文・写真/須藤みか
 
夏の風物詩あれこれ
 
 

 
夏到来を告げる、蚊取りラケット

 夕暮れの小学校校門前には、父母や祖父母の姿が見える。

 道路がラッシュにさしかかる登下校時に、我が子や孫を後ろに乗せて自転車やバイクで送り迎えをするためだ。

 最近はマイカー族や地下鉄・バス利用組が増えていて、朝夕の通勤時に自転車の大群を見ることも少なくなってきた。6、7月の雨が続く時期ともなると、赤、青、黄色…と色とりどりの合羽が街を舞い、梅雨の鬱陶しい気分を振り払ってくれるのだけれど…。

 雨の日の自転車の群れが好きなのは、雨に映える鮮やかさもひとつだが、子供連れの自転車をちらほら見るから。

 中国の雨合羽は上着、ズボンのセパレートタイプではなく、上からかぶるポンチョスタイル。裾が広がっているから足も動きやすく、荷台などに乗せた子供もすっぽり入る。

 ポンチョの裾から小さな足がぶらぶらと遊ぶ姿は、子供をポケットに入れたカンガルーのようにも見え、ほほえましい光景なのだ。

夏が来た! 蚊取りラケット登場

美味しいスイカは、よく吟味して

 梅雨が終わりにさしかかり、晴れ渡る日が多くなってくると、露天で見かけるようになるのが、蚊取りラケットだ。

 バトミントンラケットと同等もしくは、やや小ぶりの大きさで、電池で作動する。ガットに電流が流れ、それに感電するしくみで、蚊のみならずハエも丸焦げ、ゴキブリも失神するという代物。夏を告げる風物詩の一つである。

 蚊をガットにあてるのは意外と難しくて、ちょっとした運動にもなる。普段あまり使わない二の腕が鍛えられるから、一石二鳥になるかも知れない。ヒトが触っても痛く感じるので、取り扱いは要注意だ。

 蚊取りラケットとともに、夏の訪れを知らせてくれるのがスイカの山。レストランでは一年中、食後にスイカが出てくるけれど、この時期のスイカがやはり一番美味しい。

100メートルも歩けば、何人ものスイカ売りに出会う

 暑気払いに、水分補給にスイカを頬張るから、一度に大玉を数個買うのが上海流だ。『新聞晨報』によれば、上海の一日あたりのスイカ消費量は3000トンになる。

 そう言えば、上海から日本に留学・仕事で行った友人たちが日本の物価の高さを嘆く時、必ず引き合いに出されるのがスイカだ。

 「スイカがあんなに高いなんて! ましてや半分や4分の1に切ってあるなんて、食べた気がしないんじゃない?」

 1日消費3000トンの街の住人から見れば、どうにも納得できない高さに映るようだ。

スイカにも身分証?

 それほどに愛されるスイカだから、美味しいと信じて買ったはずなのに、甘くもなければ水分もない「カス」をつかまされれば悔しさもひとしお。集まる苦情も多くて、最近は対応策としてスイカの「出身」を示す「身分証」制度が始まっている。生産地やブランドを示すもので、形状はシールだったり、スタンプだったり。

身分証チェックも忘れずに

 偽物対策に追われるという意味では、上海蟹はその代表格。昨年は偽物を駆逐しようと、本物の「陽澄湖ブランド」にはシリアルナンバーと連絡先が刻印された「指輪」をハサミにはめることになったのだが、案の定、偽物の指輪が出回ったり、指輪の裏取引が行なわれたりで、指輪騒動が起きた。

 スイカの「身分証」もアイデアだとは思うのだが、あっという間に偽・身分証に席巻されてしまうのかも知れない。

 スイカはさまざまな場所で売られる。スーパー、果物店、青果市場に並び出し、リヤカー売りが現われ、真夏日が続くようになると路上で店を広げる者も出てくる。

 デンと路上に人の背丈ほども積み上げて、24時間の対面販売だ。盗人を警戒するでもなく、眠気が誘えばスイカの横で気持ち良さそうに眠り、時間を持て余せばトランプに興じる。近隣の浙江・江蘇省からやって来る彼らは、売り切ってしまうまでのんびりと居続ける。

 スイカの路上売りが始まると、上海も夏本番だ。

 

 
 

  すどうみか 復旦大学新聞学院修士課程修了。フリーランスライター。近著に、上海で働くさまざまな年代、職業の日本人十八人を描いた『上海で働く』(めこん刊)がある。  
     


  本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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