東京支局長 林崇珍

 



     近ごろ、中国や韓国など近隣諸国との政治的な関係がぎくしゃくしている日本だが、その一方では「東アジア共同体」や東アジアにおける経済協力、文化交流などをめぐる議論が盛んになっている。

 5月23日、東京大学の安田講堂で開かれたシンポジウム「朝鮮半島の共存と東北アジア地域協力」では、金大中前韓国大統領をはじめ中国、韓国、ロシアの駐日大使、日本の外務省審議官らが出席。日朝、米朝国交正常化をめざして、核の廃絶など安全保障システム構築の可能性と地域協力の展望について、熱心な討論がくりひろげられた。

 続く28日には、日本を拠点に活躍している中国人教授の団体「日本華人教授会議」の2周年シンポジウムが、中日韓三国の学者や有識者が出席して行われた。とくに、東アジアで関心が高まる東海ガス田開発問題について「春暁ガス田」の開発を担当している中国海洋石油総公司の探査担当経理(責任者)が講演。中国側の開発計画やその状況を説明しながら、共同開発の可能性を訴えた。

 文化交流では、日本の著名な雅楽師・東儀秀樹さんがプロデュースし、メンバーとしても参加している音楽ユニット「TOGI+BAO」の全国ツアーが7月1日からスタート。茨城県から始まったツアー「春色彩華」が、日本各地で全20回にわたって行われている。

 
 
東京の駐日中国大使館で公演した「TOGL+BAO」(中央が東儀秀樹さん)

 日本が韓流ブームにわいていた2004年秋のこと。「韓流から華流へ」という新たな試みで、上海へ渡った東儀さんは自ら音楽メンバーのオーディションを行った。その結果として、中国民族音楽の名門「上海民族楽団」出身の趙磊、姚新峰ら才能あふれる6人の若手ミュージシャンとのコラボレーションを実現させたのが、この「TOGI+BAO」である。

 1400年ほど前に中国大陸から渡来した音楽を伝統にとり入れて、発展させてきた日本の雅楽と、エネルギッシュな現代中国の若者たちによる民族楽器のセッションだ。

 このほど都内で行われた演奏会を聴いてきたが、まるで時空の壁がとり払われるような不思議な感動を覚えた。東アジアの文化の融合に、新たな期待がもてるような気がしたのである。

 東儀さんは、このユニークなユニットに対して「政治家にはできない部分の国際交流を成しとげています」と語っていた。『冬のソナタ』をはじめとする韓流ブームが国民感情のレベルで日韓関係を大きく改善させているように、文化や経済の相互交流の発展が、東アジアの関係改善と一体化につながっていくのではないかと感じている。 (東京支局長 林崇珍)

 

 
 

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