サンザシと豚肉の炒め
山ジャー肉干
写真・文 馮 進
 



  【材料】
(3人分)

サンザシ…………………… 250g
豚肉(赤身)………………400g
ショウガ、ネギ、料理酒、サンショウ、植物油、塩、砂糖、ゴマ油……………各適量

 

サンザシの種をとりのぞく
沸騰させたサンザシ入りの湯のなかに、豚肉を入れてなかば煮込む、なかば煮込んだ豚肉を切る
ショウガ、ネギ、料理酒、サンショウ、植物油、塩などを合わせた下味調味料に豚肉を1時間ほど漬ける
サンザシと豚肉をいっしょに炒める

 青春まっただなかの王浩さんは、若くて有能な編集部員だ。三年前に大学を卒業して、わが社に入った。ふだんはガサツで荒っぽいが、いざ仕事となるといっしょうけんめいに力を注ぐ。じつに勉強熱心で、仕事が終わると友だちやガールフレンドに会うほかは、日本語の独学を続けている。

 料理にも多少の関心があるという。ガールフレンドが訪れる日は、腕まくりをしてみずから料理を披露する。台所は粗末だが、二人で過ごす甘いひとときは、また格別の味わいがあるのだろう。

 王浩さんは25歳の誕生日に、同僚のリクエストにこたえて独身寮で腕をふるった。できあがった料理は、いずれもすばらしいできだった。狭い宿舎には熱気が渦巻き、中華鍋を返すリズミカルな音は、おそらく彼の喜びを表していたのだろう。

 サンザシと豚肉の炒め「山ジャー肉干」は、彼がさいきん習い覚えた滋養強壮、消化に効能のある家庭薬膳料理だ。

 明代の薬学書『本草綱目』のなかにその薬効が詳述されており、「煮汁を服せば下痢を止め、(煮汁で)湯あみをすれば痒みを制する……。消化をたすけ、内臓に効き、発疹を治し、胃を丈夫にする……」などとある。

 サンザシは、都会ならどこでも買うことができる。とれたてもあれば、干したものもあり、種類は多い。北京の街で見かける「糖葫蘆」は串刺しにしたサンザシのアメがけで、地元特産のおやつである。

 今回ご紹介する「山ジャー肉干」は、かならず新鮮なサンザシを使って作る。「肉干」とは、なかば煮込んだ豚肉を、長さ約三センチ、幅約一センチに拍子木切りした肉のこと。この料理はわりと手間がかかるが、肉のうまみに甘酸っぱさが加わり、後を引くおいしさである。

編集部の王浩さん

【作り方】

 @サンザシを洗ったら、半分に切り、種を取る。

 Aショウガは薄くスライス、ネギはざく切りにする。

 Bサンザシは二分の一を鍋に入れ、水を加えて沸騰したら豚肉を入れる。
豚肉はなかば煮込んだら取り出して冷まし、長さ約三センチ、幅約一センチの拍子木切りにする。

 Cショウガ、ネギ、料理酒、サンショウ、植物油、塩などを合わせた下味調味料に豚肉を一時間ほど漬ける。

 D中華鍋にたっぷりの油を熱してCを入れ、キツネ色に変われば取り出しておく。

 E油を熱した鍋に、残り二分の一のサンザシを入れて炒め、さらにDの肉を加えてよく炒める。仕上げにゴマ油と砂糖を少々加え、手早く混ぜたらできあがり。