映画 『手機』(携帯電話)

 

 携帯電話は、現代人の生活の一部となっている。それは人々の生活に便利さをもたらし、人と人の交流における重要なツール(道具)となっている。しかし、それは時として思いもよらない危機や面倒をもたらすことがある。

 劇中の主人公は、大人気のテレビ番組『有一説一』(ありのままに話す)の司会者・厳守一だ。携帯電話は、彼に快楽と情愛を与えていたが、それとともに彼の結婚生活に大きな危機をもたらした。毎日、3人の女性の間を行ったり来たりし、その生活はスパイと反スパイの抗争中のようだった。危機を招いたのは、彼のある偶然のミスからだった。厳守一は司会を務めるテレビ番組の仕事に出かけたさい、携帯電話をうっかり自宅に忘れてしまった。ある女性から電話がかかり、妻が彼の心に潜む秘密を知ってしまったのだ。ストーリーはここから始まるが、いずれも携帯電話が引き起こす禍(わざわい)である。

 監督の馮小剛が、その妻で女優の徐帆と、ベスト・コンビである俳優の葛優を起用し、作家の劉震の同名小説を改編、2004年の正月映画として製作した。中国の映画ファンに、また馮小剛の興味深い正月映画を味わわせてくれた。馮小剛は言う。「『手機』は、観衆の心を動かす映画だ。映画が語るのは人であり、携帯電話ではない。言葉のバブルの時代における人の生存状態であり、携帯電話の使い方をアドバイスするものではない」

 主人公が遭遇したことは、携帯電話の多くの所持者に、さまざまな感慨を与えた。乱れている不倫の物語を通して、そのテーマを明らかにした。『手機』は、人々の内心の恐怖をあおったが、その風格や方法はやはりコメディタッチで、ブラックユーモアの要素に富んでいる。内容と風格は相反しているが、それがさらに映画の芸術性を高めている。

監督・馮小剛 出演・葛優、張国立、徐帆、范冰冰

テレビドラマ 『大宅門』続編(大屋敷続編)

 

 2001年に放送された連続テレビドラマ『大宅門』(大屋敷)は、内外で空前のヒットを飛ばし、中国中央テレビ局(CCTV)第1チャンネルにおける、テレビドラマ部門年間視聴率トップの栄光に輝いた。その後、プロデューサーの郭宝昌氏は2年の苦心の創作を経て、連続30回の続編をついに世に出したのである。前回の第1部『大宅門』の空前の成功により、続編の質を保証するため、投資総額も第1部を大幅に超えた。道具や衣装などのほとんどは、新たに製作したものだ。ドラマの投資は毎回50万元を超えた。『大宅門』は、郭氏の生涯において心血を注いで製作したものであり、文学や芸術、テレビ・映画にかかわらず、それが一つの大きな事業となったのだ。

 劇中人物の性格や運命、結末はいずれも技法上、独自の境地に達し、その作りは巧妙である。衣装や道具もかなり考えられており、耳目を一新するものだ。さらに細心の工夫を凝らして、撮影・製作が行われている。

 『大宅門』の続編は、前作のプロットに続くものだ。1938年から66年の「文化大革命」まで、20年あまりの歴史を物語っている。前作の時代背景よりさらに複雑になり、抗日戦争と解放戦争の中で、戦乱の苦をなめつくす白景錏を大宅門の主人公としている。新中国成立後の数多くの政治運動も、白氏一家に禍(わざわい)をもたらす。それがすべて、大宅門での暮らしを伝奇的な色彩にさせたのである。続編は、さまざまな登場人物の悲喜こもごもと、封建的な大家族の崩壊と新生を表している。

 白景錏を演じた陳宝国氏は、役どころについてこう語る。「彼はすばらしい人物だ。もし、中国人がもっとも尊重するのが忠義と孝行、節操、義理なら、それは彼が明らかに体現している。彼の国や家に対する忠義、両親に対する孝行、もっとも気骨を持ち、尊敬するに値する人格……。それが、彼の魅力のおもな理由となっている。私は視聴者の心に残るような白景錏を演じたい、と思っています」

プロデューサー・郭宝昌 出演・陳宝国、江珊、何賽飛、蒋ゥ麗


『外交十記』(外交の10の記録)  銭其セン・著

 

 中国のベテラン外交家・銭其陦氏は退職後、半年をかけて自らが経験した中国外交の重要エピソードを『外交十記』という本にまとめた。

 1955年から中国の外交活動に従事。82年に中国外交部(外務省に当たる)副部長に、88年に外交部長(外相)にそれぞれ就任、その後、国務委員と外交部長を兼任し、93年から10年間、国務院(中央政府)副総理を務めて、長年中国の外交活動の指揮をとった。
 銭其陦氏は「序」の中で述べている。

 「80年代から21世紀初めまで、この20年あまりの中国外交は、きわめて厳しい経験を重ねた。それに関わった者の一人として回顧してみると、自ら経験した外交の場景がまるで映画のクローズアップシーンのように、絶えず脳裏によみがえってくる。今、そのいくつかのエピソードを飾らず、ありのままにここに記した。完全を求めず、ただ真実と正確さを追求した。史にあらず、論にあらず。故にこれを『外交十記』と称したのである」と。      (世界知識出版社)

 

『離開鍋竈端起碗― 在民芸的門檻上聊天』  
(大衆の生活から離れない―民間芸術についての話)  
潘魯生、韓青・著

 

 筆者の一人、潘魯生氏は中国民間芸術研究所所長、またもう一人の筆者である韓青氏は有名な新聞の編集者である。民間芸術への想いにはじまり、より多くの人たちに民間芸術についての関心を持ってもらうよう希望して、2人の筆者が長い対話をしている。本書はその実録である。

 対談形式をとりながら、中国の民間芸術に対して生き生きとした分析と論評を展開している。大は天空、大地、季節から、小は唐装(伝統的な中国服)、中国結(縁起物の一種)、竈王爺(かまどの神様)などまで、深い文化的学識のある、神秘的で豊かな中国人の民俗・風習の中に読者を誘ってくれるのである。

 2人の筆者は肩書きが異なるため、観点が必ずしも一致しない。そのため、対談には観点のぶつかり合いや食い違いが多く生まれている。しかし、それこそがまさに対談の醍醐味であり、本書の意義となっている。 (山東画報出版社)

 

『中国書画』 中国書画雑誌社・編

 数多くある中国の定期刊行物の中で、『中国書画』は疑いなく人目をひく雑誌だ。珍しい「八つ切り」(B5版)サイズで、160ページ以上もの分厚い雑誌は、他とは異なる。

 2003年に創刊された『中国書画』は、中国書画雑誌社が出版する月刊誌である。趣旨は中国の書道、絵画芸術の精神と理念を広く紹介すること。その内容は、中国書画の理論と歴史評価のほかに、中国書画芸術家およびその作品の紹介、読者が芸術作品に投資するさいの指導、読者のための書画作品の相場研究と分析などだ。

 雑誌の質と権威性を高めるために、同社では顧問として啓功、楊仁トなどの書画の大家を特別に招いている。

 中国の書道と絵画は、一貫して中国における芸術の精髄であり、それはまた濃厚な東方文化の味わいを含んでいる。『中国書画』は今後、中国文化の重要なメディアの一つとなり、文化界の人々に中国文化を理解してもらう新しい窓口となるだろう。 (中国書画雑誌社)

 (本コーナーの書籍は中国三聯書店・提供)