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AIIB加入見送りに疑問 日本の態度はWTOとなぜ異なる

 

文=陳言

福田康夫元首相は、3月26日から29日まで海南省で開かれたボアオ(博鰲)・アジアフォーラム(BFA)期間中は多忙だったに違いない。福田元首相は2001年に設立されたBFAの理事長を務めている。中日関係が紆余曲折し、政府、民間の交流チャンネルがどんどん細くなる中、「福田ルート」は両国の意思を確認し得る貴重な存在となっている。

ただし、今年の場合、中日関係についてより、アジアで社会インフラの整備を促進するために、金融面で新しい役割を果たすアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立について、福田理事長にメディアの質問が集中した。3月31日がAIIB加入申請の締切りだったため、直前に開かれたBFAではその設立について多くの議論が重ねられ、福田理事長もアジアだけでなく、世界的に注目されているAIIBについて、多くの発言を聞いたはずであり、安倍内閣の取る政策について、コメントする立場にないとは言え、中国と日本、さらに世界におけるAIIBについての温度差を普通の政治家より強く感じたに違いない。

領土、歴史に関して、国によって見解がまったく異なることはある。しかし、地域の経済発展のために新しい経済行動を起こし、世界中のほぼすべての関連国が賛成しているにもかかわらず、地域外の国だからとか、または地域内だが、特別な外交政策を取っているという理由で、その行動にかたくなに反対する態度は理解しにくい。そのはざまにいる福田理事長は、ボアオではどんな思いでフォーラムを主宰していたのか、マスコミは報道していないが、さぞ複雑な気持ちだっただろうと推察する。

加盟実現で日本に感謝の声

かつて中国が世界貿易機関(WTO)に加盟申請した際、世界で一番強く中国を応援した国は日本だった。2001年に中国は念願の加盟を実現した。中国の政治家やWTO加盟交渉の担当者に話を聞くと、一様に日本に対して感謝している。

WTO加盟交渉は決して平坦ではなかった。特に中国は1986年7月10日、「関税貿易一般協定(ガット)」の締約国としての地位回復を申請し、2001年11月10日に正式に加盟するまで、実に15年間もかかった。その間、中国人の期待は湖から沸き上がる水のように膨らんだり、しぼんだりした。特に米国との個別交渉には幾つもの難関があり、中米両国は十数年もの歳月をかけ、十数回の交渉を経て、数十カ国との間で合意がなされてから、最終的に二国間交渉で合意に至った。当時中心となって仕事を進めていた朱鎔基元総理はWTO加盟を果たした数年後に涙声で当時を振り返った。

恐らく日本の支援などがなければ加盟はより難しかっただろう。当時の中国は、門戸を開放した場合、経済や社会がどんな影響を受けるか、誰にもよくわからなかった。国の経済規模は日本の3分の1しかなく、加盟によって必ず経済を成長させるという保障もなかった。しかし、日本が世界各国との貿易によって国力を強めたことを実証し、また日本の専門家、政治家との交流を通じて、貿易の拡大によって経済規模も拡大できる、と当時の中国はひたすらそう考え、そう願った。日本の支援の下で中国に立派な果実がもたらされた。2001年の中日貿易高は891億㌦だったが、2013年には3・5倍の3119億㌦に増加した。WTO加盟、貿易拡大は中日双方の経済成長を支えた。

しかし、より大きな貿易体制を作り、その初期段階として社会インフラを整備し、また関連の金融体制を構築したいという中国の構想に、今の日本からはすぐには賛同してもらえなくなっているようだ。

いつまで反対論を貫くのか

ボアオ・アジアフォーラムで、習近平国家主席は金融面での協力体系は多くの利益を得る行為であり、開放的に、包容力をもって「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」建設に取り組む必要があると講演した。

日本のメディアはもちろんそれを報道したが、一般の読者が目を奪われたのは、AIIBの透明性、腐敗問題、さらに環境問題をどう取り扱うかなどについての記事であろう。福田理事長も中国メディアの取材に答える場合、その点を非常に強く強調した。

それは中国の人にとっては耳の痛い話である。しかし、それが日本の「加入手控え論」の根拠だとは思えない。

アジア開発銀行(ADB)の理事長国として、日本はアジアでのインフラ整備などについては経験豊かだと思われる。日本の金融知識、人脈などをAIIBでは使えないだろうか。今こそ、中国と日本が手を携えて、他の国も貧困から脱却して、世界により多く貢献できるアジアとするよう努力すべきではないか。日本はまた1990年代終わりごろのアジア通貨危機の際、いろいろアイディアを出して、特に金融面で類似の問題を二度と起こさないためにアジア通貨基金(AMF)設立構想を打ち出した国でもある。日本は1990年代に実現できなかったことを、いま中国と一緒に新たな行動を起こすべきではないか。問題は、筆者が読める日本の新聞は限られているが、読んだ記事の中に、ほとんどその視点が見当たらず、日本の専門家にその話をすると、一笑に付され、何の興味も示されなかった。

では今年6月以降も日本は永遠に反対論者の立場を崩さないのか。それもないと思われる。多くの中国人は日本はいずれAIIBに加入すると考えている。

ただし、初めからAIIB内部で英国、ドイツなどの国と一緒にモノを言う理事になるべきではないか。しかし、中国を支援したWTOの時とは違い、日本にはすでにそのような気持ちを少しも持たなくなったようだ。ほんとうに制度の透明性、腐敗の防止、環境の保護などの視角から新しい金融機構をチェックするという考えを捨てずに、AIIBの一員として批判する姿勢を日本は果たしてこれから取る勇気を持てるだろうか。

AIIBに加入しなければアジアで社会インフラのプロジェクトを遂行する日本企業には不利という考えは短絡的かも知れない。公正な金融機関が加盟国以外の国をいじめるなど想像できない。ただし、領土問題や歴史問題が中国と日本の経済にも影響し、さらにアジアでの協力の可能性にまで波及してしまうこと自体を、筆者は大いに懸念している。恐らく、ボアオ・アジアフォーラムで福田理事長は筆者以上にさまざまな思いに駆られただろう。

 

人民中国インターネット版 2015年4月20日

 

 

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