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日本の構造的変化に注目

南開大学日本研究所教授 張玉来

 日本経済の状態を討議するときは、国内総生産(GDP)成長率だけでなく、日本企業が近年、産業のモデルチェンジで勢いを保っていることを無視できない。2013年から日本企業は3年連続して利潤が急増し、世界的な企業の合併・買収(M&A)も大幅に増やしており、これは日本経済の構造的変化を示している。

 メディアの報道では、鴻海精密工業によるシャープ買収やソニーの身を切るような改革、東芝のスキャンダルなど、日本企業のマイナス情報がしばしば見聞されるが、上場企業の年間の総利益が連続して30兆円を突破したという積極的なシナグルが話題にされることは少ない。14年を例に取ると、金融・保険業を除く日本企業の全産業の経常利益は64兆円に達し、日本のGDPの13%に及んでいる。欧米企業に比べても日本企業の業績は突出している。この利益はまだ家庭にまでは十分に達しておらず、GDPを高めていないものの、研究開発や設備投資、海外でのM&A、関連分野への投資で大きな力を蓄えるなど、企業のモデルチェンジやアップグレードにいっそう大きな可能性をもたらしている。

 補足すると、企業の利益は給与や株式・債券市場などを通じてゆっくり家庭に及び、昨年末に家庭の金融資産は1741兆円に達している。こうした潜在的な消費能力の向上も今後のGDP成長の重要な潜在力になる。

 またアベノミクスは日本の産業環境を変えた。そこには金融改革による円安、労働法規の改革、法人税の引き下げ、貿易条件の改善、環境保護・エネルギー革命などを重点的に含んでいる。11年の東日本大震災の後、産業の空洞化は深刻化し、多くの日本企業は日本で生き残るのは非常に難しいと考えていたが、今はそれも異なる。

 エネルギー革命は日本の産業環境で注目を集めるポイントだ。電力自由化は電力コストの大幅削減をもたらす見込みがある。さらに蓄電や送電網の改良に対する関連企業の努力は、すでに成果を享受する時期を迎えている。

 サービス貿易と新興産業の急速な発展は日本の経済構造のモデルチェンジにおける2大ハイライトだ。日本円の為替レートと政策的な後押しにより、訪日外国人観光客数は12年の835万人から昨年の1973万人に激増した。日本政府がさらに観光ビザの制限を緩めているため、この増加傾向はまだ続くだろう。このうち中国人観光客の貢献度が最も高いことは言及に値する。

 政府の推進する新興産業にはモノのインターネットやビッグデータ、人工知能など、いわゆる日本版「インダストリー4・0(第4次産業革命)」の内容が含まれる。健康医療はこの柱の一つで、近年では成長が最も著しい分野だ。人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの先端分野をリードするだけでなく、IT技術やロボット技術を医療産業に導入している。製薬業では現在、武田薬品工業や大塚製薬の売り上げと利益が大きく伸びている。

 日本経済の現状はモデルチェンジとアップグレード前夜にある。三洋電機やシャープなどのように、伝統企業、極端な場合には著名な大企業までもが激しい競争で劣勢を強いられているが、同時に新しい現象と力が現れている。例えばトヨタ自動車やパナソニック、日立製作所など戦略的なモデルチェンジを進める大企業だけでなく、東レや村田製作所なども注目に値する。戦略的互恵の中日経済関係についていえば、日本企業のモデルチェンジとアップグレードも経済協力に新たな契機をもたらせるだろう。製造業中心だった日本企業の中国進出では現在、サービス業が目立つようになっており、多くの物流・小売業者が大挙して中国に進出している。例えばセブン‐イレブンはこの2年間、中国の大都市で急速に拡大している。しかし、中国の店舗はまだ商品販売だけであり、日本で成功した物流や金融、その他の商業サービス機能はまだ提供していない。日本のサービス業にはまだ中国市場で大きな発展の余地がある。

 総じて言えば、われわれは密接に全面的に日本経済の変化に注目する必要があり、そうしてこそ日本の経済情勢の全貌を見極められるだろう。

【産業の空洞化(产业空洞化)】

自国企業の生産拠点が海外に移り、国内での投資や雇用が減少した状態。

 

 

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