特集 世界に広がる中国語学習ブーム

私はどうして中国語を学ぶか

 多くの外国人は、何のために中国語を学んでいるのだろうか。将来、何に役立てようとしているのだろう。北京に留学して中国語を学んでいる外国人に聞いた。

倉岡樹子さん(30代、日本人、舞台俳優)

中国人の同級生に中国語を習う倉岡樹子さん(左

 私は中国に来て一年半になります。日本にいたときは、「ロビンフッドアーチスツ」に属する舞台俳優でした。1995年、中国・山東省京劇団が訪日公演をしたとき、私は、公演の中で解説員とアナウンスを担当しました。その公演の中で、京劇の俳優たちの多彩な表現に魅せられました。それ以来、すっかり京劇が好きになり、中国に行って学ぼうと思いました。

 暇なときには、公園に行って、京劇のアマチュアの役者が歌うのを聞くのが好きです。彼らの歌う京劇は、劇場のなかで聞く本物の京劇よりも、もっと生き生きとしており、活力に満ちています。

 最近は、京劇のほかに、また一つ、新しい趣味ができました。それは、横町(胡同)の中を売り歩く物売りの売り声を聞くことです。

毎週土曜日、倉岡さんは北京の陶然亭公園にやって来て、アマチュアが歌う京劇の一節を聴く

 私が住んでいるのは、北京・東城区の東棉花胡同です。現在もここには、昔ながらの胡同の文化が残っています。物売りの売り声もその一つです。毎日、私は物売りの声で目を覚まし、彼らの声が聞こえなくなったときに、その一日が終わるのです。

 物売りの声は非常にすばらしく、まるで歌のようです。プロの俳優の中でも、こんなすばらしい声をなかなか探せません。また、物売りの中身もとくに面白い。例えば「ビール、醤油、酢を取り替えます」「ご不要になりましたものを回収にあがりました。不要品、古い家具、電気製品を買い取ります」「鋏み、包丁、研ぎます」といったもので、どれも大変面白いものです。

 こうした物売りの言葉を記録するためにテープレコーダーとノートを持って出かけ、出稼ぎに来ている廃品回収のおじさんやビール売りのおばさんをたずね、取材します。そして、彼らの話を記録するだけでなく、その録音を中国語の授業で再生し、他の留学生に聞かせてあげるのです。

成宇済さん (27歳、韓国人、対外経貿大学国際貿易専攻大学院修士課程)

韓国人の成宇済さんとガールフレンドの孫萌さん(撮影・高原)

 私は韓国の大邱大学の本科を卒業した。そこで私は、中国人のガールフレンドの孫萌と知り合い、その後、私たちはいっしょに中国に来た。

 私が中国語を学ぶのは、彼女と彼女の国をいっそうよく理解するためであり、また自分の将来の仕事のためだ。

 現在、韓国経済の発展は、なお大きな潜在力があるが、韓国の国土や資源には限りがあるので、外に向かって発展する必要がある。その場合、中国の巨大な市場が非常に重要になるのは明らかだ。

 最近、韓国で中国語を学ぶ人が非常に多くなっている。多くの企業も、中国語ができることを入社の必要条件にしている。私のように今から中国語を学び始めるのでは、すでに遅すぎるくらいだ。

 私は、修士卒業後、まず韓国に帰って2、3年、仕事をし、韓国企業の管理方法や企業文化を習得したあと、再び中国に来て商売をし、私が学んだものを中国で役立てたいと考えている。 
    
モリスさん (32歳、ベニン人、北京語言大学国際政治専攻大学院修士課程)

京劇の舞台に立ったこともあるモリスさん(モリスさん提供)

 アフリカのベニン共和国の大学では、英語を専攻していました。面白半分で、中国語を選択しました。当時は自分が、こんな奇怪な文字を本当に習得できるなんてまったく思ってもみませんでしたし、中国に派遣されて学ぶなんて考えてもいませんでした。

 中国に来たばかりのころ、中国の人たちは初対面の私に「あなたは結婚していますか」「1カ月、いくら稼ぎますか」などと質問し、私は面くらいました。しかし、後に、彼らがこうした質問をするのは、私に対して関心を持っていることを示しているのだとわかりました。

 もう一つ、驚いたのは、すべての中国人が、それも子どもさえも、「中国には5000年の歴史があり、960万平方キロの国土と56の民族を有している」などと言うことです。そこで私は、ベニンにはいくつの民族があり、面積はいくらか、慌てて資料を調べに行ったものです。

 今年、私は卒業する見込みです。私は引き続き中国で勉強するか、仕事をするかを望んでいます。もし、そうしたチャンスがなければ、国に帰って仕事することもできます。少なくとも、ベニンの大学で中国語の教師になる資格は持っています。私が中国に来る前は、ベニンの大学には、中国から派遣された中国語の先生がいるだけで、自分の国の先生はほとんどいませんでした。

デイビッド・モサーさん(中国名、莫大偉、50歳、米国人、中央テレビ『希望―英語雑誌』主宰者)

中国の仲間と談笑する米国人の莫大偉さん(中央)

 私は早くから、中国と中国語に強い興味を感じていた。中国語と欧米の言語とはまったく違うので、それが私にとって特別な吸引力となり、私は特にその謎を解明したいと思った。

 1996年、私はミシガン大学でシノロジーの博士号を取得し、それ以来、一家を挙げて北京に住んでいる。私の娘は、英語と中国語のバイリンガルで、私は嫉妬を感じるほどだ。私は一つの単語を学ぶにも、すべて辞書を引かなければならず、しかも2日もしないうちに忘れてしまうからだ。

 現在、私は、テレビ局で、英語を教える番組を作っている。番組のスタッフの中国人がみな、私の中国語の先生。私はまだまだ学び続けなければならない。

△   △   △

浙江省義烏市の外国人のための中国語クラス

 このように、世界各地から中国語を学びにやってきた外国人の目的や動機はそれぞれ違う。しかし、ほとんどの人が、中国古代の伝統文化や現代の中国人の多彩な文化生活など、中国の文化が好きだということを、中国語学習の理由に挙げている。

 また近年、目立つ傾向は、仕事や商売の必要上、中国語を学ぶ人が日増しに多くなって来ていることだ。だから外国のビジネスマン向けの中国語学校は人気が高い。

 浙江省義烏市では、アジアや欧州、南北アメリカの80カ国から来た外国人ビジネスマンが駐在しているが、彼らの多くは、昼間は商品見本を見て発注し、夜は養成クラスに入って中国語を学んでいる。中には、自分が中国語を学ぶだけでなく、自分の子どもを現地の小中高校に行かせる人もいる。彼らは将来もずっと中国で商売をしたいと思っており、こうした人々にとっては、中国語の学習は、彼らの実際の利益と密接に結びついているのだ。それは一種の、将来に対する投資でもある。


  本社:中国北京西城区車公荘大街3号
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。