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「四つの全面」で経済底上げ日本の成長経験とは違う道を模索

文=陳言

3月、全国人民代表大会(全人代)、中国人民政治協商会議(全国政協)が開かれていた北京の街角で、「四つの全面」を強調する多くのスローガンを見掛けた。 

「『四つの全面』は、習近平同志を総書記とする党中央の戦略的思想を体現し、重大な指導的意義を持つ」と、15日に開かれた全人代閉幕式で、張徳江全人代常務委員会委員長が力を込めた。 

小康(ややゆとりのある)社会を全面的に実現、改革を全面的に深化、全面的法治、党を厳格、全面的に管理という「四つの全面」は、一般市民が聞いてすぐ理解できる社会づくりの目標である。35年前に、国内総生産(GDP)を4倍にする「翻両番」という成長目標が立てられた際、20世紀の終り頃、小康社会を創り上げ、1人当たりのGDPを800㌦程度にするという目標数値も合わせて打ち出した。すでにこの目標を達成した現在、政策を継続させていくには、新しい目標設定とそれに緊密な関係がある改革、法治と行政に携わる共産党員の管理が不可欠である。 

全人代は中国経済の底上げを「四つの全面」の推進によって実現する意向を明らかにしたが、中国社会もそれによって今後大きく変化するだろう。

 

地域格差を縮めて小康社会 

 

日本でも地域格差問題について議論されることがあるが、中国の都市と農村、沿海部と内陸部の格差は、日本で議論された地域格差とは比較ならないほど大きい。「お腹いっぱい食べられ、寒さを凌ぐ服を持っている」ことが、今までの小康社会であり、「全面的な小康社会」は全中国の津々浦々にまで、ある程度の豊かさを実現しようという目標である。 

その中で物質的な豊かさは、30年前に中国市民が求めていたものとは大きく異なる。「自転車、ミシン、時計があったら、早く結婚できる」と30年前の若者は「三種の神器」に憧れていた。都市部の若者は、場合によって、時計を12㌅テレビと置き換えていた。日本の家電がよく売れた時代の始まりだった。 

いつの間にか、沿海部では「車、住宅、観光旅行」が結婚の条件となった。自転車から自動車への変化は、社会を大きく変貌させた。都市はどんどん拡大し、高速道路、高速鉄道も絶えず距離を伸ばし、その先には海外旅行ブームがあった。今年の春節には、45万人の中国人観光客が日本に殺到し、「爆買い」したと日本では報道されたが、実はタイなどの東南アジアの国々─日本と比べてずっと国土面積が小さく、観光資源が少ない国々─には、中国人観光客が早くから行っていた。 

今後20年間には、おそらく沿海部の観光ブームが内陸部でも流行し、内陸部の人々も、一度は海を見て、海外にも出掛けるようになるだろう。香港、マカオだけでなく、韓国、タイや日本へも観光に行く人々は1億人から数億人に増えると見込まれる。

 

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