩くなら、歩調は少し遅いかもしれないが、遠くまで歩いて行ける。グループに溶け込んではじめて、一人ひとりの価値が真に発揮されるものだ」と黄氏は述べ、自ら学術の研究に専念する傍ら、優秀な学術研究グループの結成に強い情熱を注いだ。

彼は自分のグループをいつも誇りに思っている。近年、彼が主体となって招聘した人材は、みな自分よりレベルの高い、もしくはより大きな潜在力を持つ学者だ。国際的に有名な制度派経済学者、ブリティッシュ・アカデミー会員、欧州進化経済学会の主席であるジェフリー・M・ホジソン(Geoffrey.M.Hodgson)教授はそのグループの一人だ。「黄教授が率いる山東大学経済研究院は、中国における制度派経済学研究の中心地であることに疑いの余地はない。それがグループへの参加に魅力を感じた主な理由だ。研究院での自由な学術的雰囲気は非常に印象深いものだ」とホジソン教授は語っている。

研究と応用で社会に奉仕

 近年、黄氏のグループは主に経済学基本論理の研究を行っているが、積極的に国家及び省(自治体に相当)・部(省庁に相当)クラスのソリューション研究課題を担当し、政府と企業の政策決定においてアドバイスも行っている。グループは、国家戦略の需要に目をつけ、『山東半島藍色経済区発展報告』『黄河デルタ高効率エコ経済区発展報告』などの課題について研究し、政府の関係部門から高く評価された。これまで二度にわたり中国教育部の重要課題を担当して、必要な研究を完成させ、その研究成果は、アドバイスあるいはソリューションとして採用された。現在、黄氏は山東大学の山東発展研究院常務副院長としてグループを組織し、山東省の経済・社会発展のために、政策決定に関するコンサルティングとアドバイスを行っている。

「グループが現実の問題に巧みに着目し、理論と実践を上手に結び合わせることができているのは、チームの『大黒柱』である黄教授のおかげだ。黄教授は、中国において理論と実践を首尾よく結合させた経済学者の一人だ」と、メンバーの魏建教授は評価している。これに対して、黄氏は「政策決定者に提供したどのアドバイスも実行に移される可能性があり、現実の社会に直接的な影響を与えるので、科学的な理性を堅持し、慎重に慎重を重ねなければならない」と語った。

黄氏と彼が率いるグループは常に次の点を強調している。それは課題への取り組み、論文の作成、書籍の執筆及びその他の研究には、科学的価値だけではなく、応用的価値もなくてはならないということだ。彼らの努力の下、山東大学はすでに中国において重要な制度派経済学の研究拠点となっており、一部の研究成果は国際的にも先進的な水準に達している。

 

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