【画家たちの20 世紀(13)】



詩趣ゆたかな労働の歌 王文彬

                       文・陳瑞林


『コウ歌』
320×165センチ油彩 1962年
中央美術学院蔵
写真提供・中国油画学会

 1960年代は、新中国の油絵芸術が、50年代の質素な風格から深みある円熟の芸術に変貌していった時期で、数多くの優れた作品が生み出された。この時代の代表作の一つが、王文彬の油絵『コサ歌』(土木工事の胴突き歌の意味)である。この作品は、当時の画壇に大きな影響を与えただけでなく、いまでも強い影響力を持ち続け、多くの人に愛されている。

 王文彬は、中央美術学院教授、中国美術家協会会員、同協会壁画芸術委員会委員として活躍したほか、山東人民出版社の編集主幹を務めていたこともある。

 彼は1928年、山東省青島市に生まれ、小さい頃から芸術をこよなく愛し、独学で芸術創作の基礎を身に付けた。43年、若者の未来への理想追求を表現した木版画『路』を創作し、新聞上で木版画作品を発表し始めた。45〜55年には美術出版に従事し、木版画のほか石版画や書籍装丁などを手掛け、また、数多くの年画(旧正月に用いる縁起物の絵)、連環画(子供向けの連続絵物語)、水彩画を発表した。49年以降は、全国規模の美術展覧会にたびたび出品し、作品は海外でも展示された。55〜62年、中央美術学院にて学び、卒業後は請われて教鞭も執った。

 その後、大型油絵の創作をシンボルとして、彼の作品は円熟味を増し、強烈な個性も備わるようになったことで、全国的な反響を呼ぶようになった。文化大革命後には、何度も古代シルクロード沿いに西域を旅し、西域の生活を体感しながら古代の文化遺産を研究し、自分自身の新しい芸術的起点にたどり着いた。彼は、民族壁画芸術の研究、教育、創作活動に身をささげ、芸術界の誰もが注目する大きな成果を上げた。

 1982年には、大型民族壁画『山河頌』を描き、中国の壮麗で美しい山河のすばらしさを表現した。98年には、自分自身が青年時代に体験した学生運動を主題にした壁画『先駆者に捧げる鎮魂歌』を創作し、香港で開かれた第一回世界華人芸術コンテストにて優秀賞を受賞した。また、翌年の同コンテストでは、兪錫瑛との合作による壁画『鳴く鹿』にて国際栄誉金賞を受賞した。半世紀の創作で生まれた彼の主要な作品は、各種美術書に掲載され、また個人画集やその他書籍も出版されている。そして2001年10月、病に倒れた彼は、惜しまれつつも73歳の生涯を閉じた。

 『コウ歌』は、60年代初期、若い女性たちが、ダムの堤防工事現場で元気に歌いながら働く風景を描いた作品である。キャンバスの空間処理は創意にあふれ、非常に調和のとれた作品に仕上がっている。王文彬は、意識的に仰ぎ見る角度から描き、作業中の女性の体つき、健康さ、活発さを強調し、青春のはつらつさ、美しさを表現した。平凡な作業風景は、人に親近感を覚えさせる一方で、なんとも叙情的で、美しく、詩趣にあふれた表現がされている。王文彬は、現実を飾らず、灼熱の作業風景を通して、中華民族の不撓不屈の精神を表現した。この作品では、当時流行していた旧ソ連の「社会主義現実主義」油絵の写実主義原則に従わず、大胆に逆光効果を利用し、当時の画家は実践をためらっていた印象派の手法も取り入れた。同時に、中国の伝統絵画や民間絵画の作法、平面装飾の手法を創作に活かしたことで、『コサ歌』は、斬新さや民族芸術的風格を備え、叙情的風情にあふれた佳作に仕上がり、傑作として中国の油絵史にその名を刻んでいる。(2002年1月号より)