ASEAN緊急首脳会議 温家宝総理の演説


 国務院の温家宝総理は29日、タイの首都バンコクで重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する東南アジア諸国連合(ASEAN)緊急首脳会議に出席し、演説を行った。演説の主な内容は次の通り。

 SARSは、人類に完全には知り尽くされていない新型の伝染病であり、適切な診断・治療の方法がなく、伝染の特徴も完全には分かっていない。突発的なSARS流行に直面する中、予防や感染防止に関する経験が欠けており、対応体制も完全ではない。一部地域や部門では対応不足の問題が出ている。特に中国は人口が多く、人の往来も多いため、必死の対策を行っているにも関わらず、SARS感染拡大防止は依然として厳しい状態にある。広東省など早くから流行が始まった地域でも、少数だが新たな感染者が見つかっている。北京市、山西省、内蒙古自治区などでは感染者の増加が著しく、感染は完全な抑制が見られないばかりか、広い地域へと拡大しつつある。

 中国政府は、困難に立ち向かう勇気を持つ、責任感の強い政府であり、人々の健康、生命の安全を最優先と考えている。今後、これまでに引き続いて果断な措置を取ることで、困難な局面を打開していきたい。

 SARSの国境を越えた流行は、国際社会、特に同地区が直面する共通の課題だ。地域的、国際的な協力があってこそ効果的に対応できるものだ。中国政府は以前のアジア金融危機の時と同じく、責任をもってSARS問題を解決していきたい。ここで、ASEANとの連携と協力を進めていくために、次の数点を提案したい。

 (1)SARS感染状況の報告体制を整備

 中国とASEANの感染状況、治療、研究などの情報報告体制のネットワーク整備に着手する。

 (2)経験についての交流や、研究での協力を推進

 SARSに関して、中国とASEANによる国際ハイレベルフォーラムを5月に共同開催し、経験についての交流や問題の検討を行う。中国は主催国を引き受ける用意がある。また、SARSの感染や発病に関する規則性、臨床診断や治療について、共同研究や研修を進めたい。中国は1千万元を出資して特別基金を設立し、ASEAN諸国との協力を支援する。

 (3)衛生分野での協力推進

 ASEANに中国を加えた「ASEANプラス1」での衛生協力体制を作る。SARSに重点を置いた「ASEANプラス1」保健相会議を近く開催する。

 (4)出入国管理での連携

 (5)SARS流行によるマイナス影響の抑制

 中国とASEANで、特別フォーラムを開催し、対応策を検討する。感染の予防や治療の進展に応じて、中国はASEAN諸国への旅行ツアーを段階的に再開し、衛生・検疫についても適切な措置を取る。

 中国とASEANはよき隣国、よきパートナー、よき友人だ。SARSがわれわれの関係に影響を与えることはあり得ない。共同でSARSを克服することにより、われわれの友好や協力は強化されるだろう。中国新政府は、ASEANとの互恵友好協力関係を引き続き発展させていきたい。ASEANとの自由貿易区設置を積極的に進める方針であり、ASEAN側との交渉を早めていきたい。また、「東南アジア友好協力条約」への中国加入も決定しており、法律手続きの早期完了を希望している。中国とASEANは昨年、新たな安全保障分野の協力に関する共同宣言を採択した。現在、行動を積極的に続行し、実効的な協力を展開する必要がある。

                    (「人民網日本語版」より)2003年5月6日