特集二       人と人とが築く中日友好

壁を越えるメディアの役割

                    張麗玲 中国のテレビ番組を日本で放送する「大富」社長

張麗玲さんの制作したドキュメンタリー『小さな留学生』のワンシーン(張麗玲さん提供)

 1989年、私は留学生として日本に来ましたが、いつまでたっても日本を好きになれませんでした。卒業を間近に控え、このまま帰国してしまったら、日本での日々が無駄になる、せめて日本が好きになってから帰国しようと考えました。

 大倉商事という会社に入りました。そして昼間はOLをしながら、夜と休みの日は、中国人留学生たちの姿を記録するドキュメンタリーの撮影を始めました。

 多くの人とめぐり逢いました。多くの人が私を温かく見守り、励まし、応援してくれました。そうした体験を通じて、私の日本に対する思いも大きく変化して行ったのです。

 1999年11月、私が制作した10本のドキュメンタリーシリーズ『私たちの留学生〜日本での日々〜』が、北京で放送されました。その後、中国各地で放送され、異国の地である日本で、懸命に働きながら学ぶ中国人留学生と、彼らを取り巻く温かい日本人の姿が共感を呼びました。

 それによって「野蛮で残酷な日本人」という従来のイメージが大きく変わったと評価されました。政治家がいくら言葉を尽くしても越えられなかった壁を、一つの番組が越えることができた。これは、メディアが果たす役割がいかに重要であるかを実証した例であると思います。

 私は「大富」を設立し、現在、CS衛星放送スカイパーフェクTVを通じて、中国中央テレビの番組を日本で放送しています。「中日両国が少しでも近くなるように」という使命感が私を支えています。

 サッカーのアジアカップの決勝戦、反日デモ、呉儀副総理の突然の帰国と、中日両国の間では昨年来、関係を急速に冷え込ませる事件が続いています。そのたびに、日本側のメディアは過剰報道を繰り返し、いたずらに反中感情を煽ってきました。

『小さな留学生』が放送文化基金賞のテレビドキュメンタリー賞を受賞した(右が張麗玲さん)(張麗玲さん提供)

 しかし、好き嫌いにかかわらず、中国と日本は、今後、互いにきちんと向き合っていかなければならないでしょう。こうした状況下で、私たちメディアは、今、何をなすべきか。その役割と責任が改めて問われています。

 戦後、60年経ったのに、隣国である中日両国が依然としてギクシャクとした関係にあるのは、お互いの真の姿を知るための情報の不足が大きな原因だと私は考えています。さまざまな摩擦に対して、自分なりの冷静な判断が下せるようになるには、きちんとした情報による裏づけと深い理解が必要です。

 中国という国はどういう国なのか、いま、中国人は何を考えているのか――中国のさまざまな情報をそのまま日本に伝えることによって、日本人の中国と中国人への理解が深まる。少しでもそれに貢献できたらと、思っています。

 中日両国の人々が、互いにすばらしさを認め合い、尊重しあえる日が一日も早く来るように、中国と日本の間に立つ企業として、「日本人からも中国人からも信頼される企業」を目指し、努力していきたいと思っています。



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