エンターテインメント&ブック

映画 『我和パパ』

 徐静蕾の監督処女作だ。彼女の脚本・監督・出演による『我和パパ』は、それまでの伝統観念を打ち破るような新しい父娘の物語である。母と2人暮らしの少女・小魚は、独立心が強く、かたくなな性格だった。母が交通事故で亡くなった後、何年も会わずにいた父・老魚が、彼女のところへやってきた。見慣れない男性との新しい生活が始まったのだ。そのどこかニヒルで反逆的、彼女への無償の愛は、小魚の心の中のもっとも柔軟で、もっとも敏感な部分を刺激したようだった。彼らは互いに頼りあうが、やがて別れなければならなかった。

 はじめは慣れない日々を過ごすが、やがてそれが恋心にも似た愛情になり、何年か共同生活を送るうちに、2人は愛と人生の無常を感じるようになる。ラストで父は亡くなる。父の墓前で、小魚は胸に小さな赤ちゃんを抱いている。彼女は本当の意味で成長したのであった……。

 出演者はじつに豪華な顔ぶれだ。特別出演の名優・姜文と監督の張元が、父親の友人と警察をそれぞれ演じている。また監督の葉大鷹が出演し、本作品の最大の輝きとなっている。彼はかつて映画『紅桜桃』(レッドチェリー)と『紅色恋人』(追憶の上海)のメガホンを取ったことがある。今回の『我和パパ』では重要な父親役に扮して、長所も欠点も典型的である「パパ」をきわめてリアルに演じた。初出演のぎこちなさがまったくなかった。

 徐静蕾は、女性特有の細かな表現手法と独特な角度で一風変わった父娘の物語を作り出し、観客は彼女の新しい一面を見た。彼女が表した人間関係と感情は、従来の見慣れたヒューマンドラマとは大きく異なる。こうした複雑な人間関係は、他でもなく徐静蕾が追求し、主演の葉大鷹が表現したものだ。本作品は中国第26回大衆映画百花賞の最優秀主演女優賞、第23回金鶏賞最優秀助演女優賞、監督処女作品賞をそれぞれ受賞した。(監督・徐静蕾  出演・徐静蕾、姜文、張元、葉大鷹

テレビドラマ 『結婚十年』

 連続テレビドラマ『結婚十年』(全20回)は、ある若い夫婦の結婚10年間の悲喜こもごもを描いている。

 1年目、彼らは結婚した。2年目、彼らには子どもができた。3年目、子育てを助けるために、東北地方と江南地方から2人の母がやってきた。4年目、彼らはリストラで職を失った。5年目、生活のためにアルバイトをし、商いをした。6年目、どうにかこうにかお金がたまった。7年目、夫に愛人ができた。8年目、その新たな問題に直面して、彼らにはまだ経験と冷静さが足りず、別居することに。9年目に破産した。10年目、アパートが取り壊されることになった。その愛情や成長のプロセスを刻んだアパートの中で、彼らは再会した。いつのまにか結婚10年の時を過ごした彼らは、そのとき初めて冷静になり、率直で思いやりのある心で互いに向き合った。かつて10年を暮らしてきた家に向き合い、外の世界と未来に向き合ったのである。

 プロデューサーは、北京電影学院を卒業した高希希。テレビドラマ『花非花』(花は花にあらず)のプロデューサーとして初めて知られるようになった。この専門教育を受けた若いプロデューサーは本作品を「会心の作」とは見ていないが、しかし多少の自信も持っている。

 「製作の目的は、この10年間の感情が生涯においてもっとも美しく、忘れがたいものとして人々に記憶してもらいたいから。それも、我々中華民族のすばらしい伝統的な感情であるだろう。生活にプレッシャーを感じ、無感覚になってしまった人たちが感動してくれたらと願っているし、テレビドラマは視聴者に感動を与えられたら十分だ。そのほかは、メディアや評論界が評価してくれるだろう」と、高希希は語っている。(プロデューサー・高希希  出演・陳建斌、徐帆)

ベストセラー

王蒙・著 『青狐』

 盧倩姑は、小さいころから母娘2人、頼りあって生きてきた。強情な性格だった。高校生になってから2度の恋愛をしたが、恋人の1人は自殺し、もう1人は労働改造(強制労働)をさせられた。39歳までに彼女は2度結婚し、夫の1人は病気で急死、もう1人は交通事故で亡くなった。

 ある偶然の島巡りで、その文才が触発された。自分の不幸な恋愛を、小説に書き進めたのだ。実現しない愛が彼女にもたらした憂鬱を、それによって晴らそうとしたのである。小説発表後、それは意外にも、評論家や読者の高い評価を得た。盧倩姑は一躍有名になった。彼女のペンネーム・青姑(チングー)は、ある先輩文学者に「青狐」(チンフー)と読み間違えられた。そこで彼女はあえて「青狐」というペンネームにした。その後、青狐は発奮して佳作を次々と発表、文学に表したさまざまな苦痛と快楽を、彼女自身が享受したのである。

 本書は、中国の著名な作家・王蒙が3年の歳月をかけて、完成させた力作である。青狐という人物を通して、女性や欲望、愛情、権力などに対する作者独自の解読を行っている。

 「歴史は偉大だが、人は往々にして平凡である。そのため人は無尽の悲喜を生み出すのである」。そう王蒙は述べている。(人民文学出版社)


袁紅・編 『心情放飛―北京周辺遊走地図』

 最近、北京の周辺地域が、若者たちのバックパック旅行の「一番人気」となっている。週末になると、同僚や友人と約束して、リュックサックを背負い、カメラを持って、都会の喧騒から大自然のなかへと自分を解き放つのだ。それほど多くの時間とお金を使わなくとも、心身をゆったりさせることができるのである。

 本書は、北京の10の郊外区・県を、いくつかの旅行エリアに分けている。市の中心地から外へと広がる環状・放射状の国道と高速道路にしたがって、100のルートを組み合わせている。それにより、読者に北京周辺の多くの観光スポットを紹介している。よく知られている名勝旧跡のほか、バックパッカーたちが楽しめる、まだあまり知られていないスポットもある。旅行好きには、非常に参考になる本だ。(人民交通出版社)


見招拆招・著 『記憶碎片』

 「僕たちは生きることが未来だと考えているが、実際に持っているのは思い出だけだ」。本書は「マージャン」「キャンパス」「映画」「CDを買う」などの10の記憶の断片で、各章が構成されている。中国80年代の若者の生活を再現したものである。

 80年代、改革・開放が徐々に進み、中国はあるエキサイティングな時期に入った。社会の急速な変化によって、当時の若者の生活は、現在のそれとは非常に異なる。当時を思い返すとき、一部の独特なことばが、当時を示すもっともよい記録となっている。本書のなかで、作者は「糧票」「生活委員」など時代を示す多くのことばの解釈を通して、読者をその特殊な時期へといざなってくれる。

 ゆったりとした文章、趣のあることばで、豊かな味わいがある。それは「キャンパスにおける民間の国語」「一代人の遺伝子の暗証番号」などと称されている。

 いずれにしても、読者は当時の若者たちの理想と衝動を会得することができるだろう。      (海南出版公司)