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好感に水を差す「嫌中」懸念 日本観光は1000万人時代へ

 

文=ジャーナリスト・陳言

中国人観光客の「爆買い」が日本で流行語になっているが、筆者の周りでも「夏休みに日本に行きたい」「10月の連休に日本観光を考えている」というような話が多くなっている。昨年だと、同じ話題でも「日本に行けば、右翼に殴られるのではないか」とよく聞かれたものだが、今ではすっかり様変わりだ。ただし、「香港のように大陸から来た買い物客に対する嫌がらせがいずれ日本でも現れるだろう」と懸念する声も出始めている。

実際、日本が米国並に中国人観光客、ビジネスマンに10年ビザを発給するようになれば、中国から日本への観光客は年間300万人を超え、500万人へ、さらに1000万人も見込めるだろう。だが、たとえ1000万人になったとしも、香港への観光や買い物客の5分の1であり、ちなみに2014年の240万人は、香港の20分の1に過ぎなかった。

観光によって中国人の対日イメージは大きく変わり、中国側から関係改善に大きな可能性が生まれてくるだろう。しかし、今の日本の世論を見ると、「嫌中」は高止まりであり、しかも改善の兆しはほとんど見られない。香港で過激な嫌がらせを経験している中国大陸の観光客は、日本のメディア、出版物が繰り返し取り上げている「中国崩壊論」「中国脅威論」を見聞きして、どんな思いをしているだろうか。観光を通じて日本に対して好感を持ったとしても、こうした日本世論に遭遇してもこの好感を持ち続けられるだろうか。非常に懸念している。

観光旅行で変わった日本観

中国のジャーナリストの中には、訪日によって人生観まで変わったという現象を感じている人もいる。

2月の春節(旧正月)に訪日して、「爆買い」をした中国人観光客の動きを見て、月刊『民主と法制』の編集者・記者の李蒙氏は微博(ウェイボー、中国版ツイッター)に次のような論評を発信した。

「日本に殺到した中国人観光客はいろいろ突っ込まれているが、筆者の考えでは、日本に行く中国人は非常に多いどころか、かえ って少な過ぎるくらいだ。中国の国家的利益から言えば、この10倍も100倍もの中国人が日本に行くべきであり、その人数は多ければ多いほど良い。なぜなら、日本に3日間滞在するだけで、30年の間に築かれた世界観、人生観、価値観が変わるはずだからだ。日本は中国から1000年も学んできたのだから、今度は中国が全面的に日本に学ぶ番だ!」

このつぶやきは反響を呼び、数万件の書き込みがあった。その後、さらに拡散し、10を超える掲示板、数十人のブロガーがこれを転送した。

李氏はブロガーの発言、書き込みをした人とのやり取りから、その意見は主に以下の二つのグループに分類できると考えている。

第1は、外国人観光客の視点であり、日本の社会生活に対する客観的な記録と日本の便利でスムーズな交通機関、清潔な環境、しとやかで礼儀正しい市民、良質で安価な商品等々を積極的に評価するグループだ。

第2は、上述の内容から生まれた次のような感慨や見解を持つグループだ。日本の美点は日本人の日常生活の隅々にまで浸透しており、半面、中国社会には深刻な欠落部分があり、中国人が自ら劣った習慣を改めようとし、社会の弊害を改めようとするならば、日本は最適な手本である。だからこそ、より多くの中国人が日本に行き、こうしたことのすべてを自分の目で見るべきだ。

李氏のつぶやき、それに対する書き込みを読んでみると、李氏を支持する人が明らかに優勢でおよそ6割を占め、反対は3割前後だった。

興味深い現象としては、反対意見を書き込んだ人の圧倒的多数が明らかに日本に一度も行ったことのない人たちだったことだ。ブロガーの書き込みの中には、一貫して李氏を支持してきた人が、反対意見を次のように風刺したものもある。「あなたは日本に行ったこともないのに日本をののしっているけど、自分が大ばか者だとは思わないの?」

また逆に、反対意見の中には、日本に行ったことがあるか、日本で長い間暮らした人の「発言はもっと抑制的、理性的であるべきだ」というのもあった。

例え、短期間の観光でも日本に行ってみれば、日本に対する見方は大きく変化する。ただし、日本に長くいると、特に前述のような日本世論に包まれている中国人が果たして観光客のような日本観を持ち続けられるかどうかは疑問だ。

 

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