【上海スクランブル】

人々のニーズを
満たす新スポットが続々登場
                                        文・写真=須藤みか
                 
アトリエやブティック、クラブやバーが建ち並ぶ泰康路210弄の入り口

 上海で人気のスポットというと、1900年代初めの中国・西洋折衷の建築様式、石庫門式建築の街並みを21世紀流にアレンジした複合施設「新天地」が真っ先に挙がるのは仕方ないとしても、疾走するように開発が進む上海には新天地に続けとばかりに、新しいスポットが誕生しようとしている。

 規模ははるかに新天地に及ばないものの、新天地に飽きた上海っ子たちが集まる場所として一昨年から話題になっているのが、「泰康路」。空き工場に集まった若いアーティストたちを支援し、世界のモダンアートの中心地となったNYのソーホー地区まではまだまだにしても、ここは上海版ソーホーと言っていい場所だ。

 重慶南路と瑞金二路にはさまれた400メートルしかない、短くて下町情緒漂うストリートなのだが、その一角の二百十弄田子坊という弄堂(小道)だけは一味違う租界のような世界が広がる。その名も「泰康路芸術街」で、中国だけでなくフランスやイギリス、オーストラリアなど十数カ国のデザイナーやカメラマン、画家らがスタジオやアトリエ、ブティックを構える。クラブやバーもいくつか並んでいて、エキサイティングなことを求める上海っ子たちが夜な夜な集まってくる場所でもある。

北京に続け、SOHOマンション

石庫門建築の町並みを模して、小さな店舗が150余り集まる「都市風情街」

 ソーホーと言えば、北京ではSOHO族をターゲットにしたマンション「現代城SOHO」が人気で、売り出した途端に即、完売だったと言われている。SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)とは、自宅にいながらにして仕事ができる居住空間のこと。北京には現代城のほかにもSOHOと呼ばれるマンション群ができていて、起業家や編集者、アーティストといったクリエイティブな職業の人たちが住んでいる。

 北京京にSOHOマンションがあるなら上海にもあって然るべき、というわけか、上海でも建設が進められている。三カ所いずれも文教地区の楊浦区内に完成する予定だ。上海の朝刊紙『東方早報』によれば、同済大学付近に誕生する「海上海新城」は来年末には入居が始まる。となれば、SOHO族を狙ったスポットも生まれ、情報発信基地になる可能性大で、今後楊浦区の開発も見逃せなくなりそうだ。

元禄時代がテーマの「楽市楽座」も

日本の元禄時代をコンセプトにした複合施設「楽市楽座」

 異国情緒という意味では、昨夏オープンした日本文化街「楽市楽座」(永源浜路)もある。日本の元禄時代をコンセプトにした複合施設で、白壁の街並みに日本料理店やバー、ブティックなどが並ぶ。人出はいまひとつだが、テレビドラマのロケなどが行われていることもあって、話題性はあるようだ。

 昨年から南京西路に出来る出来ると言われているが、いまだにオープンしないのは、韓国製品を集めたショッピングセンター「韓国城」。ここ数年続いている韓国ブームも健在であることだし、今年こそはお目見えしてほしい。

 今年4月オープンという触れ込みなのは、「台湾夜市」。近郊都市も含めると上海経済圏には50万人の台湾出身者がいると言われる。約150店舗からなる屋台村は、台湾出身者が数多く住む古北地区付近に誕生する予定。台湾系レストランはどこも人気だが、夜市は新しい台湾の魅力を打ち出せるだろうか。

 最後に、この二月にオープンしたばかりの新スポットをひとつ。淮海中路に程近い長楽路の地下にできた「都市風情街」(長楽路190号)は、石庫門建築の町並みを模したスペースに小さな店舗が150余り集まる。主に、中高生から二十代の女性をコアターゲットにしたと思われる洋服やアクセサリー、キャラクターグッズのショップのほか、タトゥーやプリクラができる店などが並ぶ。新天地風を狙って石庫門建築を模したのがチープで、残念。とは言っても、あれだけ人気の新天地でさえソフトオープンから一年以上かけて五月雨式に店舗が開いていったのだ。今後の展開に注目したい。

 消費ブームに沸く上海では、人々の購買意欲を満たせるだけの場所がまだまだ足りない。今年もそのニーズを追いかける形で新しいスポットが生まれていくはずだ。(2004年4月号)