深遠な国茶の世界(22)
棚橋篁峰
 
 
輸送や保存に便利
緊圧茶

 
さまざまな緊圧茶

  5月号で紹介したプーアル茶のような黒茶類(後発酵茶または微生物発酵茶。いったん製茶して一次加工の毛茶を作り、更に微生物を付着させて長期保存をして作られるお茶)の中で、特に圧縮して、煉瓦状や餅状など様々な形に整えたものを総称して緊圧茶といいます。

 緊圧茶は黒毛茶、老青茶などと呼ばれる前述の毛茶を原料として、堆積(茶葉を保存する)、做色(色を出す)の方法によって作られます。それを「湿ヒ積做色」(一定の湿度を保って色を出す)「乾ヒ積做色」(一定の乾燥の上に色を出す)「成茶堆積做色」(出来上がった茶を堆積して色を出す)などと言うのです。

 このような工程は、渥堆、蒸、圧などと呼ばれ、これによって様々な形に出来上がった茶が緊圧茶です。この種の茶は、ほとんどが少数民族の住む地域で飲まれ、各民族の生活必需品となっているので、辺銷茶とも呼ばれています。

 種類が多く、原料と加工方法もそれぞれ違うので、全てを紹介することは出来ませんが、製品となった茶は黒色か茶色で、お茶の湯の色は濃い黄色か赤色になります。

 有名な緊圧茶には、六堡茶(広西チワン族自治区)、プーアル茶(雲南省)、沱茶(雲南省、重慶市)などがあり、独特な風味があって、ダイエットと美容の効果があると言われています。

 緊圧茶の生産地域は湖南省、湖北省、四川省、雲南省、貴州省、広西チワン族自治区などに集中していて、湖南省では茯磚茶、黒磚茶、花磚茶、湖北省では青花磚茶、四川省では康磚茶、金尖茶、雲南省ではプーアル茶と沱茶、重慶でも沱茶などが製造されています。

 緊圧茶は歴史が非常に古く、11世紀前後に、四川省の茶葉商人が初めて蒸した緑茶を餅茶に圧縮して、辺境地域に販売したと言われ、19世紀末期に、湖南省の黒磚茶、湖北省の青磚茶が相次いで発売されています。

 緊圧茶は消化作用が大きいほか、少数民族が馬、羊、ヤクなどのミルクや塩、バターなどを混ぜる独特な飲み方にも合うお茶です。

 湿気に強いため、長距離輸送と長時間貯蔵に適しています。緊圧茶の茶葉生産地区のほとんどが交通の不便な場所にあるので、長距離輸送する際に、非常に便利なのです。また長時間貯蔵すると、水分と湿度の作用で味がまろやかになるので長期保存に適していて、お茶が生産できない地域では必需品となっています。

【ワンポイント・メモ】

  日本では、プーアル茶以外の緊圧茶を見ることはほとんどありません。チベットや新疆、内蒙古などのお土産にもらった場合は、飲み方をよく調べてから飲むようにしてください。


棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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