【寧さんの一言】
「定年退職しても、デザインの仕事とは縁を切れない。もうこれは、生活の手段というより、生活の一部になっているからね」

 

 寧さんは改革・開放初期に、日本での研修のチャンスに恵まれ、いち早く系統的に外国の最新書籍デザインを学んだ中国人の一人である。

 当時はちょうど、中国出版業が大きく成長しはじめた時期で、彼は中国への外国のデザイン理念の紹介に努め、中国書籍に新しい風を吹き込んだ。

 1992年にデザインした図鑑『宜興紫砂壺』は、「香港特別行政区政府と印刷芸術学会図書金賞」をはじめ、デザイン、製版、印刷などの八つの賞を受賞した。世界的な賞の受賞は、中国書籍として初の快挙だった。また九五年には東京で、『シリントン王女(タイ)詩文画集』が「アジア・太平洋地域図書デザイン金賞」に輝いた。

 寧さんは若い頃は、連日の徹夜も辞さなかった。しかし定年後は健康を第一に考え、規則正しい生活を心がけている。


  AM7:00  
 起床。アパート裏の庭で軽く運動。部屋に戻り、朝日の差し込む廊下でコーヒーを飲みながら新聞を読む。夫婦ともに工芸美術の専門家のため、部屋は2人で設計。
 
【AM7:00】      
  AM7:30 
 夫婦そろって朝食。
 
【AM7:30】      
  AM8:00 
 のんびり歩くのが好きで、竜潭湖公園を横切って約30分かけて出社。急ぐ日には、しだれ柳が美しい道を自転車(約15分)で仕事場へ。

 
【AM8:10】      
  AM8:30 
 18階にある仕事場に到着。数年前に購入した120平米の3LDK。十数平米のバルコニー付きで、外は絶景。男性1人、女性2人の20〜30代のスタッフも出社。寧さんはまず、花に水をやり、浙江省出身のスタッフが持ち帰った自家製の新茶をすする。
 
【AM8:50】      
  AM9:00 
 仕事開始。ケ小平生誕百周年記念の大型図鑑(四川人民出版社)の編集とデザインを進める。いまでも日本で学んだ手法を重用し、まず紙に下書きし、推敲をして、図案決定後にコンピューター処理を行う。
 
【AM9:00】      
     
【AM10:00】      
  AM10:30 
 四川人民出版社の編集者が来訪。打ち合わせ。
 
【AM10:30】      
  PM12:00 
 昼食。料理は昼時だけ出社する専属のアルバイト女性が作る。南方出身の彼女の腕は抜群。
 
【PM12:00】      
  PM1:30 
 自転車便(バイク便)で雑誌の校正用紙が届く。このような新産業の恩恵で、自ら足を運ぶ場所が減り、時間のやりくりは楽になった。
 
【PM1:30】      
  PM2:30 
 製版会社にタクシーで出かけ、色校正状況をチェック。
 
【PM3:00】      
 
 
【PM4:30】      
  PM6:00     
 退勤。最近はほとんど残業をしない。
PM7:00  
 妻、息子と3人で夕食。
PM10:30  
 就寝。
 
【PM8:00】      

 
 
かばんの中身を
ちょっと拝見!
  出社の際に背負うリュックサック。  
  竜潭公園の定期券
 
  定期的に飲む降圧剤。  
  水泳カード。休日に泳ぐ。  

  自転車の納税証明プレート。提示を求められた時のためにいつでも携帯。  
  自宅と仕事場のカギは別々に携帯。  
 
 
文具ケース。
 
 
数日後に出張する広東省深セン市までの航空券。
 
  寧さんが手がけた写真集『香港』。  
  寧さんが手がけた図鑑『御苑賞石』。  
 
 
     
 

【取材日:2004年4月12日(月曜日)、取材場所:北京市】


プロフィール
1942年、山東省徳州市生まれ。1965年、中央工芸美術学院(いまの清華大学美術学院)装飾絵画学部(書籍美術専攻)卒業後、北京の大型書店「生活・読書・新知三聯書店」で働く。美術デザイン室の責任者だった2000年に定年退職。1980年代には講談社、横浜国立大学でそれぞれ1年間デザインを研修。退職後、デザイン会社を立ち上げた。 (2004年7月号より)