落語と算数で中日交流を

京都外国語大学教授 彭飛

 この20年間、私は中日の文化・教育の交流をボランティアで数多く手がけ、大きな感動と忘れがたい思い出がたくさんできた。また、中日間の交流企画のプロデューサー、コーディネーターがもっと多ければ、もっと多くの明るい交流、明るい話題ができるのではないかとも思った。このようなプロを育てるのも、われわれ大学人の課題である。

 この誌面を借りて、二つの明るい交流を紹介する。今年の春、桂小米朝師匠の落語(日本語)と中日の小学校の先生の交流(算数)というユニークな国際交流を、半年の準備をかけて、北京で実現した。

 日本人の参加者は39人。桂小米朝師匠を含め、初めて中国を訪問する30代、40代の方が多かった。北京到着後、まずその足で訪問したのは北京市国際芸術学校。分かりやすくいえば、中国雑技団の附属芸術学校である。自転車二台に20人以上が乗る高校生部の練習授業に、一行は驚かされた。のちに聞くと、今秋の日本公演のための練習だそうである。練習授業を見学した後、小学部の普通の国語・算数・英語の授業を見学した。厳しい特訓を受けた児童なのか、授業のとき、ピンと背筋を伸ばしていたのが印象的だった。

桂小米朝師匠の落語会

 桂小米朝師匠との出会いは22年前のNHKの番組。私が大阪のある日本語弁論大会で一位になり、NHKが一時間ほどの日本語の特番を作ってくれた。桂小米朝さんも出演し、トークした。

 当時、来日してまだ一年足らず。落語家の滑らかな日本語に惹きつけられた。二十数年たった今もなお、記憶に新しい。 この感動を、日本語学習者にも味わってもらおうと、今年の3月26日午後、北京大学での桂小米朝師匠の落語会を企画した。日本語専攻の院生がポスターまで作って、北京のほかの大学の大学生にも呼びかけたおかげで、240人も集まった盛大な落語会となった。北京だけではなく、はるばる河南省の洛陽から駆けつけた方もいると聞いて感心した。

 噺家は、まさにことばのプロである。小米朝師匠の落語『移動動物園』の素晴らしい演技に、大学生は初めから終わりまで素直に笑い続けた。日本で落語をやるよりも受けたのではないかと、最後列に座った私は胸を撫で下ろした。

 実は当日開演前、小米朝師匠のマネジャーの、用意された高座の高さがまだ足りないとの言葉に、北京大学の教授や院生たちはあわてて一緒にレンガを運び、台を高くしたそうである。落語に欠かせない高座、一人芸なので、ある程度の高さがないと会場を沸かせることが難しいことがよく分かった。

 北京の大学生は日本の古典芸能を堪能したばかりでなく、日本語の勉強としてもいい刺激になったと思う。落語の後、日本語の面白さと難しさについて、私と桂小米朝師匠とのトークを行なった。質疑応答の時間に、落語の『崇徳院』のさわりの部分をやってほしいという学生のリクエストもあり、驚いた。

算数の先生の大交流

桂小米朝師匠の北京大学での落語会

 小米朝師匠の落語会と同時に、日本人の小学校の先生三十数人が、北京の三つの小学校で教壇に立って算数の授業をした。また、北京の優秀な先生による算数の授業を見学した。日本の国立・公立・私立の研究熱心な算数の先生たちが北京に一堂に会し、すばらしい提案授業を披露し、中国人の先生からの評判も高かった。

 これまで、小学校の中日交流のパターンは、児童の絵交換や学校見学が多かった。国語の授業だと中日の異なる漢字などがあって交流しにくいが、算数なら共通の算数話題があり、面白い!

 円、分数、面積、図形、負の数など工夫次第で授業を生き生きとできる。授業力が問われる中日の算数の先生たちの交流は、みんな真剣だった。

 今回、北京を訪問した算数の先生は大学院を出た方も多く、個人研究のレベルは高い。しかし日本ではカリキュラムの制限があって、実際にこんなにすばらしい授業をする場がないのが残念なことである。

 団長の佐藤学先生(大阪教育大学附属池田小学校教務主任)は、「完成度の高い中国の算数の授業が一番の驚き。授業のテンポがよく、流れるようなものだった。子どもたちも素直、一生懸命で、夢をもっていることも、こうした授業を作り出す大切な条件ということを見出すことができた」と言う。

 北京芳草地小学校は児童の三分の一が外国籍。日本国籍の児童は私たちの案内役となり、丁寧に紹介してくれた。授業中、「分かった」と日本語で答えた児童もいた。

 北京大学附属小学校は野球が盛んと聞いて、授業者でもある奈良の帝塚山小学校の堀俊一校長先生は、野球用具一式をプレゼントした。郊外にある小学校・昌平昌盛園小学校での授業の際には、万里の長城のふもとの小学校の先生も聞きに来た。

 日本人の先生の授業は、最新の教具を用いるものもあれば、鏡を使って教える先生も、パワーポイントで授業する先生もいる。私は古本温久先生(東大阪市立長瀬北小学校)の「二十をつかめ」の授業を聴講した。工夫された授業で、児童全員が総立ちになって答えようとする光景が脳裏に焼き付いて離れない。感動的な授業だった。最後に、北京外国語大学附属外国語学校で、「2007・中日小学校算数教育国際シンポジウム」を開き、総括した。

 この二つの交流を記念し、今年8月、『笑って学んでin北京 桂小米朝落語&算数交流』の記念文集を刊行した(和泉書院)。裏話や中日の小学校の事情など参加者の感想文、ぜひともご一読を。


 
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