中国行政法、五大変化へ

 北京大学教授、博士課程指導教官の姜明安氏は《中国法学》誌上で、20世紀後期に全地球規模で沸き起こったグローバル化、情報化、市場化、民主化という四大世界潮流の影響を受け、中国行政法に重大かつ深刻な変化が発生している、と発表した。

 この変化は以下の五方面に表現されている。

 一 “領域”行政の変遷。“行政国家”(全能政府)から“有限政府”への移行。行政法の調整範囲は行政の“領域”によって決定され、行政の“領域”の大きさは“公共物品”の境界によって決定される。さらに、どのような“公共物品”が政府によってのみ提供されるのか、どのような物品が政府以外の“第三部門”によって提供され得るのかは、“第三部門”の成熟と行政改革、政治改革の進捗度によって決定される。しかし、いずれにしても政府職能はさらに転変、転移し、国家行政の“領域”は逐次縮減して行くという方向が新世紀行政法発展の顕著な趨勢であることに変わりはない。 

 二 行政権行使主体の変遷。責任政府から民主参与への移行。伝統的行政法の“責任政府”では国家行政権を政府が行使し、政府は議会と人民に対して責任を負っている。“責任政府”は人民の国家行政権への直接参与或いは其の他の国家権力の行使を要求するものではない。

 三 行政法原則の変遷。形式法治から実質法治への移行。いかなる民主国家のいかなる時期においても、法治は行政法の基本原則であった。しかし、時代によって法治原則の内容は完全に一致しているわけではない。伝統的行政法治が重視するのは法治の形式であり、主に政府による法に依拠した行政を強調しており、政府の管理には依るべき法があり、法があれば必ず依らなければならず、公民は法律の前において皆平等であるので、封建専制社会の人治とは相対立するものである。そして、現代行政法治には益々多くの実質的内容が注入されるため、形式法治から逐次実質法治へと転化していく。

 四 行政目標と手段の変遷。管理、強制からサービス、指導、合作への移行。伝統的な行政法に基づけば、行政の主要目標は管理であり、管理の主要な手段は強制である。20世紀中期以降、伝統的行政目標と行政管理手段に変化が起こり、一部の西側国家は“新公共管理”運動を展開した。伝統公共管理の主体中心主義、権力中心主義は客体中心主義、サービス中心主義に転化している。

 五 行政権力コントロールメカニズムの変遷。司法審査の偏重から司法審査と行政手続きの双方重視への移行。20世紀後期の行政権力コントロールの実践が証明しているように、行政手続きは現代の行政権力コントロールの中で最も積極的で有効な一種の権力コントロール制度である。当然のことであるが、行政手続による権力コントロールは司法審査から逃れることはできない。司法審査の保障がなければ、行政手続きの機能は大打撃を受けることになる。このため、現代行政権力コントロールメカニズムは行政手続きと司法審査の双方を重視することであって、行政手続きによる権力コントロールで司法審査による権力コントロールを代替することではない。

(「チャイナネット」より)2003/03/10