朱鎔基総理の政府活動報告(2003)(三)


 わが国のような一三億近くの人口を擁する国が、人民の生活を全般的に小康水準に到達したこと、これは社会主義制度の偉大な勝利といえるものであり、中華民族の発展史上における新たな一里塚である。

 ここ五年来、国防と軍隊の建設は新たな一歩を踏み出した。人民の軍隊は新しい時期における軍事戦略方針を貫徹し、科学技術による軍の精鋭化戦略を実施した。軍隊の革命化、現代化、正規化の建設が引き続き強化され、国防力と軍隊の防衛作戦能力が向上している。期限どおりに兵員五〇万人の削減目標を達成した。思想・政治の建設が着実に進められ、成果が現れている。後方支援保障体制の改革が絶えず深化している。兵器装備の現代化水準が著しく向上した。人民解放軍、武装警察部隊、予備役部隊および民兵は国の主権、安全の擁護、経済建設への支援と災害危険対処・救助において重要な貢献をした。国防分野の科学技術研究が強化され、国防科学技術工業が新たな発展を遂げた。国防動員の仕事は絶えず進歩を見せている。軍隊擁護・軍人遺族家族優遇、政府擁護・人民愛護の活動が深く繰り広げられ、軍隊と政府、軍隊と人民の間の団結は一段と強められた。

 ここ五年来、祖国統一の大事業は新たな進展を見せている。香港の祖国復帰に続き、一九九九年十二月にわが国政府は澳門に対する主権の行使を回復した。「一国二制度」の方針を堅持したため、香港特別行政区基本法と澳門特別行政区基本法は貫徹、執行された。中央政府は、香港、澳門の二つの特別行政区の行政長官と政府が法に依って施政することを全力をあげてバックアップした。香港、澳門の社会、経済は安定している。われわれは「平和統一、一国二制度」の基本方針および台湾問題の解決に関する江沢民主席の八項目の主張を堅持し、断固として「台湾独立」を企む分裂勢力と戦った。両岸間の交流と往来を促し、「三通」(直接の通信、通航、通商)を推し進め、祖国の平和的統一のプロセスを速めるために多くの仕事をした。

 ここ五年来、外交活動は新しい局面を切り開いた。国際情勢の複雑な変化に直面して、わが国は独立自主の平和的外交政策を堅持して、二国間および多国間の外交活動を幅広くくりひろげ、積極的に国際的交流と協力に参与したため、国際的地位は著しく向上した。わが国と周辺諸国との善隣友好・協力関係は一段と発展し、発展途上諸国との連帯・協力は絶えず強化され、先進諸国との関係は改善され、発展を遂げた。上海協力機構(SCO)の設立により、地域的安定と経済協力が促進された。中国・ASEAN自由貿易圏設立のプロセスが始動し、多くの分野における東南アジア諸国連合との協力が強まっている。わが国は国連とその他の国際および地域の組織の中で、積極的な役割を果たしている。われわれは国家主権、領土保全と民族の尊厳を断固として擁護し、外的勢力がわが国の内政を干渉する企てをくじき、国際社会から幅広い支持を勝ち取った。わが国は積極的に国際反テロ協力に参与するとともに建設的な役割を果たした。

 代表のみなさん

 過去五年間に、「第九次五ヵ年計画」は勝利のうちに達成され、「第十次五カ年計画」は幸先よいスタートを切った。この五年間は、全国各民族人民が中国共産党の第十五、十六回大会の精神の導きのもとで、中国の特色のある社会主義の道に沿って勢いよく邁進した五年であり、国が日進月歩の変貌を遂げ、諸般の事業がめざましく発展をとげ、人民の生活が著しく改善された五年であり、わが国の社会が安定し、各民族が団結し、国際的影響力が日増しに大きくなった五年である。今期政府は真剣に職責を履行して、国の繁栄を促進し、人民の福祉を増進させるために、しかるべき貢献をした。

 この五年間の政府の活動において、われわれは終始一貫してケ小平理論を指針とすることを堅持し、「三つの代表」の重要な思想を真剣に貫徹し、思想を解放し、事実に立脚して真理を求め、党の基本路線と基本綱領を全面的に実行し、経済建設というカギをしっかり掴み、改革・開放を大いに推進し、改革・発展・安定という三者間の関係を正しく処理し、積極的に物質的文明と精神的文明のバランスのとれた発展を促してきた。豊富多彩で生気に満ちた実践の中で、少なからぬ有益な経験を積み上げた。

 ここ五年来のわれわれの主要な体得は次の幾つかの方面にある。

 (一)マクロコントロールの方向と度合いを正しく把握することを堅持し、積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施した

 社会主義市場経済を発展させるには、マクロコントロールの強化とその改善をはからなければならない。マクロコントロールは経済の比較的速いテンポの安定成長を保つことを主眼とし、内外の経済情勢の変化をすばやくとらえ、予見性、対応性及び有効性を増強する必要がある。ここ数年、国際経済環境は厳しく、国内では有効需要の不足といった困難な局面に直面している。この状況の下、われわれのとってきた最も重要な措置は、マクロコントロールの重点を、適度引き締めの財政政策と通貨政策の実施およびインフレ対策から内需拡大の方針へと果敢に転換し、積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、デフレ傾向を抑制するとともに、実践の過程で政策・措置を適時に充実させ、コントロールの度合いを把握して確実な成果の取得をはかることであった。

 財政収支のバランスをとり、入るを量りて出ずるを制すことを堅持すること、これは経済活動で守らなければならぬ重要な原則である。ここ数年、積極的な財政政策を実施し、長期建設国債を発行してきたことは、特定の状況に応じた特別の政策である。われわれは、経常予算においては赤字を計上せず、建設予算においては年頭に定められた赤字の規模を超えないことを首尾一貫して実施してきた。銀行預金がかなり増え、物資の供給が豊かになり、物価の持続的なマイナスの伸びが見られ、金利水準も比較的低いといった条件のもとで、国債の発行による建設を行なうことは、遊休生産力を生かして経済成長を牽引することが可能である一方、銀行の利子負担を軽減することもでき、インフレを招来することも避けられ、一挙に多くのメリットが得られる。長期建設国債資金を運用する際、インフラ建設を重点的にサポートするとともに、産業構造の調整、企業の技術改良、科学技術・教育の発展及び生態環境の建設を促すことと結び付け、中・西部地区への傾斜に心を配った。そして、国債プロジェクトの管理を強化し、重複した建設と過度に先走りした建設を防止し、資金の運用効率を高めた。投資需要を拡大すると同時に、消費需要を育成、拡大することにも気を配った。主として都市農村における中・低所得層住民の収入の上昇に努めた。一九九九年以来、三回も政府機関・事業体における職員の基本給基準と定年引退・退職者の年金を引き上げ、年末一括払いのボーナス制度を実施し、生活難の辺境地域向け手当制度を打ち立てた。国有企業における定年引退・退職者の待遇を引き上げた。各種社会保障対象向けの補助金基準をかなり大幅に引き上げた。さらにあらゆる措置を講じて農民の収入を増やした。消費を奨励する政策を実施し、経済成長に対する投資需要と消費需要という二重の牽引力を引き出すことに努めた。

 ここ数年のマクロコントロールの成功の原因はまた、金融の仕事を高度に重要視し、穏健な通貨政策の実施を堅持することによって、経済発展に必要とされる金融のサポートを保ったばかりでなく、銀行の貸付を盲目的に緩めることをも防ぎ止めたことにもある。銀行は国債プロジェクトのための関連貸出を優先させ、市場があれば、その効率も期待できる、信用のある企業の流動資金と技術改良向けの貸出をサポートした。資金の需給の変動と経済発展の需要に応じて、一九九八年以来あわせて五回にわたって銀行の預金利子と貸出金利を引き下げた。住宅、学資援助など消費向けの貸出を発展させ、二〇〇二年末までの消費向け貸出残高は一兆七〇〇億人民元に達した。上述の諸措置は、企業の投資を増やし、住民の消費を拡大する上で重要な役割を果たしている。

 一貫して続けてきた積極財政と穏健な通貨政策は比較的速いテンポの経済成長を促し、財源を養い、拡大した。同時に、財政・租税体制を絶えず充実させ、税金の徴収と管理を強化することによって、中央の財政力は目に見えて増強され、地方への移転支払の度合いも次第に大きくなった。租税還付と体制的補助のほかに、中央財政の地方への移転支払総額は一九九七年の六六四億元から二〇〇二年の四〇二五億元に増え、五年間で合わせて一兆二三一九億元となった。このうち、地方の「二つの確保」と「最低生活保障」に振り向けられた支出は一七七七億元、地方の政府機関・事業体の職員の賃上げに振り向けた支出は一七五五億元である。それは内需を拡大し、地域間がバランスよく発展することを促し、社会の安定を維持する上で重要な役割を果たした。

        (「人民網日本語版」より)2003年3月18日