【画家たちの20 世紀(23)】



朦朧の中に時代映す 劉 迅(1923〜)

                       魯忠民


『1999.12.31』
140×120センチ
油彩 1999年
上海錦海捷亜国際貨運有限会社蔵
写真提供・中国油絵学会

 劉迅氏は1923年、福建省福州市に生まれた。40年、革命根拠地・延安へ行き、デッサンを学び始め、版画、年画、美術の宣伝活動に従事した。人民美術出版社に勤務していた50年代半ばには、旧ソ連のマクシーモフ主宰の校外油絵研修班に参加した。彼は、美術学院で学んだ経験も、有名画家に長く師事した経験もなく、独学により油絵画家となった。

 抗日戦争時代から、彼は油絵に憧れていたが、当時の環境では、なかなか油絵創作は不可能だった。60年代後半の「文化大革命」期にも、監獄で10年に及ぶ苦しい生活を送った。しかし芯の強い彼は、延安公学、延安魯迅芸術学院で受けた教育、従軍記者、グラフ誌編集など長年の経験を通して、美術に関する様々なことを学んだ。

 「文革」が終わると、彼はようやく名誉が回復され、前後して北京画院と中国美術家協会で画家たちの名誉回復などの仕事に携わり、美術界の尊敬と好評を得た。その後、中国美術家協会常務書記、北京画院副院長を務め、現在は、北京市美術家協会主席、北京市文学芸術界連合会副主席、北京国際芸苑美術基金主席、北京国際芸苑理事長を務めている。

 1985年以降、彼は、国際芸苑皇冠カ日大酒店(ロイヤル・ホリデーインホテル)の建設と運営に精力を注いだ。同ホテルに開設された国際芸苑は、現在、著名な画廊として認知され、その収蔵品と展示品で目を見張る成果を上げている。これまで、内外の多くの名作を収蔵し、各国の美術展を数多く開催した。

 劉氏は、長年、国際芸苑の指導的ポストにある人間として、一貫して青年の鋭意的な創作を支持してきた。彼自身も余暇を利用して油絵を創作し、「日曜日には、わずか1分間をも惜しんで油絵創作に打ち込みました。そんな生活が10年以上になりました」と語る。このような事情から、彼はずっと新鮮な芸術創造を追求しているのだろう。

 彼は、油絵だけでなく、中国画も描く。中国画の韻律と西洋画の技法を結合させ、魅力的な作品を数多く創作した。画中の一物一景にこだわらず、自由自在な運筆によって、朦朧さと抽象の中に、広々とした世界と時代の流れを表現し、多くの人を魅了する。

 また、作品の色調は柔和かつ優雅で、深く重々しい。抽象的で、ぼんやりとしていながら、詩情に満ちあふれたキャンバス上には、人間、自然、生命という不変のテーマが提示されている。日本、メキシコ、ドイツ、パキスタンおよび香港地区などの貿易商や企業のコレクターは、競って彼の作品を買い求めた。

 油絵『古長城遺跡の追憶』は、彼の油絵集に収められた一幅だ。同作品には、具体的な描写はないにも関わらず、新鮮さが見え、音楽のような強烈さをにじませている。彼は、中国の伝統的な表現法を受け継いで油絵に生かし、絵筆で熱い感情を表現する。(2002年11月号より)