戦国時代に突入した自動車産業
特集3
WTO加盟で何が変わったか

2006年3月28日、50万台目の奇瑞が生産ラインから出てきた。わずか9年の歴史しかない民族の自主開発のブランド車は、中国の自動車工業の歴史上、最初に50万台を突破した

  2001年に中国は正式に世界貿易機関(WTO)に加盟した。その後5年間で、中国の自動車に対する関税は、2001年の70〜80%から30%まで下がった。自動車部品の関税も、2001年の25%から13%になった。2005年、中国はWTOの規則に照らして、自動車の輸入割当てを撤廃した。今年7月には、中国は自動車の輸入関税をさらに25%に下げる。こうした措置によって、輸入や合弁による自動車の価格は大幅に下落し、自動車の種類も大幅に増加した。

復活する国産自動車

 WTO加盟は、中国の自動車産業にきわめて大きな衝撃をもたらすだろう、と多くの人々は考えていた。例えば輸入車が大量に出現すれば、中国の自動車工場の生産能力は弱まり、それによって国産車の価格は低下し、ついには倒産に至る。

華晨中国自動車は、最初に海外で上場した中国の会社で、2002年12月、瀋陽で生産された乗用車の中華は、自主ブランドの中、高級の乗用車である

  しかし、結果は逆で、杞憂に過ぎなかった。その原因はどこにあるのか。多くの多国籍企業は、中国がWTOに加盟する前に、すでに中国に根を下ろし、彼らの主力車種はいずれも中国で現地生産を行っており、生産コストは中国向け輸出車のコストに比べて低かったからだ。
 
  また、中国経済の速い発展が、人々の「マイカーブーム」を引き起こした。それが巨大な市場を育成し、国内自動車企業の生存・発展の空間を拡大したのである。
 
  WTO加盟はまた、国産の車種の自主開発につとめる中国の民営自動車メーカーに、滅多にない発展のチャンスをもたらした。

2004年、中国市場のために注文生産された特大の賓利(ベントレー)が、北京の国際モーターショーに出現した

  1997年、冷蔵庫などを製造する民営企業で成功を収めた李書福氏が、自動車メーカーの創業に乗り出した。しかし、友人たちはこぞってそれに反対した。なぜなら、民営企業は、国有企業のように国家の支援が受けられず、また合弁企業のような分厚い資金と先進技術もないからであった。

  しかし李氏は、5億元を投資して、吉利自動車有限公司を設立し、経済的なファミリーカーの研究開発を始めた。
 
  1999年には、吉利公司はすでに乗用車の量産能力を備えていた。しかし当時、中国は自動車生産に対し厳格な管理制度を実施していて、自動車の生産許可証が取れなかったため、李氏は一時、苦境に陥った。
 
  幸いにも中国のWTO加盟の交渉が進展し、中国は次第に自動車生産に対する管理や規制を緩和した。そして2001年に中国がWTOに加入する前の日に、吉利公司はついに自動車の生産許可を獲得した。

北京・亦荘経済技術開発区にある長春一汽アウディーの専売店

  その後、吉利公司は「庶民にも買える良い車を造る」という低価格戦略で、大胆な経営を行った。その結果、2005年には、吉利自動車は15万台近い販売台数になり、全国の排気量の小さな自動車の販売台数で第2位の好成績をあげた。しかも、マレーシアには7000台近くを輸出した。「もしWTO加盟や国の民営企業に対する緩和政策がなかったら、吉利自動車は今日のような局面を迎えることはできなかっただろう」と李氏は言っている。
 
  現在、吉利や奇瑞をはじめとする民営企業は、中国の自動車市場で重要なシェアを占めているだけでなく、アジアやアフリカの発展途上国へ輸出を始めている。米国商務省の自動車セクションは、4、5年後に、中国の自動車は米国市場に進出するだろうと予測している。

中国の自動車産業はどこへ

 WTOは新たなチャンスをもたらすと同時に、中国の自動車産業の持つ欠陥をも暴露した。自動車市場が盛況を呈すると、各地の政府は次々と「造車運動」を起こした。
 
 現在、中国には、190の完成車を造る工場と3900余の部品工場が23の省や直轄市に散在している。こうした小規模、分散型の経営モデルは、企業間の生産と競争にかかるコストを増加させている。また、中国国内で生産される自動車の大部分は、外国からの技術導入に頼り、自主開発の能力が足りない。

北京金港自動車クラブでは、各種の自動車レースの選手育成やテスト走行などの活動が行われ、車好きな若者を引きつけている

 国家発展・改革委員会の産業発展研究所の馬暁河所長は「長い目で見れば、中国が永遠に、世界最大の自動車組み立て工場であり続けることはできない。中国が進むべきは、技術を導入し、その技術を消化し、製品を開発し、自主的にイノベーションする発展の道である」と述べている。
 
 一方、中国自動車工業協会の蒋雷・副会長は、中国の自動車産業発展の趨勢について「今後5年の間に、中国は基本的に、整った自動車工業の製造体系を形成し、自主発展の総合的な実力を備え、世界の自動車の製造強国になり、国際的な協力と競争に参入できる能力を持たなければならない」と述べている。
 
 こうなるために、「諸侯」にもそれぞれの戦略がある。
 
 ドイツのフォルクスワーゲンは、引き続き中国に74億ドルを投資し、生産能力を2倍に拡大し、中国市場の30%のシェアを占めると表明している。

トヨタ自動車(中国)投資有限公司の磯貝匡志総経理(同公司提供)

 韓国の北京現代自動車は、今年の生産・販売台数を30万台と計画しており、2010年には、年間60万台を目標にしている。
 
 トヨタ自動車(中国)投資有限公司の磯貝匡志総経理は「2005年にトヨタの中国での販売台数は18万3000台に達し、前年より58%増えた。中国のモータリゼーションは急速に発展しており、中国の自動車市場は、日本市場を超え、米国市場に匹敵する市場となると見込んでいる。今後、トヨタは、高品質の商品とサービスを提供し、お客様に満足いただけるよう努力したい」と言っている。


 
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