【上海スクランブル】

上海っ子のこだわるものは…
                                    須藤みか
                 

 人にはそれぞれ「こだわり」がある。中国最大の経済都市に住む、上海っ子の衣・食・住における「こだわり」について聞いてみた。

               
ケーキいろいろ
 「ケーキが大好物なの。おいしいケーキ屋さんがあると聞けば、どこへでも行きます」と言うのは、メーカー勤務の女性、23歳。女の子が甘い物に目がないのは、世界共通。

 「僕はコーヒーにはうるさいんだ。インスタントコーヒーは絶対飲まない、あれはコーヒーとは言えないからね。上海にも喫茶店や豆を売る場所が増えたから、世界各国のコーヒーを味わっていますよ」(食品メーカー、二十七歳男性)

 上海では数年前、コーヒーにプラスアルファの付加価値をつけたテーマ・カフェが大流行した。しかし、米国のスターバックス(星巴克珈琲)が進出したあたりから、仕掛けの面白さではなくコーヒーの味自体で勝負する本格カフェ時代に突入、この男性のようなコーヒー党も増殖中だ。

 「小さい子供がいるので、食べる物には注意しています。子供が産まれるまでは気にしていなかったんですけど、今はスーパーで有機野菜や加工業者が分かるパック売りのお肉を買っています。かなり高くつきますが、子供の健康のためです」とは、34歳女性。安全な食品を求める声は確実に高まっていて、上海では有機野菜を扱うスーパーも多くなりつつある。

TPOでメガネ替え気分転換

 着道楽の上海と言われるだけあって、衣へのこだわりも強い。

上海ッ子に人気のメガネ

 「私がこだわっているのは着るもの、特にスーツですね。営業職なので、毎日スーツで出勤しています。色とりどりで何十着も持っています。営業職はいわば会社の顔ですから、いつもきちんとしていないと。それにスーツを着ると、気持ちも引き締まり仕事モードに入れます」

 30代キャリア女性はスーツで勝負のようだが、広告代理店に勤める31歳男性の場合は、メガネ。

 「たくさん持っていますよ。フレームの太さや材質、色によっていろいろあります。デザインも大人しいもの、派手なもの…。その日の気分やTPOで替えています。メガネ一つで、かなり気分転換ができます」

 チャイナドレス・フリークという28歳OLもいる。

 「チャイナドレスがすご〜く好き。シーズンごとに一着、オーダーメードしています。友人の結婚式とかフォーマルなパーティーがあると、必ずチャイナドレスを着て行くの」。会社の忘年会や歓送迎会でも、宴会前には着替えるほどの、懲りようだ。

30代以上男性 住環境にこだわる

 30代以上の男性となると、俄然関心は住環境に向かう。

 「つい最近マンションを購入しまして、いま内装工事中です。それでほとんど毎日、妻と交替で内装工事の様子を見に行っています。業者に任せっきりにすると、手を抜かれたり、予定通りに進まないので。ようやく手に入れた自分の城だから、しっかり監督してないと」(貿易、34歳男性) 

 「生活便利派の私は、小型の家電製品にこだわっています。使いやすくて生活が便利になる物がないかと、休日は百貨店などを回っています。私が最近、気に入っているのは布団乾燥機。上海の夏は湿気が多いから、すごく重宝しています。冬は寝る前に布団を温かくできて、最高だよ」(会社員、47歳男性)

 上海っ子の多様で具体的な「こだわり」は、改革開放以来、社会が大きく変化したからこそ。もしも10年前に同じ質問をしたとしたら、きっと今とは全く異なる答えが返ってきたはずだ。経済の急成長は中産階級を産み、ライフスタイルにも変化が現われているようだ。(2002年5月号より)

[筆者略歴] 日本での出版社勤務後、留学。北京週報社・日本人文教専家を経て、現在、復旦大学大学院生