ビジネスチャンスが眠る山東省
関西経済界の訪問団に同行して
                                      賈秋雅=文 于明新 賈秋雅=写真

日中経済貿易センターと山東省政府は、全面的な経済貿易の合作協議に調印した(前列左側は孫守璞副省長、右側は西田健一団長)

 関西企業約百社が参加する「関西経済界中国山東省訪問団」は2005年10月17日、中国東方航空の大阪・済南間初のチャーター便で孔子の故郷――山東省に降り立った。

 今回の訪問は、山東省人民政府の招待で、日中経済貿易センターが主催し、大阪商工会議所と関西経済連合会の支持を受けて行われた。日中経済貿易センターの西田健一副会長を団長とし、約150人が参加。本誌編集部もこの訪問団に同行した。

完備した投資環境

 山東省は中国の東部沿海地域に位置し、半島という地形のため、地理的条件に非常に恵まれている。北は北京や天津をはじめとする環渤海経済圏に属し、南は上海をはじめとする長江デルタ経済圏に隣接し、東は日本や韓国と海を隔てて向かい合う。

 統計によると、2005年第1〜3四半期の山東省のGDP(域内総生産)は、1兆3378億8000万元(1元は約14円)に達し、前年同期と比べ15.3%増加した。国内第2位である。その発展には多くの人が注目している。

済南市植物園で植樹する青木俊一郎理事長

 交通の便利さと整ったインフラは、活力あふれる山東省の経済発展にとって欠くことができない前提条件だ。省内にある青島、煙台両市の国際空港には日本との路線が開設されている。今回のチャーター便の運行に成功した東方航空は、済南空港に3本目の路線開設を考慮している。鉄道や高速道路も四方八方に通じているし、いくつかの大きな港も日本と航路で結ばれている。こういったことが、山東省と日本の距離をさらに縮めた。

 省内にはまた、山東大学、中国海洋大学など数多くの有名大学がある。豊富な人材資源は交通の便利さとともに、山東省の良好な投資環境を構成する一部となっている。

親切で客好きな山東人

 訪問団の行程は5日間。チャーター便で山東省の省都・済南に降り立った第1日目、訪問団がまず目にしたのは歓迎の横断幕と訪問団の順路図だった。省内どこを訪ねても、当地の政府と人々は、温かく友好的にもてなしてくれた。「ここの人々は本当に友好的で、各市の市政府もたいへん親切です。山東省は活気が満ち溢れ、投資に最適な場所です」と訪問団の企業家たちは感慨を覚えていた。

 時はすでに晩秋に近づいていたが、済南市の植物園の松やコノテガシワの葉は美しく生い茂っていた。そしてこの日から、園内の木々にはある特別な「仲間」が増えた。訪問団が植えた「友誼の木」である。この木は、今回の山東の旅を記念するとともに、訪問団一行の日中友好交流への願いでもある。

現地の日系企業を見学するAグループ

 山東省の孫守璞・副省長は、省政府が開催した歓迎晩餐会の席上、「われわれは、日系企業が山東で投資するときに発生するさまざまな問題の解決に全力を尽くします。また、日中経済貿易センターとは互いに代表機構を設立し、協力関係を強化することを考えています。企業家たちが関心を寄せている知的財産権も、断固として守ります」と述べた。

 その夜、山東省政府と日中経済貿易センターは、全面的な経済貿易の合作協議に調印し、今回の経済合作の幕が切って落とされた。そしてあくる日、訪問団はA、B、Cの3つのグループに分かれ、それぞれ臨沂、煙台、イ坊の視察へ出かけた。

経済合作で手を携える

 臨沂へ向かうバスの中は、とてもにぎやかだった。通訳と旅の手配を行う日中経済貿易センター上海事務所の池田稔副所長の提案により、それぞれ自己紹介をすることになった。同センターの青木俊一郎理事長はまず、『人民中国』を手にして、私たちをみんなに紹介してくれた。

 広東に投資して工場を設立した株式会社パアグの住友悠希社長は、これを機に山東省で新たなビジネスチャンスを見つけたいと話した。『日刊工業新聞』の松木喬記者は、中国へやって来たのは今回が始めてで、孔子や孟子の故郷に興味を抱いたと話した。

 次に訪れたのは「中国のハワイ」と称している日照市だった。軽やかな海風が吹く万平口生態広場を散歩し、大海から与えられたこの都市の情熱と活力を感じた。北京五輪ではヨットレースの予選が行われる予定の水上スポーツの都市・日照が誇るのは、美しい環境だけでなく、山東省の他の都市と同じように巨大な経済開発の潜在力を持つことだ。

 訪問団は日照市の企業と個別の商談を行った。この場で、中国側の従業員を日本へ派遣して研修を行うという協議に達した企業もあった。

搾りたての青島ビールで祝杯を上げる

 日照から車で約2時間、最後の訪問地・青島に到着した。青島は山東省でもっとも実力と魅力がある都市だ。3つのグループがここで再び一緒になり、中国の有名企業・ハイアールと100年以上の歴史を誇る青島ビール社を見学した。

 ハイアールの展示室では、訪問団のメンバーたちからたびたび称賛の声が上がった。「ハイアールの電気器具は、安くて実用的で、日本でも人気があります」とあるメンバーは言った。品質がよくて価格が安い背景には、「事業に励んで国家に報い、卓越さを追求する」というハイアールの精神があるのだ。

 1903年にドイツ人によって設立された青島ビール社は、日本人による経営を経て、1945年にようやく中国人のもとに戻ってきた。百年の変遷を経てきた青島ビールは今、「情熱が夢を達成する」という理念を掲げて、消費者から深く親しまれる国際的なブランドとなっている。

 ハイアールと青島ビールの2社は、飛躍的に発展している中国経済の縮図であり、数多くの優良企業の代表と言える。そして、中日間の友好な経済合作の重要なベースともなっている。

 青島ビール博物館では、中日双方からそれぞれ代表を選び、「飲み比べ」と「のど自慢」を行った。何度も祝杯を上げ、双方は友好の意を伝え合い、ビジネスチャンスを育んだ。西田団長は、「経済や技術面での交流は、両国の発展にとても有利です。今後もまた、訪問したいと思います。人と人との交流が永遠に続くことが、一番大切なのですから」とうれしそうに語った。



 
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