中日メディアの架け橋に
錢行さん
CCTV白岩松キャスター(左)との番組打ち合わせ(CCTV提供)

 「ここが、放送人としての僕の原点です」。東京・品川にある江戸時代の古刹・東海寺で、錢行さんは懐かしそうにかつてを振り返る。

 今でこそNHKディレクターの肩書きを持つ錢さんだが、北京から私費留学で来日した当初は、生活費も学費もすべてアルバイトで賄う苦学生だった。慶應大学に合格したものの、皿洗いで貯めたアルバイト代はあっという間に授業料に消えてしまった。下宿探しに頭を悩ませた末、寺の門を敲いた。

 待ち受けていたのは禅寺の厳しい修行の日課。一方、そこで寝食を共にする僧侶との交流から、距離感を持って物事を冷静に見つめる心も芽生えた。

 外国人の視点で伝える番組が民放で始まると、オーディションで留学生アンカーに選ばれた錢さんは、キャスターにとどまらないエネルギッシュな行動力で番組をリード。自ら企画・構成・脚本を手がけ、さらに取材、ナレーションと一人五役をすべて日本語でこなした作品が、ギャラクシー賞、放送文化基金賞及び日本民間放送連盟賞最優秀賞に輝いた。

 大学卒業後、今度は放送の舞台裏で働くディレクター職を目指した錢行さんは、NHKの厳しい定期採用試験を突破した初めての中国国籍職員に。以来12年間、一貫して国際報道に携わり、数々の現場から中日間の光と陰を伝え続けている。

 とりわけ両国の関係が冷え込んだ一昨年。日本に反発した中国の若者の声を現地取材し、NHKが8月15日に放送した戦後60年特別番組『日本の、これから』に反映させた。また、両国の関係改善の兆しが顕著な今年、CCTVが初めて日本社会を大型シリーズ番組『岩松看日本』で取り上げる際、錢さんは人気キャスターの白岩松氏に密着し、逆取材。そのNHKの番組はCCTVでもノーカットで放送され、二大メディアによる新たなコラボレーションが実現した。

 今年の春、NHK史上初の中国語インターネット動画番組を立ち上げ、さらに秋からは自らキャスターも務める錢さん。これからも中日両国の報道の最前線で、持ち前のたくましいバイタリティーを発揮してくれることだろう。(文・林崇珍 表紙写真・于前)

 

 

 
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