深遠な国茶の世界(23)
棚橋篁峰
 
 
まろやかな味がでる
あぶり茶

 
右は太平猴魁、左は六安瓜片

 前回まで、中国茶の全体像がわかるように、さまざまなお茶を紹介してきました。しかし『中国名茶誌』によれば、中国茶は主な名茶だけでも1017種類にものぼり、販売されている一般的なお茶の種類は、どれくらいあるか正確にはわかりません。
 
今回は、今までに紹介していない名茶を二つ紹介しましょう。いずれもコウ青と呼ばれる方法で製茶された緑茶で、あぶり籠であぶることから、「あぶり茶」とも呼ばれている名品です。

太平猴魁
 
  太平猴魁は安徽省黄山市黄山区(太平県)新明郷の猴坑、猴崗および顔村にて生産されています。茶芽はやわらかく、茶葉はふっくらとして、毫の多くみえる独特の外形を持っています。
 
  毎年、穀雨前から立夏までの15〜20日の短い期間で摘み取ります。摘み取った茶葉の2枚目までを更に厳選して猴魁の原料とします。
 
  茶の外形は一般の茶葉とは違い独特のもので大変大きく、両端がやや尖った扁平で、ふっくらとしているのですが丈夫です。全体に白毫は内に隠れていてほとんど見ることは出来ません。淹れると茶葉が徐々に開いていき、それぞれ新芽一芯と茶葉二枚であることがわかります。茶湯は青緑色で、爽やかな蘭の香りがあり、味はとてもまろやかです。

六安瓜片
 
  六安瓜片の略称は片茶といいます。外形が向日葵の種の形に似ているため名付けられました。安徽省六安市、金寨県、霍山県の3つの地域で生産され、金寨県斉雲山鮮花嶺蝙蝠洞にて生産される茶葉が最も品質が良く、「斉山名片」と呼ばれています。
 
  摘み取りの季節は、だいたい清明から穀雨までです。茶樹の先の一芯から3、4枚目までの茶葉を摘み取り、その次に摘み取った茶葉を3枚目、2枚目の順で、新芽まで茎から分離させ、区分けします。完成した茶葉は裏面に湾曲し、種の形になり、淹れられた茶湯は明るい深緑色で、爽やかで香りが高く、味はまろやかな甘さが特徴です。
 
  六安の茶葉の生産は唐代に始まり、六安瓜片は明、清代には広く人々に知られていました。

【ワンポイント・メモ】

  今回紹介した二つの緑茶は、爽やかな味わいが特徴です。太平猴魁は茶葉が独特の形をしていますので、広口の急須に入れ、茶葉を傷めないようにして飲んでください。新しい緑茶の世界が広がると思います。


棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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