特集 新旧が同居するアカシアの大連はいま

大連を訪れ、暮らす日本人

 多くの日本人にとって、大連はまったく知らないところではないだろう。現在、ここには多数の日系企業が投資している。大連に続々とやってくる多くの日本人は、「新大連」にもさまざまな感慨を抱いている。

幼いころの記憶

自らが経営する日本料理店で取材を受ける小川千里さん(手前左)

 小川千里さんにとって、大連賓館の建物は、幼いころの記憶に刻まれている。小川さんは中国のチチハル生まれ。幼いときに両親に連れられて、大連へやってきた。当時、中山広場の周りには家屋が多くなかったので、大連賓館がじつに印象深かったという。1940年代、日本の敗戦後、彼は両親とともに日本へと引き上げた。その後、日本のある大手メーカーに勤務した。

 幼いころの体験によって、小川さんは大連に深い感情を抱いている。定年退職後、彼は何度も大連にやってきた。そして昨年、大連万達国際ホテルのレストランを借り受けて、日本料理店をオープン。繁盛したために、奥さんとともに大連で暮らすようになったのだという。

 大連について、小川さんはこう語る。「いまの大連は、記憶のなかの大連とはまったく異なり、非常に現代的な都市になった。ここの気候は、日本の東京とよく似ています。生活もとても快適なんですよ」。ここに一年以上暮らした小川さんは、数多くの中国の友人ができた。時間ができると、そうした友人たちと碁を打ったり、世間話をしたりするのだという。

 データによれば、一日あたり5000人を超える日本人が大連に暮らしたり、ここで観光をしたり、仕事をしたりしている。小川さんのように、大連に暮らす人も少なくはない。

日本人に温かい都市

堤満莉子さんが同僚たちと日本語番組『桜の風』を制作している

 2004年5月より毎週日曜正午になると、大連テレビは『桜の風』という日本語番組を放送している。「週間ニュース」「第二の故郷」「文化の虹」「楽しい中国語」という四つのコーナーに分かれた20分番組であるが、視聴者の人気を集めている。大連に住む日本人と日本人観光客のために情報提供をするという、中国では初めての日本語テレビ番組である。

 編集責任者の王輝さんは、こう語る。「大連にある日系企業は2840社に達しています。彼らへのサービスをよりよくするため、大連テレビでは日本語番組をつくる意向が早くからあった。市政府と駐瀋陽日本総領事館の協力で、この番組が誕生したのです」

典型的な大連の海鮮レストラン。海鮮が自由に選べる

 堤満莉子さんは『桜の風』のキャスターである。NHKの衛星放送(BS)で長年仕事をしてきたが、中国に関心をもち、2008年北京オリンピックでは現場から報道をしたいと昨年、大連外国語大学に留学、中国語を学びはじめた。あるとき、偶然にもこの番組のディレクターに出会うチャンスがあった。このような番組が大連にあることを知り、彼女は意外に思ったという。こうしてテレビ局での勤務経験のある彼女は、ここで仕事をするようになった。「留学の期間中に、中国のテレビ局で仕事ができるのは、とても有意義なこと」と堤さんは語っている。

 堤さんにしてみれば、大連は生活しやすい都市であり、おいしい海鮮料理を食べることができるし、都市自体も美しく衛生的であるという。しかし、さらに印象深いのが、大連という都市が日本に対して親しみをもっていることである。

アカシア祭りの間、大連は満開のアカシアの花に埋もれる(写真・王士俊)

 2004年アジアカップのサッカー試合で、堤さんは一部の中国ファンが日本チームに非友好的な言動をしたという報道を耳にした。だが、中日両チームの決勝の晩、彼女は友人といっしょに中山広場の大連賓館・室外ディスプレーで試合観戦をした。広場には大勢の人が集まっていて、日本人も少なくなかった。「みんなとても落ち着いて見ていましたよ。中国チームが負けたとき、中国の人たちは非常に残念そうでしたが、周りの日本人とも友好的で、過激な行動はひとつもありませんでした」と堤さんは言う。大連っ子は温かく、日本人ともうまく付き合っていけると思った彼女は「中国を理解するには、メディアの報道に頼っているだけではダメ。中国にしばらく暮らすことが大切で、そうすれば中国がだんだんとわかっていく」と、よく日本の友人に話すのだという。

 大連で一番好きなのが、アカシアの花なのだそうだ。毎年5月にアカシアの花が咲いたとき、大連市は雪のように真っ白になる。大連テレビで働くうちに、彼女は大連に住む日本人のなかでも有名人になっていった。勉強や仕事の合間には、さまざまな活動に参加している。生活は非常にバラエティーに富んでいるという。

リゾート都市・大連へ

広大な敷地をほこる旅順の世界平和公園

 中山広場で早朝、体を鍛える人のなかに、原田昌彦さんの姿があった。彼は日本のある旅行会社のスタッフで、日本からの観光団をここに案内したのだという。「大連の環境は美しく、ここの湿潤気候は療養に適している。それで、毎年のように観光団を大連にお連れするんですよ」と原田さん。大連の料理は日本人の口に合い、海鮮料理もおいしいという。

 原田さんと同様、大連に来た日本人の多くは、その海鮮料理を絶賛している。生ウニ、蒸しアワビ、ナマコのしょうゆ煮などの海鮮料理が、多くの日本人観光客を引きつけている。大連万達国際ホテル経営者の李麗さんは、こう語る。「毎日、多くの日本人客が海鮮料理を楽しみにして訪れるので、ホテル側としてはとくに、二つのフロアを日本人客専用の宿泊スペースにしたんですよ」

極地海洋動物館は現在、ギネスが認める世界最大の極地動物展覧館だ。わんぱくなジュゴン

 大連の海産物がどうして歓迎されるのか。それは、大連が独特な地理環境に恵まれているからだ。大連は黄海の沿海にあり、海中温度は年平均で十度前後、塩分濃度は34・6‰だ。こうした好条件のもとで育ったウニ、アワビなどの魚介類は、品質がよく、漁獲量も非常に多い。さらに大連の生鮮魚介類は安いので、多くの外国人観光客が飛行機に乗って、ここへグルメ旅行にやってくるのだ。

 独特な海水条件に恵まれて、大連では海産物の養殖業が進んでいる。ウニの年産量は全国の半分以上を占めており、また世界最大級のアワビ養殖基地もある。中国ナマコの主要生産地でもあり、それは年産3000トンを超えるという。大連の海産物は国内だけでなく、その多くが周辺国と地域に輸出されている。日本はその最大の輸出先だ。

 海鮮を賞味するほか、大連では海辺のレジャーを楽しむことができる。太陽の光、白い砂浜、海水浴を楽しむのなら、「大連金石灘リゾート区」は絶好の場所だ。

夏の大連は理想的な避暑地だ

 そこには美しい砂浜、青い海、こんもりと生い茂る森林があるだけでなく、世界でも珍しい金色に輝く巨大な亀甲模様の石を見ることができる。言い伝えによれば大昔のこと、空の一部が落ちてきて、地上は大洪水にみまわれた。中国神話にみえる創世神の女豢は、地上にある五色の石を集めて天をつくろっていたが、金石灘の輝く石は、女豢がそのときに残した五色の石だといわれている。

 大連にはゴルフ場が数多い。金石灘にも山に沿って造られたゴルフ場がある。そこでは、海浜の地形をたくみに使って設計している。そのうち七つのゴルフコースは、世界のゴルフコース・トップ百に選ばれている。また、このゴルフ場自体も、米国ゴルフ協会により会員ゴルフコースの第六位に選ばれている。このほか、大連の極地海洋動物館、貝殻博物館なども見どころの多い観光スポットとなっている。


大連の特徴のある海鮮レストラン
店 名
電 話
住 所
 天天漁港
(0411)-82633898
中山区天津街72号
 海味館
(0411)-82650888
渤海明珠
 新東方美食城
(0411)-82713999
中山区港湾街3号
 双盛園
(0411)-82647800
中山区安楽街1号

大連の祭日
 花火爆竹迎春会
      旧正月2日〜6日(1〜2月ごろ)
 アカシア観賞会
      5月下旬
 大連国際海浜文化祭
      7月18日〜8月30日
 中国国際ビール祭り
      7月末〜8月初め
 大連国際ファッション祭
      9月中旬
 国際マラソン大会       10月最終日曜日

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