福を運ぶ多彩なちょうちん

                           文 写真・魯忠民


竜舞につかう竜のちょうちんをつくる四川省銅梁県のちょうちん職人

 中国には「紙には火を包めない」ということわざがあるが、実際には、紙で火を包む民芸品がある。それが紙製のちょうちんである。

 旧正月の15日は、元宵節のちょうちん祭りだ。伝統的な習慣により、家々の玄関先には赤いちょうちんが掛けられる。子どもたちが色とりどりのちょうちんを持って遊び回り、街頭や広場にはちょうちんがたくさん飾られ、老いも若きもみな、ちょうちん祭りに出かけていく。精悍な若者たちが、勢いあふれる「竜のちょうちん舞」を披露するのである。

 その昔、ちょうちんの多くは家庭でつくられていたが、中には職人の手によるものもあった。素材やつくり方の違いによって、各地で異なる特色も見られる。陝西省北部の農民たちは、コーリャンの茎で骨組みをつくり、そこに赤い紙をはって、植物油を塗り上げる。こうして、カボチャ型や綿花型、羊型などのちょうちんをつくり、その中にロウソクや油皿を配して、ヤオ洞(洞穴式の住居)や倉庫、家畜小屋の門前などに掛けるのだ。また、庭にあるナツメやエンジュの木を色紙で飾り、そこに小さな赤いちょうちんを掛けて、「灯樹」(ちょうちんの樹)をつくることもあった。

 古くから都が置かれた北京では、毎年、ちょうちん祭りになると、宮廷内に色鮮やかなちょうちんが飾られた。そのため、民間のちょうちん祭りやちょうちん市には、たくさんの種類が並んだ。「宮灯」(宮廷用のちょうちん)もそのうちの一つであった。

 民間用と宮廷貴族用の違いは、前者はその多くが手づくりで、素材も多く、変化に富む様式であったこと。後者は腕ききの職人たちの手によるもので、素材を吟味し、精緻な細工と美しさをきわめたことである。しかし民間のものに比べると、生き生きとした自由な野趣には欠けていた。

 祝祭日に掛けるちょうちんは、そのほとんどに縁起のいい意味が込められている。蓮花と魚の形のちょうちんは、「連年有余」(連=蓮、余=魚の発音がそれぞれ同じことから、年々余裕があるという意味)を、スイカ型やザクロ型のちょうちんは、「多子多福」を象徴している。鶏(吉と同じ発音)の形と、羊(祥と同じ韻)の形のちょうちんも、吉祥を意味する。また、「万象一新」を表す象の形のちょうちんや、合格祈願を意味する書物の形のちょうちんもある。

 さらに各地の祭りでは、ちょうちんになぞなぞを書き、答える遊びも行われている。中国特有の文字遊びであり、なぞなぞを口語文や詩句にしてちょうちんに書き表したり、はり合わせたりするのである。その文字は美しく、構想もなかなか巧みだ。なぞなぞの答えはたいてい思いがけないものだが、当たった人は賞品を手にして、「よい兆しの訪れ」だと思うのである。

 ちょうちんの製作には、デザインを施し、竹ひごを曲げ、それをしばって骨組みをつくり、紙をはり、色をつける――などのプロセスがある。まず始めに、ちょうちんの形と光の効果を考える。伝統的なちょうちんは主に竹ひごが骨組みの材料となるが、その形はさまざまだ。竹ひごを高温の火であぶり、少しずつ曲げながら形をつくる(民間ではほとんどが、アルコールやロウソク、薪を燃やした火で竹ひごをあぶる)。

 次に、一般的には大きな骨組みをつくり、その後で細かな骨組みを整える。骨組みができたら、紙をはる。透明度の高い紙または布を両側面にはるが、ロウソクに火をともしやすくするため、ふつうちょうちんの上下には何もはらない。最後に、ちょうちんに絵を描く。魚や竜の頭などさまざまな形の輪郭をとり、淡く美しい色彩を施したり、なぞなぞを書いたりする。こうして人々に愛され、親しまれてきたちょうちんができあがるのである。(2002年11月号より)