夢を実現できるハイテクの楽園
――上海張江ハイテクパークの人に優しい管理
                                                                     葛竜官 陳立雄=文  陳立雄=写真

夢を追う企業家の楽園――張江ハイテクパーク

 15年という時間は、歴史の流れの中ではあっという間に過ぎ去ってしまう歳月だが、起業家ならその間に夢を実現し、成果を創り上げてしまう時間である。

 上海浦東新区の中部に24平方キロほどの面積を占める上海張江ハイテク産業開発区(略称 張江ハイテクパークまたは張江園)は、その一つの例である。1992年、片田舎の広々とした野原にオープンした張江ハイテクパークは、いまや「中国のシリコンバレー」と呼ばれる北京の中関村と肩を並べ、「北の中関村、南の張江園」と呼ばれるようになった。

上海張江ハイテクパークの一角

 張江ハイテクパークの建設は二期に分けられる。第一期では、約7年の時間を費やして、「不毛の地」を国家級のハイテク産業の集まる製造業基地に変えた。その後さらに約7年間かけて、世界的にも注目を集める技術の革新、制度の革新、付加価値製品の革新を実現するハイテクパークを打ち立てた。現在では、きわめて中国国内の投資が集中し、産業チェーンが整い、加工水準と生産能力が高く、研究開発の実力を備えた地区となっている。

 また、ハイテクパーク内にはバイオ医薬、IC、ソフトウエアの三大産業を重点とする11の国家級産業基地がある。国内外の各研究開発機関の二百数社がここに集まっている。張江ハイテクパークは、もはや世界のハイテクの研究開発になくてはならない存在となっている。

 また同時に、張江ハイテクパークはそれぞれの分野のエリートたちを引きつけている。ここには7万人以上が働いており、その半数は科学技術の研究開発に携わるそれぞれの分野のプロフェッショナルである。その中には、「両院院士」と呼ばれる中国科学院と中国工程院のアカデミー会員が二十数人、各分野の博士が2000余人、世界各地からの帰国留学生が4000余人いる。張江ハイテクパークはエリートが一堂に会し、互いに競い合って夢を追う楽園なのである。

調和の取れた雰囲気を営造 人文精神を主張

 ここで特に言及しておきたいのは、この15年間、張江ハイテクパークを牽引してきた管理部門の役割である。その点について人々に尋ねてみれば、「彼らは科学技術者を保護する『庭師』であり、調和のとれた環境を営造する人文精神の体現者だ」という声が聞こえてくる。まさに張江ハイテクパークの責任者の言うところの「人材は世界で最も貴重な資源。ここで働く人々に気持ちよく仕事をしてもらい、革新と創業に積極性と意気込みを発揮してもらうのが私たちの仕事」ということなのだ。

 例えば、ハイテク分野の前線で活躍している人々は仕事のプレッシャーが大きく、生活も不規則である。そこで、張江ハイテクパークでは上海の名医、健康専門家、心理学医者を度々招いて、体調のすぐれない職員を対象に、健康のために心がけるべきことを講義してもらい、心理学の面からプレッシャーを和らげて、悩みが解消されるよう指導した。これらの講座のおかげで、多くの職員たちは生活スタイルが改善され、人間関係のバランスもよくなり、日々よりよい気分で過ごせるようになったようである。

青年交歓会イベント「青春の歩み」

 中国のホワイトカラーの中にも日本と同様、ある程度の年齢に達してもさまざまな原因で結婚していない青年たちがいる。本人のみならず、両親や親しい人々もこの状況を喜んではいない。こうした現状に対し、張江ハイテクパークの関係者は、「貴方にも縁」「青春の歩み」などと題した青年交歓会イベントを催し、歌や踊り、娯楽、スポーツの競技を通じて互いに親しんでもらうことで、いつしか恋愛から結婚に結びつくような相手を見つける機会を提供している。青年たちはイベント企画者のことを、親しみを込めて「月下氷人」と呼んでいる。

 張江ハイテクパークの管理部門は、企業家たちの生活上の煩わしい悩みを解消することを自分たちの仕事とみなして来た。ある中国の博士研究員(ポストドクター)はカナダ国籍の女性との入籍にあたって、手続き上のトラブルに見舞われた。張江ハイテクパークはその問題を解決するために人を配してあちこちに連絡、奔走し、この国際結婚はめでたく落ち着いた。また上海に着いたばかりの別の技術者は、住宅も見つからず、奥さんの仕事も見つからず、子供の戸籍の移転も学校の入学も待たされているという困った状況に陥っていた。山ほどの問題を前に、この技術者はもはやお手上げ状態だった。すると、張江ハイテクパークの管理部門の人は「心配せずに仕事のことだけを考えてください。問題は全部私たちに任せて」と声をかけ、たちまちのうちにそれらの問題を全て解決した。技術者一家は、曇り空が一気に晴れ渡ったとばかりに喜んだ。

 張江ハイテクパークには「成功は激励し、失敗には寛容に」という有名なスローガンがある。成功者に喝采するのはもちろんのことだが、起業は簡単なことではないため、努力をしたにもかかわらず成功していない人には寛容に理解を示し、彼らの「セカンドベンチャー」を助けるべきだという意味である。張江ハイテクパークの管理部門は、この非常に理性的で人間的なスローガンの積極的な提唱者と実践者なのである。この15年間、ハイテクパーク内には、このスローガンのもとで各方面からのサポートを受けることによって、失敗を経て成功するに至った者も少なくない。

 張江ハイテクパーク内はハード面としてインフラ建設を重視すると同時に、ソフト面としての環境整備も重んじている。それはハイテクパーク内の文化、調和のとれた環境、人に優しい管理などを考慮した環境整備である。この面においても、ハイテクパークの管理部門は積極的な提唱者であり執行者として、「団体精神」を強調すると同時に、「個性」の美しさをも称えている。「張江ハイテクパークではひとつひとつの街灯でさえ、それぞれスタイルの異なる個性的なものであっても構わない」と言う管理部門の人もいる。このような雰囲気や環境において、技術者たちが穏やかな心持で開放された自由な思考世界を得て、革新的な起業のインスピレーションが刺激されるというところに、今日の張江ハイテクパークの魅力がある。

 「ここに魅かれたのは張江ハイテクパークの企業家への理解です」と展訊通信有限公司(Spreadtrum Communications)の武平総裁は言う。

 また、上海羅氏製薬有限公司(ロシュ・ダイアグノスティックス Roche Diagnostics)のウィリアム・カイラー総経理は「張江ハイテクパークは夢を製造し、夢を実現するところだ」と述べた。


 
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