深遠な国茶の世界M
棚橋篁峰
 
 
雪のような白毫が美しい
白茶

 
宋の徽宗が描いた『文会図』の一部。茶宴の様子を描いている

  今回は白茶を紹介しましょう。白茶は軽度発酵茶で、原料として使われる芽の若さと雪のような白毫(白いうぶ毛)があることから命名されました。

  白茶の主な産地は福建省の建陽、福鼎、政和、松渓などで、主要品種は白牡丹、白毫銀針、寿眉です。

  白茶が茶中の高級品と言われる理由は、880年余りの長い歴史を持っているからで、宋代の徽宗の『大観茶論』(1107〜1110年の大観年間に完成した本)に白茶についての記述が次のようにあります。

  「白茶は一種の独特の茶葉で、普通の茶と違う。その外形は少し開き、茶葉は美しい緑色で薄い。岩山の崖の間に生えるものなので、人間が取ることは非常に難しい。茶樹のある家は僅か4〜5軒で、茶樹は12株だけである。この茶樹で製造した白茶は僅かしかできない。若芽は多くないので蒸したり焙ったりするのは非常に難しい。湯と火の加減が少し違うと普通の茶葉になってしまう。全て精巧に製茶することが出来れば、表面も中身もよい団茶になって、これと比べるものはない。浅く焙る白茶もあるが、上級品質とは言い難い」

  宋代には平均気温が唐代に比べ2〜3度下がったことから、宮廷茶園は南方の福建建安郡北苑(現在の福建省建甌市)に設けられることになりました。『大観茶論』に取り上げられた白茶は北苑御焙茶山に産する野生の茶で、製造方法はまだ団茶の作り方であったので、現在の散茶とは異なった方法で製茶されたお茶です。

  現在の白茶の作り方は、清の嘉慶初年(1796)に若芽で銀針を製造して、1855年、福鼎大白茶で白毫銀針を製造してから定着したものなのです。

白毫銀針

 白毫銀針は略称を「銀針」、あるいは「白毫」といいます。芽頭という未開きの新芽を使い、全体に白毫があって、銀色の光沢があり、針のように細長い形になるので、命名されました。白毫茶は僅かな白茶の高級品で、宋代以来の歴代皇帝の献上品とされてきました。福建省福鼎市太姥山の麓で生産されています。

 最初に芽生えた春の新芽が一番よく、普通3月下旬から清明節までに太い一芯一葉を摘み取って製茶されます。

 この茶は解毒、解熱の効果があるので、じんましんの良薬と言われています。

【ワンポイント・メモ】  白茶は、茶湯の色が薄く私たち日本人にはお茶らしく見えないかもしれません。しかし、その清らかな香りと味わいは、精神安定によく、烏龍茶などとは違ったすばらしさがあります。烏龍茶などより時間をかけて淹れ、ゆっくりと味わってみてください。

棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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